ベトナムの結婚式

会社の同僚の結婚式。ベトナムで結婚式に参列するのは2回目。私が参列した式の形式が一般的なベトナムの結婚式とは言えないのかもしれないけれど、知ったこと、感じたことを残しておきたい。

招待状を受け取ったのは式の1週間前ぐらいだった。式は金曜日の夜。式場は会社の近くなので、私は迷った末に退社後にそのまま結婚式に参列できる範囲の服装で出勤して、日中は普通に仕事をする。日本だとオフィスカジュアルな服装で出勤しないと白い目で見られるけど、今の職場にそんなことを気にする人はいない。なんなら普段からベトナム人スタッフは、仕事をしに来ているとは思えない服装の人が多々いる。

式の参列者の服装は、女性はベトナムの伝統衣装であるアオザイを着ている人もいるけど、カジュアルなワンピース姿の人も多い。男性はジーンズとポロシャツのようなラフな恰好で参列している人もいる。スーツを身に着けている人もいるが、ネクタイを締めている人はほとんどいない。

オフィスワークのベトナム人女性は普段はあまり化粧をしない。終業後、普段から少し化粧をしている人に化粧道具を借りて、化粧をし始める同僚。そもそも化粧道具を持っていないんだとか。メイク落としは家にあるのかと聞くと、それも持っていないらしい。化粧はメイク落としを使わないと落ちにくいことを説明してみたものの、理解されなかったようだ。

とは言え、私に他人のメイクを語る資格はあまりない。朝、出勤前に化粧はしているが、良く言えばナチュラルメイク、ありのままに言えば薄々のメイクしかせず、化粧道具も持ち歩いていない。終業後にベトナム人スタッフに「メイクはしないんですか?」って言われて鼻を折られた。

お祝儀は友人なら50万ドン(3,000円程)が相場。招待状が入っていた封筒にお金を入れて、会場に置いてあるBOXに入れる。祝儀袋を買う必要もない。招待状の封筒には自分の名前が書いてあるから、誰から祝儀をいくら受け取ったのかはちゃんと分かる。効率的な感じがする。

日本人でベトナム人スタッフよりも少し多めに給与をもらっている手前、100万ドンを包む。ふと、50万ドン札を2枚包むことは問題ないのかと気になる。日本では、偶数枚は好ましくないからだ。聞けば、問題はないらしく(私の質問の意図が伝わったのか甚だ怪しいが)、多ければ多いほど良いといった、やや的外れな回答が返ってきた。

先ず驚くのが結婚式の参列者。30歳前後のカップルなのに、年配の人が多いと思えば、新郎新婦の親の友人・知人のようで、それが参列者の半分ぐらいを占めている。そもそも招待状を受け取った後、参列の可否を知らせないので、招待側も誰が当日来てくれるのかは分からない。会社の従業員の中には新郎新婦とさほど繋がりもない自分のパートナーを連れてくる人も多くいた。結局、席が足りずに会場には途中で追加のテーブルがセッティングされた。

新郎新婦が入場し、会場の前方に揃って立ったと思いきや、いきなりウェディングケーキに入刀。そして、そのまま2人はシャンパンを手にすると、シャンパンタワーに勢いよくルビー色の液体を注いだ。参列客がカメラを構えるような時間も雰囲気もなかった。一瞬にして結婚式の目玉イベントが完了。ケーキのFirst Biteはそういえば無かった。

会場に新郎新婦の座席がないことに気が付いた。じゃあ彼らは何をしているのかと言えば、ご両親と一緒にテーブルを順番に巡って、挨拶と記念撮影をしている。参列者もさほど新郎新婦に着目しているわけでもなく、次から次へと出てくるコース料理を平らげ、同じテーブルを囲む人たちと談笑している。結婚式というよりかは、もはや食事会。

しばらくすると参列者の有志による当日参加型のカラオケが始まる。新郎新婦から事前に依頼された人がマイクを持つのではなく、その時に自ら名乗り出て歌いだす。ハートが強くないと、なかなかできないことだと思う。私の会社のスタッフ2人組は、なんと2度も歌っていた!知らないおじさんとおばさんのデュエットは、曲を知らない私でも耳をふさぎたくなるほどで、同じテーブルに座る社員たちもそのクオリティに顔をしかめていた。

式に明確な締めはない。デザートまで食べ終わると、カラオケ大会は続いているが、参列者は各々退席していく。

日本では、当然のことではあるが、披露宴の間は常に新郎新婦が中心で、ほとんどの時間、参列者の目は彼らに注がれている。上司や親友がスピーチをしたり、パフォーマンスをすることがあっても、それらはすべて新郎新婦に向けた祝福を表すものだ。

私はこの式中、どれほどの時間を新郎新婦に着目していただろう。会場の滞在時間の30%程度だったように感じる。結婚式は新郎新婦にとっては特別な1日。彼らの晴れ姿を見守っている半分以上は親の友達という中で、彼らは本当に満たされた日を過ごせたのだろうかと心配になってしまった。


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