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初期衝動はカレーに有り?今こそ劇場版『SHIROBAKO』を語りたい。

<STORY>

いつか必ず何としてでもアニメーション作品を一緒に作ろうと、ひょうたん屋のドーナツで誓いを立てた上山高校アニメーション同好会の5人。卒業後それぞれがそれぞれの場所でアニメーション制作に携わっていく。宮森あおいは「えくそだすっ!」「第三飛行少女隊」の制作を経て、少しずつ夢へ近づきつつ、徐々に自分の本当にやりたいことを考え始めていた。
あれから、4年。日々の仕事に葛藤しながら過ごしていたあおいは朝礼後、渡辺に呼ばれ新企画の劇場用アニメーションを任されることになる。しかし、この企画には思わぬ落とし穴があった。今の会社の状況で劇場用アニメーションを進行できるのか?不安がよぎるあおい・・・新たな仲間・宮井 楓やムサニメンバーと協力し、完成に向けて動き出す。果たして、劇場版の納品は間に合うのか――!?


リアル(現実)からのスタート

最初はアニメ『SHIROBAKO』の簡単な説明からスタート。アニメを見ていた人間なら、それは希望に満ちたものだったと知っている。でも、その5分後に知るのは、変わり果てた武蔵野アニメーションの姿だ。

建物は古びて、社長は代わり、働く人はめっきりと減っている。

カレー(初期騒動)で動かされる宮森

オリジナル劇場版アニメを作るかどうかを、武蔵野の新社長になった渡辺は、宮森に相談する。宮森は悩む。どうすればよいか。昔の彼女なら即決で作ると言ってただろう。しかし、管理職の立場になった彼女は現実を知っている。今の武蔵野アニメーションで作るのは厳しいことを。

悩んだ彼女は、武蔵野の社長を引退し、料理店を開いている元社長丸山に会いに行く。そして丸山の作ったカレーを泣きながら食べるのだ。このカレーは武蔵野アニメーションで働いていた頃、社長の丸山がよく作ってくれた懐かしの味。宮森はこのカレーを食べながら、働いていた当初の自分を思い出す。当時の初期衝動を味わったのだろう。そして宮森は、時間と人員がまったく足りない中、劇場版アニメを作ることを決意する。

このカレーは、後に監督を引き受けた木下 誠一にも引き継がれる。アニメが無事完成し、一人カレーを作っていた木下は、丸山が居た頃のカレーの味になってないとぼやく。その木下を見た宮森に、実は完成したアニメはまだ満足していないのではないか?と指摘されるのだ。しかし、今から作り直すには無理がある。でも本当は作り直したい、と現実と理想に揺れ動く。

それぞれの夢のあと

息詰まる5人

上山高校アニメーション同好会の5人は、それぞれ自分がしたい仕事に就いているが、自分の理想とは違う待遇に多少の不満を感じているようだ。

アニメでは、最終回に彼女たちは一応夢の第一歩を歩んだ!というところで終わってる。しかし、この劇場版ではその先が映し出されているのだ。

コロナ騒動によるSHIROBAKOの不遇さ。

この不遇さは劇中にある武蔵野アニメーションとそのスタッフに被る。

劇場版『SHIROBAKO』は間違いなく面白い、のに。

私は3月上旬の昼頃に見に行った。コロナが今のように広がってはいなかったが、劇場に来ていたのはほんの30人程度だった。

現在映画館へ行く人はほぼ居ないだろう。もしくは閉まっているか。SHIROBAKOのファンは多く、内容も素晴らしいのに、今年大ヒットのアニメ映画になるポテンシャルはあったのに、興行収入は厳しいものになるだろう。皆さんに観てほしい。

エンディング「星をあつめて」で泣いてしまった男

エンドロールで流れる、fhanaの「星をあつめて」。それと同時に、一つのアニメを作り終わった登場人物達が映し出される。映画はここで終わりだが、彼らはまたアニメを作るのだ。また理不尽なことも起こるだろう。でもその瞬間の彼らは何とも嬉しそうなのだ。

このエンドロールで僕は思わず泣きそうになってしまった。てか泣いてた。この涙は同情の涙か?多分、違う。

彼らは、彼女たちは、初期衝動によって動かされた人間たちなのだ。だからこんなにも純粋に、楽しそうにアニメを作れるのだろう。

冒頭の宮森と同じように、カレーを、つまり初期衝動を味わっていたのだ。
宮森は、今回彼らの初期衝動を呼び起こすキーパーソンとなっている。


星をあつめて、散らばった光を紡ごう

その一瞬できらめく形 写して

箱にしまった

(fhana「星をあつめて」 歌詞一部抜粋)

劇場版『SHIROBAKO』は、きらめく星がたくさん入っている素晴らしい箱になっていた。このコロナが落ち着いたらまた、映画館で上映してほしい。

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