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コーチングを要約する?mentoがAIサマリーを作った理由と、今後の展望

はじめに

こんにちは、mentoでデータ活用を中心として働いている杉浦と申します。以前はリクルートにおいてデータサイエンティスト、そしてマネージャーとして活動しておりました。 コーチングの可能性、人材と組織開発の可能性を感じて、現在はmentoに転職しテクノロジーを用いたコーチングや人材・組織開発の進化を進めています。

mentoは、現在社員数20名程度のスタートアップで、ToCとToBに向けてコーチングを中心にした人材開発・組織開発に関連する事業を展開しています。 「夢中をふつうにする」というビジョンを掲げて、「コーチングとテクノロジーを用いて日本の主観的ウェルビーイングを世界1位にする」ことをビジョンに日々事業を進めています。

まずは、mentoが提供しているコーチングについて簡単に紹介します。コーチングとは、一言で説明すると、コーチとクライアント(=コーチングを受ける人)との間の対話(=コーチングセッション)を通じて、内省を促し行動変容を促すプロセスです。 mentoでは、このプロセスを最大限に活かすため、高品質なコーチングを提供することに加え、見えにくいとされる効果の計測も定量・定性の両側面から同時に行っています。多くの企業で管理職の育成や支援を目的として導入され、例えばパナソニックインダストリー株式会社では100名規模でのコーチングをご導入いただいています。

この記事では、そんなmentoが最近リリースした「AIサマリー」機能に焦点を当てて、紹介するとともに、「なぜ作ったのか?今後どうしていくつもりなのか?」お話ししたいと思います。 AIサマリーは、忙しい管理職の方々がコーチングセッションを効果的に振り返るためのツールとして開発されました。どのような思いからこのプロダクトが生まれたのか、そのプロセスとともに、私たちの製品がどのように社会に貢献していくのかを掘り下げていきたいと思います。
なお、機能リリースの際のプレスリリースも出しておりますので、ぜひ御覧ください。

AIサマリー開発の背景

コーチングは、内省を促し、行動の変容を引き起こす強力な手法ですが、その効果を最大限に発揮するためには、コーチングセッションの内容を振り返ることが不可欠です。しかし、現実には多忙な管理職の方々が、メモを取ったり見返したり、コーチングの内容を定期的に振り返る時間を確保することは非常に難しいのが実情です。特にコーチングセッション間の期間が開くと、前回のコーチングの内容が有用だったとしても、前回の内容は一定忘れられてしまうという問題がありました。このような状況は、コーチングの効果を低下させてしまいます。

この問題に対処するため、私たちmentoでは大規模言語モデル(LLM)を活用して、セッションの内容を効果的に振り返ることができる新機能「AIサマリー」の開発に至りました。この機能は、コーチングセッションの内容を要約し、重要なキーワードやネクストアクションを抽出することで、管理職の方々が忙しい日々の中でも簡単にセッションの内容を思い出し、行動変容へとつなげやすくすることを目指しています。LLMに対してシンプルにプロンプトを適用するだけではうまくいきません。コーチングのデータに対してカスタマイズした形でLLMを使う必要があります。

開発過程では、特に社内でのフィードバックループを重要視しました。初期のプロトタイプ段階から、実際にコーチとクライアントがセッションで使用することで得られる直接的なリアクションと提案を取り入れることが、製品の精度と有用性の向上につながりました。評価の方法には、一般的な評価指標も用いつつ、実際に「意味があると思えたか」「言っていないことが含まれていないか」というような定性的なユーザーフィードバックも取り入れ、リリース可能な状態へと何度も改善を重ねました。
※ コーチングを受けた本人とコーチ以外は、原則としてローデータ・サマリーの内容を見ることはできません

精度を改善していくにあたって、実際に発話されていない内容を要約に含めてしまうハルシネーションをどうやって発生させにくくするのか、どういう文体が一番読みやすいかなど、社内から様々なフィードバックをもらい改善していきました。(ここのプロセスでは、改めて様々な文献をあたったりで、非常に面白かったです。大変だったけれど笑)

社内テストとしてみんなにもらっているコメント。みんな前向きにフィードバックしてくれて、ありがたいです。

実際に使ってみた人たちからのコメント

一部にすでに提供したAIサマリーの使用者からは、「セッション内容を迅速に振り返ることができるため、次のセッションへの準備が格段に向上した」「セッション中にメモを取る必要がなくなったことで、コーチングの場においてより深く対話に没入できるようになったと」との声も多数寄せられています。これにより、コーチングの効果を最大限に引き出すことが可能になり、満足度も高まっています。
コーチングを受けるクライアントだけではなく、コーチングを提供するコーチからもコメントを頂いています。

記録の精度が高いので、セッションの振り返りにとても役立つ

コーチもクライアントもセッション中の”記録する”という作業を手放すことで、セッションに没頭することができそう

複数回分のセッションの情報が溜まってくると、さらにコーチとしての見立てもつけられる可能性もあるし、クライアントも自分の変化を認識できるようになるのでは?

もちろん「大変よくまとまっているのですが、サマリーには記録されていない/記録できない大事なこともあります」などの改善白地のコメントも合わせてコーチからは頂いています。
ユーザー全体に提供し、クライアントとコーチからのフィードバックを受けることで、AIサマリーの精度はさらに改善させていく想定です。

AIサマリーのその先について

ここまでAIサマリーを紹介してきました。今回はたまたまコーチングセッションを要約するためにLLMを活用しましたが、これは今後のプロダクトロードマップの第一歩に過ぎません。
mentoにはコーチングやインタビューのデータを始めとして、動画・音声・テキストと非構造化データが大量に存在します。
コーチングそのものの倫理規定を遵守し、適切な利用規約、プライバシーポリシー、データマネジメントのもとで、mentoは今後もどんどんLLM活用を行っていきます。
先程取り上げたコメントにもありましたが、複数セッションを通じたクライアントの思考や行動の変化の可視化、コーチとクライアントの間に行われるコーチングの支援など、ビジョン実現に向けてやることは山積みです。 改めて、mentoはテクノロジーの力を借りながら、コーチングの可能性をもっと拡大し、より多くの人々の自己実現とウェルビーイングの向上に貢献していくことを目指しています。

mentoに興味を持ってくださった方へ

この記事では触れられなかった、AIサマリーの中身、精度評価・検証方法、LLMを活用したパイプラインの設計、今後の構想など、ぜひ一度私杉浦と話しませんか?


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