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産業カウンセラー養成講座6日目①「対話分析」

【相談】40代男性・Aさん
「息子が高校に入学してから不登校になり、家庭内では暴力をふるうようになりました。原因は受験に失敗したことだと思っていますが、本当のところは分かりません。。。もうどうしたらいいかわからず、気になって仕事も手につきません。。。。どうしたらいいのでしょうか?」

こんな相談をされたら、カウンセラーとしてはどのように答えればいいのでしょうか?アドバイスをする?傾聴するだけ?

今週はそんな問いを投げかけられた産業カウンセラー養成講座の6日目でした。

対話分析とは

前回基礎的な部分を学んだ対話分析。
今回はその続きです。

対話分析とは、面接でのカウンセラーとクライエントのやり取りを正確に文字に書き起こしたもの(逐語記録)を検討分析するものです。クライエント、カウンセラー双方の言葉1つ1つに込められた意味を分析し、より良い応対を学びます。

とはいえ私たちはまだまだカウンセリング初学者なので、人の心についての高度な分析などできません。

よって逐語記録を分析する際の判断基準は、
・基本的態度である中核3条件(自己一致、無条件の肯定的配慮、共感的理解)
・傾聴技法
といった傾聴の基本ができているか。
クライエントの問題点を深く分析することまでは行いません。

ということで判断基準はいたってシンプル、、、と思っていたのですが、いざ「人と人」の対話を分析してみると、これが実に難しいのです。

難しい点①「自分の価値観が出ていないか」

以前もご説明した通り、カウンセラーは共感はしても同感はしません。
あくまでクライエントの価値観に基づいて共感する。
カウンセラー自身の価値観に基づいてクライエントを理解しようとしたり、評価することはNGです。

例えばカウンセリングを重ねた結果、クライエントが前向きになり
「それでは職場の上司と話して、自分の気持ちを伝えてみたいと思います」
と発言した時、カウンセラーはどう返したらいいでしょうか?

「それはよいことですね」と返してしまえば、それはクライエントの考えを、カウンセラーの価値観に基づいて「評価」したことになります。
このような対応により、クライエントがカウンセラーからポジティブに評価されることを求める依存心を生んでしまうことになりかねません。

ただ傾聴し「上司の肩に、ご自身の気持ちを伝えてみたいと考えていらっしゃるんですね」と返し、クライエント自身の内省を促していくべきが望ましいカウンセリングだということです。

難しい点②「問いかけにどう返すか」

カウンセラーは教える者でも導く者でもなく、ただクライエントの横にいて、クライエント自らが答えを出す手助けをする存在です。
そこに上下関係はありません。

しかし思い悩んだ末に相談にやってきたクライエントは、藁にも縋るような思いでカウンセラーに答えを求めてくる場合があります。

【相談】40代男性・Aさん
「息子が高校に入学してから不登校になり、家庭内では暴力をふるうようになりました。原因は受験に失敗したことだと思っていますが、本当のところは分かりません。。。もうどうしたらいいかわからず、気になって仕事も手につきません。。。。どうしたらいいのでしょうか?」

このように相談されたとき、カウンセラーとしてどう応えるのが適切なのでしょうか。例えば【案1】のような返し方が想定されます。

【案1】
「それはよくないですね。お子さんも辛い思いをしているはずなので、Aさんからもっとお子さんとお話しするように働きかけるべきではないでしょうか。もしもそれが難しいのであれば専門家に支援をしてもらってはどうでしょう?もしよければ私の知り合いの専門家をご紹介しますよ」

クライエントの辛い気持ちに応えつつ、行うべきアクションをアドバイス。しかも知人を紹介するという具体性のあるものになっています。
実生活の中だとこのような回答をすることもあるのではないでしょうか。

しかしカウンセリングではこれは望ましくない。
具体的に何がよろしくないのかといえば、あくまで初学者たる私の私見ですが、以下のような点であると考えます。

・それはよくないですね
→クライエントの状況について、カウンセラーが良い悪いの評価をしてしまっています。

・お子さんも辛い思いをしているはず
→クライエントの価値観に基づき、勝手に状況を想像してしまっています。また、ここで焦点を当てるべき感情は、その場にいないお子さんではなく、目の前にいるクライエントの悩んでいる感情となります。

・Aさんからもっとお子さんとお話しするように働きかけるべきではないでしょうか。もしもそれが難しいのであれば専門家に支援をしてもらってはどうでしょう?もしよければ私の知り合いの専門家をご紹介しますよ
→時にカウンセラーが助言をすることはありますが、適切なタイミング・場面でなければ、カウンセラーへの依存を生じさせてしまうなどの逆効果となることもあり得ます。
今回については、関係性の構築もまだできておらず、クライエントの内省も不十分な段階で、答えだけを提示するような助言はするべきではないと思われます。


これら諸々を考慮すると、カウンセラーとしては以下のような対応をすることが望ましいのではないかと考えました。

【案2】
「高校入学を機に息子さんの不登校になり、家庭内で暴力もふるわれていることで、仕事も手につかないぐらい悩まれているのですね」

つまりは結局は冒頭の傾聴の基本的態度に則り、クライエントの気持ちに寄り添っていくことが重要となります。

そうはいうけども

ここまでがカウンセラーとしての基本姿勢となります。

しかしいざ人と対峙したときに、そのような態度をとるのはなかなかに難しいと感じたのが今回の学びです。

藁にも縋る思いでアドバイスを求めているクライエントの期待に応えず、ただ傾聴に徹しているのは、それを裏切ってしまっているようにも感じてしまうのです。
自分がクライエントだったとしたら、がっかりしてしまうような気がするのです。
「あれ?この人何も応えてくれないじゃん」という感じです。

話しているカウンセラー側もそれを感じるので、どうしてもアドバイスめいたことを言いたくなったり、「それはいいですね」といったような評価めいた言葉も言ってしまいたくなります。

でもそれは本当に相手のためになることなのか?
人とコミュニケーションすることの難しさを痛感します。

結局は傾聴力

色々と書きましたが、アドバイスや助言、同感がないとがっかりされるということは、結局は傾聴スキルが低いことの証拠なのだと思います。

アドバイスがなくと違和感を覚えさせることなく、クライエントに「この人は自分の困り事を本当に理解してくれている」と感じてもらい、自然とクライエントの内省を促していける。
そんな高い傾聴力を持つこと。
それが今の自分の目指すべき姿なのだなと感じた1日でした。

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