[読書感想]『ぼくがスカートをはく日』を読んで

『ぼくがスカートをはく日』
著 エイミ・ポロンスキー
訳 西田佳子

ーあらすじー
幼い頃に両親を交通事故で亡くした小学6年生の男の子。その子の性自認は「女の子」。しかしそれは、周りの環境から誰にも言えない秘密。
そんな主人公が演劇で女の子の役に挑戦し、「自分は自分だ」と思える自信と勇気を生み出していくストーリー。

⚠️多少ネタバレを含みます⚠️

先日小さな図書館の児童書コーナーで手に取り、流れるように読み切った。
この本を、3つのテーマに沿って感想を述べていこうと思う。

①印象的だったシーン

印象的だったシーン。それは、やはりラストだ。彼女は、演劇で本当の自分を曝け出す。演劇が終わると、日常が戻ってくる。
「もう自分を偽る必要などない」と思い切り、彼女の本当に好きな服装、髪型で教室に入っていくところで物語は終わる。
最後の一文の一人称が「ぼく」から「わたし」に変わるところで鳥肌が立った。
また、作中で彼女がとある古着屋で着替えるシーンがあった。初めてスカートをはくシーンだ。そのときの描写が鮮やかで生々しく、姿見を見た彼女と同様に、スカート姿の彼女に惹き込まれるようだった。

②外国児童書としての本書

この本には彼女の性自認をカミングアウトするシーンがある。また、堂々と「演劇で女の子の役がやりたい」と言うシーンもある。
自分が小学生の頃に読んできた本では、偏見かもしれないが主人公の都合の悪いシーンは割と省かれていた印象だった。しかし、本書はそのようなシーンも省かず、主人公が苛めを受けたり家族から受け入れられなかったりといったことが描かれている。
ただ単に「勇気を出すのは大事だ」というだけではなく「勇気を出すということはそれなりのリスクも伴う」と、人生において厳しいことも当たり前にあるのだと教えてくれている気がする。
国柄の違いからなのかは分からないが、「一筋縄ではいくはずがない」と釘を刺されているように感じる本書が益々好きになった。

③LGBTQからの視点

本文解説の松中権氏の言葉に「性自認や性的指向は誰かが勝手に決めつけたり、押し付けたり、否定したりできるものではなく、本人が心で感じることだ」とある。この文にとても共感できた。本文では彼女の叔母が「辞めなさい、そんな女の子みたいなこと!」と叱るシーンがあり、読んでいてとても辛かった。
彼女の、彼女として生きる選択は、たとえ家族であっても否定出来ないのに。世間からどう見られるかや他の人より不利になるのではないか、という心配も分かる。実際、そのような問題も発生した。だが、彼女はそれを理解して受け入れた。そして、尚も主張し続ける。「自分は自分だ」と。自分は、そんな美しい彼である彼女に惚れた。

最後に

長くなってしまった。でも、それだけこの本について語りたいことがあった。

またひとつ、視野が広がった。
この本に出逢えたことに心からの感謝を込めて、終わりとさせていただく。


ご清覧ありがとうございました。
自販機のコンポタでした🌽

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