仕事中に心を打ち抜かれた話

私は、食品売り場のレジを主に担当している。
週末や休日はお客様の来店数も多くなり非常に忙しく表情筋がもう無理ですと訴えてくる事もある。そんな引き攣った表情筋を一瞬でほぐしてくれる出会いがあった。
母親と4〜5歳くらいの男児がレジに並び、男児が持っていたお菓子を差し出してきた。
自分が手にしたものは誰にも渡すまいと頑なになる子が多い中、この子は素直なタイプの子だなどと心の中で思いながら商品をレジに通しお買い上げテープを貼って再び男児へと手渡す。
お菓子を見つめ欲しいものが手に入ったことへの喜びの表情を浮かべた姿はまさに癒しだった。
すると徐にこちらに目線を向けたかと思うとニコッとさらに可愛らしい笑顔を浮かべた瞬間

「また来るね!」

そう言い放った。
今までに無いパターンだ。
その純粋な瞳と言葉で私の心はグッと鷲掴みされた。

「ぜひ、お待ちしております!」

咄嗟にそう言っていた。
この子は将来、とんでもない年上キラーになるかもしれない…そんな風に思わせる視線と言い方だった。
母親が隣で「すいません」と苦笑いしながら言ってきたが、こちらからしたら土下座してありがとうを伝えたいほどであった。
引き攣った表情筋は一瞬で綻び、きっとその時の私の表情は今までにないほどのニヤケ顔をしていたことだろう。

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