ライブパフォーマンスの限界
ライブパフォーマンスを初めて10年。
昨夜「Hyper geek」というライブを最後に10年目にしてライブパフォーマンスを辞めることにした。辞める理由にはいくつかあり、皆さんより「なぜ?」と言われることが多いので、辞めることについてでここで少し触れていこうと思う。
①体力の限界
私がライブを始めたのが40代からということもありそもそもかなり疲れが溜まる年齢でパフォーマンスを始めたということが大きく、年齢と共にライブどころか移動するだけで疲れるようになってしまった。
また、ライブを重ねるに連れパフォーマンスの質を求められるようになり、かなり動きを取り入れたパフォーマンスを行うようになってからはライブ後の体力が戻るまでに1週間以上もかかるようになってしまった。体力が落ちると感染症にもかかりやすくなってしまった。
また「パフォーマンスより音を聴いてもらいたい」という気持ちが強くなり、現段階のパフォーマンスでは音に重きを置いていないと感じてしまったのがきっかけでもあった。
②音の限界値
様々な場所でのライブパフォーマンスを行ってきたが、自分にとって一番理想的な音が出せる環境が少なくなってしまった。
私の楽曲の場合40Hz〜60Hzあたりの低域を得意としているため、この音の環境でライブができるのは今まで落合Soupしかなかった。音楽家にとって自分の理想の音が出せない・表現できないのは大変なストレスでもある。多分、映像の方が4K以上で映像を出したいのにSDでしか出せないみたいなものと似ているのかもしれない。
音楽家である以上やはり聞いてもらいたいのは音なわけでパフォーマンスではない。寧ろ音のみを聴いて体感してもらいたいという気持ちのほうが強く、椅子に座ってじっくり実験的な音を出しているほうが自分にとっては楽しく理想的であった。
これは私の周りの音楽家でも同意見の方がたくさんおり「理想の音が出せなかったらライブをしないほうがいい」と言っている方も多い。まさしく私もこれと同じ気持ちでいることに気がついたのである。
下記は2019年に落合Soupにて行った20人限定ライブの再構築版音源。
Kyokaさんを始め、34423ちゃん・iwamakiさんの女性アーティスト4人だけの限定ライブだった。
③楽曲制作への専念
元々は音楽を作るほうが好きなタイプだったので、ライブをする気は最初からはあまり考えていなかった。何となくライブに出てみて、たくさんの人に会えて刺激をもらえて嬉しかった。
ただ、段々と自分が理想としてきた音楽家がいなくなりいつのまにか刺激も少なくなってしまった。
また、音楽を作っている時の自分の集中力が半端なく、音楽制作の時だけは体が疲れない限り三度の飯より睡眠より何よりも楽しい時間を過ごせている。ただライブに関しては全く真逆で、30分の持ち時間の中で5分で飽きて「早く終わらないかな」と感じることが多くなってきてしまった。
「作る」と「表現する」は全く別の行為のため、ライブに関しては全く集中力が続かないということは、オーディエンスにもそれは伝わるだろうと考えた結果ライブはもう辞めようと感じた。
④パニック障害・広場恐怖・過敏性腸症候群
ライブに行くには電車に乗らなくてはいけない。でも電車が怖い。渋谷や恵比寿などがライブ会場の場合、たくさんの人混みの中に入らなければならない。夜は遅くなり大嫌いな酔っ払いから逃げるように走って帰る。電車内で何度も腹痛や動悸に襲われて途中で降りてそこから行けなくなる…など、自分が都心に出るためにはいくつかのハードルがありすぎた。
実はコロナ禍で電車に乗らなくても良かった時期が2年あり、その時のストレスフリーな生活からなかなか抜け出せなくなってしまった。
パニック障害はかなり昔に発症したが、東日本大震災の時に地元が津波で破壊された時からまた発症してしまった。騙し騙し「なんとかなるだろう」と電車に乗ろうとしても電車の中に入れなくなり、何時間も経ってしまうことも度々ある。
そのため都心ではタクシーを利用するようになったが、かなり高額になるためできればそれも辞めたいと思っていた。
結局は
様々なことの積み重ねがきっかけでストレスが多くなってしまったことが1番の理由かもしれない。
ストレスになるくらいなら自宅の周りで犬と自然に触れているほうがいいし、音楽だけではなく普通に旅行を楽しみたいと思っている。
最近では絶景を見に夫が運転するキャンピングカーで出かけるほうが楽しくなった。
多分年齢的なものが大きいだろう。
若かったら友達とフェスに行くほうが楽しいかもしれない。ただ、もう東京は嫌いだし大自然をありのまま楽しむほうがリラックスできる。
「また気が変わればライブに戻ってきて」と言われたが、多分ずっとこれからも気が変わることもなさそうだしライブに出ることは全く考えていない。
実は私自身「ライブが下手」というのをずっと感じていたので楽になったのもある。ライブは見ているほうが好きだったりもする。
それでもやはり、今までライブを見に来てくださった方には感謝しかないです。音楽制作は続けていきますし、アーティストとしてのリリースもあるでしょう。これからはじっくりゆっくり音を紡ぐ作業を楽しんで行こうと思います。
本当に今までありがとうございました。
心より感謝いたします。
Ikuko Morozumi
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