クチトンネル ホーチミン旅行おすすめ観光地

ホーチミン市発の人気ツアーのひとつ、クチトンネル。ずっと行ってみたかったこの場所に、ホーチミン市に5年程住みながら先日ようやく訪れることができた。

私の参加したツアーは、途中で「Sơn Mài Lâm Phát」という、伝統工芸品を制作・販売している場所に立ち寄った。ここで工芸品を作成しているのはエージェントオレンジの被害によるハンディキャップを抱える人たち。その背景をバスでガイドさんから教わった後、細やかな作業工程を見学すると、その先のショップで何か購入せざるを得ない気持ちにさせられたのだが、商品の値札を見たとたんにその気が萎んでしまった。ホーチミン市内の土産物屋でも同様のものを売っているが、こんなに高くはなかったはずだと思ってしまう。工芸品には手が出せなかったけれど、少しでもここで働く人たちの支援になればと、敷地内の売店でマンゴースムージーを買って、置いてある募金箱に少額ながらもお金を投入した。

目的地に到着。シアタールームで当時この地で人々がどのように戦っていたのか、また日々の生活模様を記録した映像を観る。ここは射撃の体験が出来るところがあるため、銃声音が常に鳴り響いている。戦争経験者が足を踏み入れると、その当時の情景が蘇りそうな雰囲気がある。まさにこの場所でベトコンと米兵が戦争を繰り広げていたと思うと、戦争証跡博物館よりもリアルにベトナム戦争を感じる。

クチトンネルは、地上で受ける爆撃等から身を守るために造られた防空壕だと思っていた。もちろんその役割もあるが、それだけではない。敵の侵入も考慮し、その体格の違い(大柄なアメリカ人に対して、ベトナム人は小柄)を活かして、地下通路の大きさは狭く作られていたり、地下から敵を撃てるようにもできている。

トンネルがあるだけではないことも知らなかった。この木々が生い茂る地に仕組まれていた敵を陥れる数々の罠。Phycological Trapと呼ばれ、トラウマや恐怖心を植え付けることを目的とした罠。罠の仕組みからすると、一瞬にして命を失うわけではなく、致命的な大怪我を負いそうな感じ。これが、罠にはまった当人だけではなく、助け出したり手当をする仲間にも恐怖心を植え付けるようだ。

希望者は100mほどのトンネルに入ることができる。20m置きぐらいに離脱者向けの出口がある。背の高い人だと膝をついて這う感じ。150cm程の私だと、ちょっと前かがみぐらいで進めるところもあれば、四つん這いぐらいにならないと厳しいくらい狭い部分もある。中に入る時は、大きめの鞄を持ち込むのは避けた方が良い。

射撃の体験は10発で60万ドン(約3,600円)。銃の種類を選ぶことができる。M60という銃を選んで体験してみた。安全のために銃は柵に固定されて設置してあるが、それでも持ち構えるとかなりの重さを感じる。係員が構え方や的の狙い方を指導してくれなかったこともあり、私の撃った弾は的には当たらず地面に落下していくだけ。

引き金を引くと、一発一発の銃声音がドン、ドン、と心臓に響く。
この弾が狙った敵に当たったとしたら、この体に重く響く音と振動が、この手で人を殺してしまった感覚として、一生体にこびりつくのではないかと思った。

ベトナム戦争はまだ50年程前の話。写真や映像が今もなお多く残されている。ホーチミン市内にある、戦争証跡博物館には見るに堪えない写真が多く展示されている。目にしなければ、知らなければ、こんないたたまれない気持ちにならずに済むのかもしれない。けれど、やはり人類の歴史として知っておかなければいけないことのような気もする。

クチトンネルへはホーチミン市から、個人で行くことも不可能ではない(と思う)。けれど、断然ツアーで行くことをお薦めする。一人で見ていると、何かな?ぐらいにしか思わないものでも、ガイドさんがその場所で当時の人々の生き抜く知恵や、戦い方を説明してくれると、見方や印象が一気に変わる。”楽しい”とか”面白い”所ではない。けれど、非常に訪れる価値のある場所だと感じた。


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