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「IPSは新たな可能性に開かれていることを意図する、
人と人との関わりの在り方(関係性)と会話をめぐるものです。

私たちは、どのようにして物事を”知る”のか、
そして新たな”知り方”に目が開かれるのは、
どのような関係性と会話を通して何のかを追求してきました。

人類として私たちが、自分との、自分の周りの人々との、
さらには、この地球上に存在する、共通したものを何も
持っていないかもしれない人々との、
つながりの在り方を究めるものがIPSだともいえます。

関係性と会話は即興で奏でられる音楽のように
絶え間なく流れているものです。

IPSは、お互いの音が響きあい、さらに興味深く、
さらに奥深い理解へと導かれる関係性と
会話を紡ぐ術なのです。

それはまた、この世界が予測のつかなさを
もっとおおらかに受け入れ、

怖れに動かされて反応することが少なく、
常に意識を覚醒させているための道具ともいえます」

(「IPS(Intentional Peer Support
インテンショナル・ピアサポート)」のサイトより)

意図的なピアサポートはメンタルヘルスの現場から
生まれましたが、メンタルに関わる人たちだけではなく
混迷する今の日本人にとってこれからの時代を生きる上で
必要なものだと思い、まとめました。

上記の文章はIPSを翻訳して日本に伝えた方達のサイトから
引用させてもらいました。
ぜひ全文を読んでもらいたいのですが、わかる人にはわかる
グッとくる文章です。リンクを文末に載せておきます。

そして、下記のまとめはIPS(意図的なピアサポート)の
創始者のシェリーミードさんたちと共に活動し
日本に伝えてくれた1人のスティーヴンが2024年に
来日された際の講座を参考にまとめたものです。

『』内はスティーヴンの言葉となっております。

IPS(意図的なピアサポート)が生まれた背景

『IPSとは 躁うつ病や統合失調症などの診断名をつけられ
「慢性的に精神的におかしい」「一生治らない」と言われた人たちが、
薬や当時の医療よりももっといいやり方があると、
お互いにサポートしあうことからうまれました。』

IPSの会話とは

メンタルが不調でというと

「どうやったら良くなる」
「早く治さなければ」

と治療や治すことに注目しがちですが、

『IPSではそれぞれが抱えている問題や
悩み事を中心にした会話ではなく、
新たな可能性に目を向けた、お互いにとっての学びを
生み出すような会話を意図しています。』

ピアサポートとは

ピア=「仲間」という意味で

ピアサポート=「同じような背景をもった人同士が
お互いに支えあう」ことをいいます。

意図的なとは

『お互いがお互いのストーリーや物の見方から
抜け出すことの助けになるようなやり方で、
意図的にコミュニケーションを行うことです。』

衝突が起きたり、人間関係で問題が起きるのは
この「物の見方」「世界観」が異なるからです。

「みんな違ってみんないい」と金子みすゞの言葉が流行ったように
そんなのみんな頭ではわかっている。
けど実際の行動に移せていないから、人間関係の問題が起こるのです。

私がIPSに触れて感じるのは
「そりゃあ、できないよね。だって
周りにこんなコミュニケーションしている人
いなかったもの」

言い訳じみていますが、
幼少期特に家庭環境でお互いを尊重しあうような
関係ではなかった人は、大人になってからも
慣れた関係性を築きやすいので
「お互いを尊重しサポートしあう関係性」に
違和感やおかしさを感じて近づかない傾向にあります。

そうでない人もいるけれど。

「コミュ力すごいな~」
「人間関係広そう!」

と見える人でも
IPSに触れると涙したり
今までの自分を振り返って
より自分らしい生き方になっていくので
必要な人に触れてもらえたらと思っています。

IPSの成り立ち

 先ほども書きましたがIPSは
診断名をつけられた人達が

「薬や治療よりもっといいやり方がある」

「困難はあるけれど自分のことは自分で決めたい」

「自分らしくいい感じで暮らしたい」

と願う人たちがお互いの経験をシェアしたり、
分かち合ったり、お互いから学びあったり
ということをする中で生まれてきました。

IPSでやっていること

『お互いの気持ちを聞いたり
何が自分たちの助けになって
何が助けにならないかの記録をつけていました。

お互いを知りあうことに時間をとって
「これは自分にとって必要だからこうしてほしい」
「これはしないでほしい」ということを
お互いに尊重していました。』

医療関係者の反応

『IPSでやっていたことは
当時の医療関係者に混乱を引きおこしました。

医療関係者はリカバリーのために
これをやればうまくいくという
1つのやり方があると信じたからです。

この人の助けになることが
他の人の助けにはならないこともあり、
まったく別の方法が役立つこともあると
いったようなことは複雑で受け入れがたかったのです』

IPSができた数十年前から比べると
アメリカのいくつかの州でこのIPSが
メンタルヘルスのリカバリープログラムに
取り入れられたりと、変化していて

日本でもWRAP(元気回復行動プラン)や
様々なプログラムを取り入れる医療機関が増えて
柔軟な考え方の医療関係者も増えています。

とはいえまだまだ医療中心の世の中。

「医療や薬は1つの選択肢に過ぎない。
自分のメンタルは自分で整える!」

と主体性を持って学び実践する人が増えたら
日本人は心身ともに健康な人になり
自殺やいじめ等は減ると思っています。

IPSの根底にあるもの


『お互いを尊重し、お互いにとっていいことを意図的にやっていく』

これも簡単なようで実践するとなると難しい…。

ご飯を食べるときにマンガを離さない子どもと
どうやってお互いを尊重する対話ができるのか…。

「あなたの育て方が悪い」と言われればそれまでですが、
マンガを話さない子どもも尊重する、

マンガを読んで待っていてくれれば助かるという時と
ご飯時にマンガを読まれると行儀が悪い!と
怒鳴りたくなる時とあれこれ併せ持つ親自身も尊重すると

いたったい
どんな対話になるのでしょうか???

