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ずっとあの日の夢を見る

幸せだけれど

いつからか、僕はずっと立ち止まっている。
それがいつからか、明確にはわからない。だけど間違いなく、僕の時は流れているようで停滞している。
大学を中退して就職し、忙しい日々を送っている。
働いて給料をもらい、自分の金でご飯を食べている。
傍からすれば、何も不幸に見えない、ごく普通の日常。
家では野球やサッカーを見るし、ゲームをするし、ドラマを見るし、読書もする。
たまに好きなアイドルのライブに行って息抜きする。
ライブに行くとそこにはオタクの仲間たちがいて、飯を食べたり一緒に歌ったり、語ったり。
そんなごくごく平凡な毎日。
平凡とは良くも悪くもないということだけれど、良くも悪くもないのは、実は幸せなのだと思う。
だけど、何か足りない。
僕は平凡な日常を手に入れる代償として、今まで沢山のものを失ってきている。
大切な友達は護れなかったし、些細な喧嘩が原因で縁が切れてしまった友達もいる。
大切な人はいじめに耐えかね自ら命を絶ち、仲が良かったあの子はいつの間にか僕のことを無視するようになっていた。
幼稚園からの幼なじみで、僕の初恋の人は、中学時代、諦めきれず何度も告白した僕のことを嫌った。
確かに、僕は重すぎたのかもしれない。
ただ、あのころは何もわからない正真正銘の未熟者だった。
今の自分なら同じ轍は踏まないだろうが、あれは仕方がなかったと割り切るしかない。
ちなみに僕は、この初恋から今までしばらく恋をしていない。自分でも驚くのだが、ここ数年誰かに恋愛的な感情を抱いたことがない。
これは恋なのか、と思うことは何度かあったけれど、それは結局恋ではなかった。
付き合いたいとか、ただただ一緒にいたいとか、そういう感情は、もうだいぶご無沙汰になってしまった。
僕の友人は結構モテる奴で、しょっちゅう恋人が変わっている。
そういう人を見ると、ある意味尊敬する。
感受性が豊かなのか、それとも気持ちの切り替え方が上手いのだろうか。
恋人ができたことの無い僕には分からないし、もっともここ数年恋なんてよくわからないが、恋人を取っかえ引っ変えする人は、精神的に普通の人より頭抜けていると思う。
少なくとも僕だったら、少しの間は恋人は作れないんじゃないかなと思う。
僕は初恋の時の経験から、何においてもなるべく未練や後悔はしないようにしているけれど、それでもやっぱり、すぐに新しい恋人を作るのはできない気がする。
でもいざその立場になったらできるのかしらとも思うし、こればっかりはその時でないとわからない。

縦の糸も横の糸もあなた

僕は幸せだけど幸せじゃないと思う。
矛盾しているように思えるし、友達や恋人が全てではないこともわかっている。
だけど、日常生活で幸せと不幸せが共存しているのは、きっと僕だけではないはずだ。
仕事から帰ってきて、大好きなお酒を飲んだり、アイドルの動画を見たり、好きなYouTuberの動画を見てみたり。
その時はすごい幸せだけれど、日付が変わればまた残酷な日常。
僕は今の仕事を好きでやっているわけではない。
高卒だし、仕事を選べる立場じゃなかっただけだ。
だから毎日仕事に行くのは本当に憂鬱だし、朝早く起きて出勤して初めにやることがキャベツの千切り。
しかも、これは当たり前のことだけれど、家で食べるようなちょっとの量じゃなく、食堂で使う分、大量にだ。
そんなの楽しいわけがないじゃないか。
それでもやらなくてはいけない。
それでお金をもらっているのだ。
文句は言えない。
こんな日常を送っているのは僕だけではないはずなのだ。
第一志望の会社に就職できずに好きでもない職種に就いた人、親が会社を経営してるがために、やりたくもないのに継がされた人。
まぁ事情は様々あるだろうけれど、やっぱり自分の生業って楽しいことだけじゃなくて、むしろ辛いことばかり。
学生の時だって、自分が行きたくて通っていた高校だったけれど、蓋を開けてみれば辛いことばかりで、進学コースに通っていた僕は毎日毎日、勉強勉強と教師に言われ続けたし、一学年の人数が多かったから、人間関係にも苦労した。
その毎日で幸せなこともあったけれど、辛いことの方が多かったと思う。
でも、人間が生きていくうえではその塩梅というか、幸せと不幸せのバランス、そしてそのバランスが、少しだけ不幸せの方に傾いている方が丁度いいんじゃないか。
辛い苦しい時は泣いたっていい。
ただ、その涙の後に出会う幸せは、おそらく最高のものだろうから。

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