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変化する時代の中で生き残る人たち「フラガール」(松雪泰子, 蒼井優)

我が家では、夕食時の映画は目を離せないので字幕は無しなんだけど、この映画に関しては福島弁が強すぎて「これ、字幕いるかもね」というスタートだった。でも、見ているうちに、どんどん引き込まれて最後は夢中になっていた。見終わった後も、思い返してはジワジワと感動が深まる大満足の映画で、こういうアタリ映画は良いな~としみじみした。

この映画での共演がきっかけで、南海キャンディーズのしずちゃんと蒼井優の友情が、山ちゃんとの結婚に発展したのは有名な話だ。少女時代の蒼井優が、まあ、かわいいこと。最後のソロダンス(練習シーンも含め)も圧巻。山ちゃんとの結婚ニュースで見返した人も多いみたいだけど、2006年の作品なのに、今見ても古さを全く感じない。昭和40年代の炭鉱の町を舞台にしているのも、この作品が色あせていない理由かもしれない。

この映画は文句なしに「メンタルを強くする映画」リストに入れられる。

フラガール(あらすじ)

舞台は昭和40年代の炭鉱の町、福島県いわき市。時代の流れで、徐々に炭鉱の需要はなくなりつつあり、山の男たち(女たち)は岐路に立たされていた。そんな中、福島を盛り上げるため「常磐ハワイアンセンター」という観光名所を作り生き残りをかける人たちがいた。実話をベースにした映画だ。

炭鉱の町の少女たち(蒼井優、しずちゃん・・)は、山を救うために自らフラガールになることを志願し、フラダンスを必死で練習することになる。東京からダンスを教えるために来た平山まどか(松雪泰子)は、最初こそ冷めきっていたものの、だんだんフラガールとの強い絆で結ばれるようになる。折れない心で踊り続ける少女たちの一生懸命さに、だんだんと周囲の人々も変わり始め、、、、

教訓1:時代は変化する

昭和40年代には、日本においてエネルギー革命が起こり炭鉱は閉鎖され始めていた。これまで何代も山の男(女)として生きてきた人たちも、時代の変化についていかなければならなくなる。豊川悦司演じる山の男も、時代についていけずに呆然とする日々を過ごす。「俺たちは悪くない。世の中が変わるのが良くないんだ」と酒を飲む。ハワイアンセンターのために働き出す同僚を裏切りものとして邪魔しようとする。

炭鉱を支える女性たち(母世代)の中でも、娘たちが、この時代にフラダンスを踊るのは受け入れられなかった。ストリップとの違いが分からない感じだったんだね。特に女性が山の男を支える以外の生き方をすることなんて考えも及ばなかった。紀美子(蒼井優)は「男にこびふって、ケツ振って!」と母親から家を追い出されてしまう。紀美子を、フラダンスに誘ってくれた早苗(徳永えり)のお父さんは、まだ炭鉱が閉山されていない北海道の夕張へ引っ越すことを決意する。夕張だって、やがて閉山するのにね。

この映画には時代の変化を受け入れて、それに合わせていくのが難しい人々の姿がよく描かれている。今も変化の時代だ。コロナ危機を迎えて、本当に一つの時代が終わった(それは始まりでもある)。「コロナが早く終われば、回復すれば、元のようになれば」と念じ続けるだけでは、生きていくことはできないだろう。ウィズコロナの時代でも生きていけるように、ある場合は仕事のスタイルを変えなければならない。

炭鉱の人たちのように、これしかできない(やってこなかった)と思うかもしれないけど、時代が変わっているのに、いつまでもこだわっていてもしょうがない。止めようがないものがある。つまりは、自分が変わらなければならないってことだ。「この世界がこうあってほしい」と思うのは自由だけれど、「この世界はこうでなければならない」という硬直した考え方は自分を縛り付けるだけなんだ。

教訓2:斜め上の解決策を

炭鉱がもうだめになりそうだと先を見据えた人たちが、北国である福島を貼ワイにしようと「常磐ハワイアンセンター」を企画する。この企画案がぶっ飛んでいて、実にいい。ハワイアンセンターのためにヤシの木を植樹し、フラガールを募集し、ハワイ化を実現させるために必死になるのだ。炭鉱がダメになるなら、別のエネルギー産業に頼ってもよさそうなものだが、観光業に大きく舵を切ったのが面白い。これが実話なんだからすごいよね。