ピアサポートの副作用

『薬には副作用があるが、ピアサポートには副作用はない』

これもスティーヴンの言葉です。

「精神科の薬を飲むと副作用がしんどい」
とはよく聞くことですが、
このしんどさは飲んだことがある人でないと
わからないこと。

だからこそ
IPSに「副作用がない」
というのは大きな意味を持つことかもしれません。

IPSの問題点

とはいえIPSにも問題点がある、とスティーヴンは言っています。

『IPS、ピアサポートをやり始めて
暗い場所にいた方がどんどん気分がよくなると
「このやり方が正解なんだ!」と思ってしまう事がある。

良くなった方法は「その人」のやり方で
誰にでもあてはまるとは限らない。』

これは私も耳が痛いのですが、
食事と環境を変えることで
アトピーが良くなったときに

玄米菜食がいいよ!
無農薬がいいよ!
自然に合わせたリズムで元気になるよ!

とみんながそうすればいいと
本気で思っていました。

今思えば、
それは私にあっていただけで
・お肉をしっかり食べたほうがいい人もいれば
・都会でパーッと華やかな生活が合う人もいる

その人の性質や年齢、タイミングによっても
「生き生きと健康に過ごす方法」は違うので

同じような背景を持つ人たちと
気持ちや経験をシェアしあいながら
自分なりのやり方を見つけていくのが
しっくりくるなあと感じています。

ピアサポートのやり方

なので『ピアサポートにも
正しいやり方があるわけではありません。

ピアサポートとは1人1人に合わせてやっていくもので、
治療とかカウンセリングとは種類が違って、
お互いが対等な立場で取りくむことが必要なのです。』

IPSは誰とでもできる?

『私たちが誰かをサポートするとしたら
その人と関係を築くことに時間をかける必要があります。

その人は世界をどのように見ているのか
自分自身をどのように捉えているのかなど
その人のことを深く知る必要があります。

お互いに深く知り合うということを
全員とできるわけではないので
誰とでも、というわけではありません。』

そして経験があると思いますが、
安心して感情を出せる人もいれば、
通じ合えないと感じることもありますよね。

この場合も
合わないと感じているのに
無理やりピアサポートをしようとしても
うまくいかないのです。

私があなたをサポートするのではない

ちょっと解りづらいと思うのですが、

『ピアサポートは

「私があなたをサポートする」とか
「あなたが私をサポートする」
ということではありません。』

サポートするというと
「私が誰かを」とか「誰かが私を」と
人と人と思いがちですが、

『誰かからサポートされるのではなく
【関係性からサポート】されるのです。』

そして一方通行ではなく
私たちがお互いに

【関係性に気をつける】

【関係性のケアをする】

ということなのです。

ピアサポートにおける責任とは

『私たちは人間なので
間違いを犯すこともあるし
言うつもりがないことをいったり
するつもりがないことをやってしまうこともあります。

そこで関係性にヒビが入ったり
壊れることが起こるかもしれません。
そうした場合にお互いが関係性に
責任を持つということは』

相手を傷つけるようなことがあったら
「こんなことをしてしまってごめんなさい」と
謝ることであったり

『「今のことで私は傷つきました」というようなことを
お互いに言うということです』

IPSで最も重要なこと

『自分の感情に正直であること、
嘘偽りのない誠実さです。

私たちは自分の感情に正直じゃないほうを
選んでしまう事があります。

「自分の感情に正直になることで、
相手を傷つけたくない」という気持ちに
なることがありますが、

そうするとその関係性は
相手の感情の方にいってしまいます。

自分の気持ちに誠実で正直であることで、
より理解が深まりお互いに信頼できる
より深い関係性になるのです。』

身体の声を聴くメンタルケアとIPS

IPSを初めて学んでから10年立ちますが、
IPSは完成されたものではなく、
翻訳してくれた方とスティーヴンが
日本で発展させてくれたものを
さらに発展させていきたいと思っています。

身体の声を聴くメンタルケアでは
「対話のレッスン」としてオンラインで
お互いに学びあっていますが、

受けてくれた方が
さらに家族や身近な人たちと
対話を発展させていってくれることが願いです。

「世界平和のために、私は何をしたらいいでしょうか」
という問いに、

「あなたの家に帰って、あなたの家族を愛してあげてください」

と答えたマザーテレサの言葉の通り
大きな事をするにはまず、
目の前の小さなことから取り組む必要があります。

と同時に身近な人とピアサポート的な
関係性を持つのは難しいからこそ、
仲間が必要なのです。

仲間と支えあいながら
お互いを尊重する関係性を築いていく。

小さいけれど
それが世界平和にも

自分の心の健康にも最も重要なことなのです。

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そして最初にご紹介した
意図的なピアサポートリンクはこちらです。
よろしかったらご参考に↓

「Intentional Peer Support(意図的なピアサポート)」https://intentionalpeersupport.jp/

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