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もの言わずじっと

"目は口ほどに物を言い" なんてことわざがありますが、一方、間に挟まれ鼻は静かに黙っています。

そんな静かなものについてだったり、違ったりする雑談。

クチナシ?

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目は口ほどに~とはいうものの、物を言うのはやはり口の役割です。そんな大切な口ですが、蚕の成虫にはそれがないという話を聞いたことがあります。

ふと思い出して調べてみたのですが、どうやら俗説だったようで、口自体はあるらしい。しかしそれは退化しており、食事をとるための機能を失っているのだとか。チョウやガの類はストロー状の口吻という器官を使って食事をとりますが、その口吻がなくなってしまっているそうです。

虫にしては随分とカワイイ蚕の成虫。彼らはとても短命で、オスは交尾後 2, 3 日、メスは産卵後 4, 5 日しか生きません。そのため人の手で交配が行われる養蚕の現場では食事をとる必要もなく、幼虫時代に昼夜を問わず食べ続けたクワの葉で、一生分のエネルギーを賄っているのだといいます。

"一生分の○○を食べた" なんて言い回しをたまに聞きますが、これは蚕の幼虫のためにあるようなセリフですね。

是非サナギになる直前 "一生分の葉っぱ食べた!" と、高らかに宣言して欲しいものですが、言動に表すというのは意外とカロリーの高い行為。省エネで生きていく彼らには向いてなさそうですね。

サイレント・マジョリティ

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自分の意思を高らかに宣言する、というのは意外と疲れるものです。メンドクサイしまぁいっか、という経験が誰しもあるはず。

それが自分一人なら良いのですが、実は周りも同じように口をつぐんでいたりすると、声をあげた一匹のネコ様の意見が採用され、うっかり夕飯がチャオチュールになるかもしれません。

"サイレント・マジョリティ" という言葉がありますね。もとは日本でいうところの "鬼籍" と同じ、亡くなった人々を指す表現だったそうですが、現在では "声を上げない大多数の人々" を指す言葉として使われます。

有名な話だと、アメリカ第37代大統領リチャード・ニクソンの演説の中に登場しました。過激な発言や運動を行う少数の層ではなく、表立って発言や運動を行わない大多数の層に対し訴えかけるため、彼らをサイレント・マジョリティと表現したとのこと。

その演説の中では、サイレント・マジョリティは自分の意見に賛同しているという表現がされていましたが、おそらくその引用と思われる、欅坂46の歌 "サイレントマジョリティー" には "どこかの大統領が、声を上げないものは賛成していると曲解して言った" というような一節があります。

結局どっちだったのでしょうね。サイレントマジョリティ同士にも意見の相違はあるでしょうし、たまには声を上げてみるのもよいのかも。

やっぱりちょっと面倒ですけどね。

沈黙する人々

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とはいえ、普段物静かでも案外 "喋っていいよ" となると "あ、じゃあ" とばかりに、ベラベラ喋り出す人もいますよね。はい、自己紹介です。

同じようにフィンランドの国道5号線脇に佇むこちらの方々にも、そこで何をしているのかぜひ話して欲しいものですが、残念ながらそれは叶いません。

カカシですからね。

しかし随分と異様な光景です。守る作物も無いこんな場所に、何故こんなに大勢のカカシが佇んでいるのでしょうか。

実は彼らは獣やら何やらを追い払うためではなく、アートとしてココに存在しています。手掛けたのは地元アーティストの "レイヨ・ケラ" 氏であり、タイトルを "ヒリヤイネン・カンサ" というのだそう。

日本語に訳すと "沈黙する人々"。顔のない彼らは皆揃って、国道の向こうフィンランドの広大な森を黙って見つめています

このアートの意図については、レイヨ・ケラ氏自身も沈黙を貫いており、きっとこの先もそれが語られることはないのでしょう。

実に奇妙で心惹かれます。

おわりに

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酒呑みの身としては、沈黙と聞いて真っ先に思い浮かぶのは肝臓。沈黙の臓器なんて言われるので、結構日々気になっていたりするのですが......

"分かっちゃいるけど、やめられない!" のか "(症状が)分からないから、やめられない!" のか。

おいしいからね。しょうがない。



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