石炭採掘には邪魔だった「温泉」を使って、まさに一山あてたんだ。

変化の時代には、これまでと同じ方法、延長線上にある方法ではなく、考えたこともないようなチャレンジがあるといい。「他の場所でうまく行っている」とか「過去の成功例がある」とか、そんな既存のモデルに頼れば、突き抜けた企画ができるわけがない。まさに、頭を真っ白にして、今手元にあるリソースをどのように使うと利益が最大化するかを頭を絞って考えたい。

コロナ危機は、まさに100年に一度の未曽有の事態だ。スペイン風邪・大恐慌はおおよそ100年前だ。今生きている人の中で言えば誰も世界中が巻き込まれる感染症や経済危機を経験した人はいない。だから、ここ100年のノウハウには価値がないわけだ。んで、大事なのは、思い切って方向を変えるアイデアだ。

他業種でも、大きく事業を転換していったり、業態を変えて行ったりした仕事人たちのノウハウは参考になるかもしれない。多くの場合、そのノウハウは、そのまま使うことができないとはいえ、彼らのメンタリティが参考になる。もちろん、ハワイアンセンターを実現した人たちからも学べるね。

教訓3:最後は「情熱」の力

究極的に、ハワイアンセンターじゃなければ炭鉱を救えなかったかと言えば、そうではないと思う。他の方法もあっただろうし、もっと良い方法があったかもしれない。でも、この方法(フラダンス)で、この山を救う!本気で立ち上がっている少女たちの熱はどんどんと周囲を動かしていく。平山まどかは、批判の対象となったフラガールたちをかばって「この子達は山を捨てるためではなく、山を守るために踊ることを選んだんです」と言う。フラガールは本気だったのだ。

今でも、フラガールは福島県を盛り上げている。コロナ禍の中でもエールを送ってくれているよ!

映画「フラガール」の冒頭では、ダンスなんて無理だとあきらめかけていた女子たちが、平山まどか(松雪泰子)のダンス・練習シーンを見て心を動かされて、本気でダンスに取り組むようになる姿が描かれている。そして、全く同じような場面が、今度は紀美子(蒼井優)の練習シーンをたまたま見ていた母との間で繰り広げられる。本気で踊る姿に心を打たれたお母さんは、最後の最後は、必死でフラガールを応援するようになる。

一人、また一人と、その情熱に動かされた人たちが協力を始める。最初は冷笑的だった村の人たちも、最後にはフラガールを熱く応援して大団円になるのだ。これもそれも、フラガールたちの情熱が伝わったからだ。情熱って形のないものなんだけど、不思議なことに伝わるんだよね。

新しい方法を試している時って、すごい不安じゃん。

やっている最中に、本当にこれでいいんだろうか、もっと別の方法があったんじゃないか、ここまで来て道を間違っていたら取り返しつかない・・とか、いろんなネガティブな感情が渦巻く。でも、突き抜けることだ。唯一の正解なんかないのかもしれない。心をこめて、思いをこめて、大切な人・物を守るために頑張ることだ。やがて、その熱に共鳴した人たちが集まってきて大きな渦になる。

感想まとめ

う~ん、いい映画だわ。文句なしに5つ星。思い出しても感動しちゃう。

私が一番好きなシーンは、村人たちから誤解され、さんざん批難されて東京に帰ろうとする平山まどか(松雪泰子)を、フラガールたちが引き留めようとするシーン。発車寸前の列車にいる先生に声は届かないけれど、彼女たちはフラダンス(手話)で思いを伝えようとする。冒頭で、平山まどかが、フラダンスの各動作の意味を説明するところが、お見事な伏線になっている。

紀美子(蒼井優)がどうやって先生に思いを伝えようとしているかに気づいた瞬間に、ぐっと涙がこみあげてきてしまった。「フラガールごときに泣かされてたまるか」みたいな変な意地もこみあげてきたけど、感動は素直に味わう人でありたいよね。

本物フラガールの動画を色々と見てしまった。これ、フラガールの最後のシーンとほとんど同じ。映画の再現度すごかったな。蒼井優も、しずちゃんも、ほんと頑張った!プロのフラダンスは美しいな、いつか生で見たい。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq