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オープンマイクとカミさんの歌

”旦那さんとの出会いを歌にしてみました”
彼女と知り合ったのは、町田にあるライブハウス町田SDRが毎月第二水曜日に開催している遊々詩人というオープンマイクイベントだった
碧穂(AO=あお)さんは鍵盤で弾き語りをする僕と同じアラフィフ

拙さと可愛らしさと物怖じしない人懐っこしさとピュアさが周りが手を差し伸べずにはいられないという空気になり、彼女のステージは観ている方が少し力が入りつつも、天然なキャラクターが場を和ませ、ついつい引き込まれて……巻き込まれてかな? しまうのです

昨年参加してから随分間が空いて、昨日久しぶりに顔を出したのですが、驚きました

彼女、なんとオリジナルを演奏し始めた
僕の曲なんかよりちゃんと練り込まれて、小ネタも仕込んで、拙くも力強く、ありていに言ってしまうと愛に満ち溢れてた

彼女はずっとこの月一回のオープンマイクに参加し、いろんなことに挑戦してきているのは知っていたのだけれども、実際7~8か月ぶりに見た彼女の演奏や、話術やステージでの佇まいは、まさに

士別れて三日なれば刮目して相待すべし

女性を三国志の武将 呂蒙に例えるのはどうかと思いますが、正直、負けました

ああ、先をこされた

僕の出番
MCで早速彼女のことをいじるという、僕のまぁ、なんと姑息なことか

”どうもー! 出張帰りのサラリーマンでーす”
からのAOさんの旦那さんのことを書いた曲が素晴らしいと語り
”僕も妻子ある身ですが、カミさんのことを歌にするって発想はまるでなかったです。たとえば、そう、今作るとしたら、僕の彼女のイメージ……朝、洗濯をするんですけどね、ベランダで洗濯物を干すとき、鼻歌なんかを歌っているんですが、この前なんかレッド・ツェッペリンの移民の歌を あああーあ! って大声で歌ってまして……そんなカミさんをどう表現していいのか、僕にはさっぱりわかりません”

などという小ネタで笑いを取ってからの朗読の設定を軽く説明し、いざ、物語を読み始めました

正直申しまして、練習を新幹線の中で小さな声で数回やっただけです
原稿も町田駅前のコンビニでプリントアウトしました

圧倒的準備不足なんですが、僕には上手くやれるイメージがあってそれがこの動画

脚本:めけめけ
製作:音声劇団五里夢中 http://beinadream.web.fc2.com/
twitter:https://twitter.com/GoRiMuChu1

音声劇団五里夢中さんは大阪で活動している劇団で、僕の作品を尼崎のコミュニティFMで『朔夜~月のない夜に』という長編小説を朗読してもらった縁から、こうして僕の短編で気にいってくれた作品を好意で作って頂きました

僕から何の指示もなく、この録音はされて、聞いたときあまりにイメージとピッタリだったのでびっくりしました

さっそく僕はこの動画を実際にそのモチーフとなったお店のマスターに聞かせたら、大爆笑

”ああ、これあの人のことでしょう! っていうかそれしか考えられない”

と言わしめるほどに、モチーフとなった女性にそっくり

つまり、この物語のキャラクターは作品のなかで生きているから、何も指示しなくても伝わるのではないのだろうかと……勝算はあったわけです

会場の心地のいい静けさ……物語に聞き入ってくれている空気を壊さないように間の取り方や抑揚や緩急を意識して朗読ができました
もちろんすべてうまくいったわけじゃないのだけれども、自分なりの手応えを掴めました

さて、物語を読み終えて曲の演奏に……ああ、やっぱりちゃんとアコギの音が出せないや
これも予想通りだったので、当初の演奏のイメージをガラッと変えて、荒々しく下手くそな感じ?

あー、嫌だ、嫌だ、こういう小ずるいところでかわそうとするのは、そう何回も使える手じゃないので次回はちゃんと自分のエレキギターを持って行きます(アコギは家にあるのですが、練習していたら近所から苦情が来まして……カミさんにえらい怒られました。まぁ、時間も遅かったので僕が悪いのですが)

AOさんには
”奥様と出会ったころの思い出を歌にしてみたらどうかしらね”
とアドバイスを頂いたのですが、さて、僕にはちょっとリアリティに欠け、ファンタジーにするにはキャラでも柄でもないので、やはり――

”ギターを弾いて俺は怒られているのに、お前は洗濯物を干しながら移民の歌を歌って怒られないというのは、なぜなんだ”


というノリで作ってみようかと思います

こういうひらめきもまた、ステージに立ったからこそ生まれるものなのです

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