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【感想】目撃!にっぽん「コロナと青春とボクら〜水泳部 高3の夏〜」

今回、スポットライトが当たったのは日大豊山高校の水泳部だ。豊山高校の水泳部は、インターハイ10回優勝の強豪校だ。そして、今年の夏は最後のチャンスとしてインターハイにかけていた高校3年生がいた。コロナ禍を受けてインターハイは中止、最後のインターハイのために必死で練習を積んできた中島君は目標を失って引きこもった。

学校側は、何とか部員たちに次なる目標を与えるために、8月に10の強豪校を招いた非公式の大会を企画した。しかし、7月にはコロナの感染再拡大で、県外からの移動は自粛。最終的には都内3校での、ひっそりした大会となった。コロナに翻弄されて、次々と目標を失っていく水泳部員たちの心の動きを追った。

コロナで勝つ奴、負ける奴

中島君はコロナにより休校になってから、ほぼ3か月引きこもった。親と会話することもなく、ただただ落ち込んでいた。ずっと目指してきて、ついに高校3年生の今年、インターハイに出られることになったのに。コロナですべてが消えてしまった。悔しくて、切なくて、やるせなくて、その怒りを誰に、どこにぶつけて良いかもわからなかった。インタビュー中に泣き出してしまう中島君。

学校側が用意した、非公式の大会にも、部員たちの心は盛り上がらない。インターハイの代わりにはならないというのだ。そんな中で、水泳部のキャプテンは同じ気持ちを味わいながらも、すでに仲間を激励する側に回っていた。「インターハイのためじゃなく、将来につなげるためにやる。コロナで勝つ奴と、負ける奴。諦める奴と前に進む奴がいると思う。俺もそんな気持ちで、次の大会をやろうと思う。」。キャプテンはさすがだ。

同じ経験をした人じゃなければ気持ちはわからないものだけれど、一度、そこを乗り越えた人の言葉は強い。キャプテンの言葉をきっかけに、すっかり落ち込んでいた中島君も本気を出して練習に打ち込むようになる。やがて、同じように落ち込む仲間を諫めるくらいまでに気持ちが回復するのだ。仲間の力の大きさも感じる。

世界は変えられない

確かに、コロナはほとんどの人にとって予想外のことだった。私も予定していた大きな仕事やプロジェクトが軒並み中止になり、すっかり力が抜けてしまうような経験をした。落ち込まないように努力したが、今から20年前だったら耐えられなかったかもしれない。まあ、それほどまでに人生経験ってのは貴重なものだ。

人生に挫折はつきものだ。残念ながら、世界は自分の思った通りには動いていかない。若いころは、ある種の「全能感」があるものだが、やがて、自分には全く世界を動かす力がないことを悟るようになる。結局のところ、自分には「できることしか、できないのだ」。単純すぎる事実だが、これを認められるかどうかで、今後の人生は変わるだろう。(参考:柔軟ではない考え方。3つの「要求」(べき思考、ねばならならない思考)

自己ベストという目標

しかし、ピンチをチャンスに変えられるかどうかは気持ち次第だ。最後の大会で自己ベストを出す目標を立てて、打ち込み始める中島君。迷いはなくなった。他の高校から参加する選手がいなくなっても、親たちが応援に来られなくてもかまわない。ただ、高校3年間の区切りとして自己ベストを出して終えることを目標にしたのだ。

最後のレースでは、中島君は0.03秒自己ベストを更新してガッツポーズをとった。心からうれしそうな笑顔が印象的だった。最後に「インターハイがなくても、この大会でよかったと思える」と語った中島君は、一歩大きく成長しているように見えた。人生にはあきらめなければならないこともある。どれほど理不尽でも、どれほど納得がいかなくても、現実に向かい合わなければならないことがある。

そんな時に、状況にコントロールされるのではなく、自分で目標立てて、それを達成することを心から喜べたこと。それこそが貴重な経験となるだろう。インターハイで、そこそこの成績を出すよりも、コロナ禍の中で、あきらめることなく一生懸命、仲間の部員と非公式の大会に打ち込んで自己ベストを出したこと。やがて最上級の思い出になるだろう。

何があっても一生忘れないだろう。悔しさも、辛さも、感情が動いたすべての経験は、しっかりと記憶に刻まれる。そして、彼らは悔いのない形で最後の試合を戦った。ほんと、これは後にならないと分からないんだけど「目標を達成すること」そのものよりも、「目標に向かって努力してきた」という、その過程のほうが大事なのだ。結果としては、それが人を変えるのだ。

そういう意味で、豊山高校の水泳部の皆は素晴らしい経験を積んだのだと思う。やがて、必ずそう思える時が来るよ。そんなことを思いながら、画面を見ていたら、いつの間にか泣いていた。

なんなんだ(笑)意外と青春物に弱いらしい・・・。

#目撃にっぽん #コロナと青春とボクら水泳部高3の夏 #日大豊山高校水泳部 #NHK #コロナ禍

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq