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ないもの語り

生きているとどうしても、どこかで "ある事ない事語られる" ものですが、できれば自分自身は、そんな話の語り部にはなりたくないものです。

とはいえ、モノによっては "ない話" というのも興味深いもので、これはそんな雰囲気の雑談。

パレイドリア

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"空に龍が飛んでいる!" なんて様子は、なかなか現代ではお目にかかれませんが、 "なんかあの雲、龍っぽくない?" というケースはちらほら。

古くは月のあばたが何に見えるか?という話がありますが、そういった本来なんでもないはずのものに、見知ったものを見出してしまう現象には "パレイドリア" という名前がついているそうです。響きが良い。

パレイドリアは視覚や聴覚に現れるものだそうで、無秩序な音声から何らかの言語が聞きとれたりする事もあるそうですが、やはり体感的にも一番多いのは、何かが顔に見えるというパターンでしょう。

例えばこんなの

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どう見ても顔に見えるうえに、なんだか "ちょっと不機嫌なんだろうな......" と感情まで察せるような気がします。

人間には対峙した者に敵意があるかどうか、相手の顔つきから読み取ろうとする本能的な働きがあるそうです、それで少しでも顔の要素を持つものには、まず顔として向き合おうとするのかもしれませんね。

そういえば子供の頃、グチャグチャの線で埋めた紙を眺めながら "はて、何か見えるだろうか?" という遊びを一人でしていたのを思い出しました。いわれてみれば動物や人間の顔が、よく見えていたような記憶があります。


アーグルトンはどこですか?

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アーグルトン(Argleton)。その街はイングランドのランカシャー州、オートンという土地にありません。はい、ナンノコッチャですね。

この "アーグルトン" というのは 2009 年まで Google map に記載されていた、実在しない街の名前です。何故実在しない街が Google map に記載されることになったか、その経緯が Google 社からアナウンスされることはなかったようですが、予想される理由の一つに "ペーパータウン" というものがあります。

有名な例は 1925 年頃の General Drafting 社が発行した地図に記されている、アグロー(Agloe) という街ですが、これは存在しない街アグローを意図的に地図に記すことで、同業他社に地図のデータを盗用された場合に、権利侵害が行われた根拠とするためのものでした。こうしたコピーライト・トラップのための架空の街を "ペーパータウン" と呼ぶのだそうです。

そういえば "アーグルトン(Argleton)" と "アグロー(Agloe)"。字面も随分と似通っていますね。

もし仮に Google map のアーグルトンがペーパータウンであったなら、それはアグローのような、コピーライト・トラップとしての意図ではなく、地図というものに古来あった文化をインターネットにこっそり持ち込んだ、いわばイースターエッグだったのではないかなと思います。

もしそうだったら素敵だな、という願望も込めて。

代用ウミガメ

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"素敵なス・スープ、たっぷりミ・ミドリ" とは谷山浩子さんの "ウミガメのスープ" の歌詞。これは不思議の国のアリスに登場する "Turtle Soup" という歌の詩が元になっていますが、作中でそれを歌ったのが代用ウミガメというキャラクター。

彼はウミガメの体に仔牛の頭・後ろ足・しっぽという姿をしていますが "代用ウミガメ" とはなんとも変わった名前です。ルイス・キャロルの作品では言葉遊びが頻繁に登場しますが、実はこのキャラクターの名前も言葉遊びから生まれたもの。

意味がわかるとゾッとする話に登場する "ウミガメのスープ" ですが、それ自体は実際にあった料理です。しかし、ウミガメはかつて高級品だったがために、ウミガメの代わりに仔牛を使った、ウミガメのスープの代用品もつくられていました。それを英語で綴ると

mock "turtle soup" ...... "ウミガメのスープ" の代用

となりますが、この文節を変えて

"mock turtle" soup ...... "代用ウミガメ" のスープ

としたわけです。するとこのスープの材料である、本来は存在しない生き物 "代用ウミガメ" が自然と生まれてくるわけですね。

日本語の "ぎなた読み" ではないですが、よくこんなの思いつくなぁ。


おわりに

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"ぎなた読み" という言葉の由来は、"弁慶の薙刀" を "弁慶のな、ぎなた" と読んでしまった、という事からなのだとか。最近知りました。

それであれば、"弁慶の泣き所" は "弁慶のな、きどころ" となるわけで、では "きどころ" とは ...... まで考えたのですが、あんまり面白いことが思い浮かびませんでした。

"無いもの" について書いてきましたが、残念ながら僕にはユーモアのセンスが "無かった" というわけですね。

お後がよろしいようで!




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