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森鴎外の『山椒大夫』を読んだらその後読書の面白さが5倍くらいになった件

山椒大夫の感想はとても一言じゃ足りない

本を読むこと

先日、本を面白く読むためには論理力を高めることだ!という記事を書きまして、その際に紹介した著書『本物の教養を身につけるための読書術』の巻末に『段階別名作50選』というページがあります。

この段階で名作を読んでいくことで教養ある人間としてどんな文学作品でも楽しめるぞ、という目的で構成されておりその第一段階に森鴎外の短編小説である『山椒大夫』があったので読んでみました。

結論から話すと、めちゃくちゃ幸福で濃厚なひと時でした。個人的に森鴎外の作品は、高校生のころ国語の教科書の一番後ろに代表作『舞姫』があったのですが、全然意味が分からずに敬遠した記憶がありました。

しかし、年を経たからなのか今読んでみると、これほど味わいがあって色気を感じさせる文章は読んだことがないです。読み終えて、他の鴎外の作品も全てKindleにダウンロードしたくらい、ハマってしまいました。

「読みづらさ」が読解力を鍛えてくれる

感謝脳

ただ、本を読んだことがこれまでなかった方にとっては、最初は森鴎外特有の文体に少し面を食らってしまうかも知れません。ちなみに序文を記しておくと

”越後の春日を経て今津へ出る道を、珍らしい旅人の一群れが歩いている。母は三十歳を踰えたばかりの女で、二人の子供を連れている。姉は十四、弟は十二である。それに四十ぐらいの女中が一人ついて、くたびれた同胞二人を、「もうじきにお宿にお着きなさいます」と言って励まして歩かせようとする。二人の中で、姉娘は足を引きずるようにして歩いているが、それでも気が勝っていて、疲れたのを母や弟に知らせまいとして、折り折り思い出したように弾力のある歩きつきをして見せる。”

と、一つ一つ文体が丁寧で、その分じっくりと読まないと頭に入ってこない構成になっておりますが読んでみると、現代小説ではまず経験できないような味わいがあります。

内容もさることながら、文章そのものを楽しむ経験は近代文学でしかできないなと。ノウハウ本と違い、物語ですから前後の文章を読んでいないとすぐに訳が分からなくなるからまた読み返すのですが、そうやって繰り返し読んでいると一文一文に注意が向き、リアルに集中力が増します。

だから読んだ後も要約することは読み返さなくても出来るくらい、鮮明に思い起こせます。人攫いの憂き目にあった姉弟である安寿と厨子王が山椒大夫のもとで働くことになるシーンはただ悲しく、また脱走の計画を企てた時の安寿の決意の情景描写は何度でも読み返したいものです。

今、小説を読むなら近代文学だ!

近代文学

今回は森鴎外の『山椒大夫』を紹介しましたが、いずれは夏目漱石や島崎藤村など、上の画像にある方々のは読破したいなと思いました。

今なら、Kindleでほとんどの近代文学が無料で読めます。それは著作権が切れている作家が多いからです。著作者の死後70年までが原則なので、森鴎外や夏目漱石の名作がタダで読めます。

タダだし、データ化してどこでも読めるのですから本当にいい時代に生まれたものです。教養が身につくし料金もタダ、まさにコスパ最強です。

今こそ読書しかないなと思わされますので、もし宜しければ著書『本物の教養を身につける読書術』は読んでみてください。


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