森毬藻

psychotherapist/writer/dancer メンタル不調にどう向き合っ…

森毬藻

psychotherapist/writer/dancer メンタル不調にどう向き合ったかを著書から読み解くコラムです。

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メンタル不調の書かれ方|魂を分け合う往復書簡。『急に具合が悪くなる』/宮野真生子・磯野真穂

 まず、タイトルにひかれて本書を手に取った。「なんで急に具合が悪くなっちゃうんだろ?」、と。これは哲学者と人類学者の往復書簡であり、急に具合が悪くなる可能性があるのは哲学者の宮野真生子だ。ワークショップ開催のためにメールのやりとりをしていたところ、人類学者の磯野真穂に宮野が「がんを患っているため、急に具合が悪くなるかもしれない。イベントの講師を引き受けていいものか」と打ち明けるところから始まる。  磯野は当然のごとく驚き、戸惑うが、「急に具合が悪くなるとはいったい何を意味し

    • メンタル不調の書かれ方|意外と少ない、当事者による「本物のうつ病」体験記。『うつ病九段』/先崎 学

       日常生活で「うつっぽくてさ~」などとよく言われたりするけれど、いわゆる精神病としての「うつ病」の心身の状態というのは、本当にそれはもう地獄のような苦しみなのだなぁということが、本書を読むと改めて認識される。  著者は著名な棋士で、あの『3月のライオン』の映画監修なども務めている。おそらく多忙を極めたことが一因でもあるだろうが、突然、本当に突然として将棋が指せなくなった。考えがまとまらなくなり、朝起きられず、死ぬことさえ頭をよぎるようになる。電車に飛び込むイメージが、一日に

      • メンタル不調の書かれ方|いくら想像しても、経験しないとわからないことがある。『食べることと出すこと』/頭木弘樹

         筆者は20歳のときに「赤い便」を出した。最初は単なる下痢だと思い込もうとしたが、次第に症状はひどくなった。トイレの回数は数え切れず、そのたびに血の下痢。漏らしてしまって失感情症状態にもなる。なんと26キロも体重が減ったという。  病名は「潰瘍性大腸炎」。国が指定している難病だ。とはいえ、人によって症状の出方はかなり違いがあり、服薬しながら社会生活を送れている人もいる。筆者の場合はかなり重いほうで、絶食をともなう入院生活を13年間繰り返したあと、手術を受けてひとまずの寛解に

        • メンタル不調の書かれ方|同じことを何百回、何千回とやっていく先に回復がある。『生きてりゃ踊るだろ』/辻本知彦

           辻本知彦はコンテンポラリーダンサーである。『パプリカ』や米津玄師のMVの振付師といえば、「あぁ」と思ってくれる人も少なくないだろう。  わたしが彼をもっとも近くで観たのは、たぶんコロナ禍の少しまえ、「きゅうかくうしお」(森山未來とのユニット)の舞台。なんかいろいろしゃべりながら縦横無尽に舞台を踊り回っていて、すごく楽しそうだった。坊主頭で関西弁、体格もよく、パッと見ではちょっと怖い人かもしれない。でも舞台を見て「すごく柔軟な筋肉を繊細に使える人なんだなぁ」と感じたことを覚え

        メンタル不調の書かれ方|魂を分け合う往復書簡。『急に具合が悪くなる』/宮野真生子・磯野真穂

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