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[怒霊界エニグマ]「怒れる君は復讐の為にあの娘の脳をハックするのか」

・イタリアンホラーの巨匠の一角と言えばルチオ・フルチ

・まあ個人的にイタリアンホラーで好きな監督はダリオ・アルジェントとマリオ・バーヴァのお二人なのですが…

・ダリオの「サスペリア」や「サスペリア PART2」に関しては何度も鑑賞したし、他の動物三部作etc非常に好きな作品が多い。バーヴァの方も「呪いの家」しかりホラー以外の作品も映像美の凝った魅力満点な作品群に溢れている。

・一方でフルチに関しては「サンゲリア」「ビヨンド」しか今まで鑑賞した事が無く、有名な作品である「地獄の門」も観ようと思いつつまだ観れていない現状であります。

・個人的に「サンゲリア」はまあ面白かったかなぁ…ぐらいの作品であり、主人公が実は滅茶苦茶ハゲている事とサメvsゾンビのシーンぐらいの印象しかない。しかしビヨンドの方は超良い、多くを語らないが凄く良い作品だと今でも思う。

・そんな中遂にルチオ・フルチ大百科BOXが発売され、氏の作品を消化していくきっかけを与えられてしまったのである。

・このBOXは晩年のフルチ作品シリーズを収めたものであり、この時期の作品はイタリアホラーの縮小やフルチ自身の病気の治療費を稼ぐ為に低予算作品を撮りまくるしか無かったとの事で…今回その中の一遍である「怒霊界エニグマ」を一先ず鑑賞しました。

・今作について軽く内容と感想を書きますと

〜女学生ケティは知的障害のある母親が学園寮の使用人として働いてる事を理由に周囲のイケイケ連中から虐められていた。そんな彼女はある時、エスカレートしたいじめの影響で交通事故に遭ってしまう。その上昏睡状態に陥り助かる見込みがもう無いと来たもんだ、しかし彼女の死にゆく身体は復讐の念に囚われ超常的なパワーを発揮し一転攻勢のリベンジが幕を開ける〜

・所謂ホラーの鉄板の一つである「復讐物」なんですけども、結構設定が面白いんですよ本作。本人は昏睡状態なんですけど、他人の肉体を霊的な力で奪い別人になりすまして行動したり、母親を依代にして何だかよく分からん現象を引き起こしちゃったりしてね。

・ケティに肉体を乗っ取られている女性が発狂して部屋の中で暴れ回るシーンがあるんですけど、そこのカメラワークが絶妙に面白くシュールで笑えて最高でした。

・ホラー映画の見せ場である惨殺シーンも多種多様でバラエティに富んでいるので見応えあるのも良い所。

・特に女優がカタツムリ塗れになってしまう恐怖シーンが本作の大目玉の一つであり、ウネウネウニュウニュしたり口に入ったりでもう悍ましいのなんの…




・関係ない話ですがこの翌年にアメリカ&スペイン制作の「スラッグス」というナメクジホラーが公開されており、演出的に近しい部分もあるので妙なシンクロを感じてしまいました。私的にはスラッグスの方がゴアゴアしていて好きではありますが。 

・こういったシーンを含め楽しく見れる要素はあるのですが、いかんせん全体を通して考えるとお話の粗雑さが目に余ってしまうのが残念。


・後半部分から無理矢理オチをつける為にやっているとしか考えられないストーリー進行の数々には少々ガッカリしてしまう。

・ケティの母親と数学教師が何たらかんたらの部分で、ケティの父親に人ならざる者(悪魔など)の雰囲気を匂わせる伏線を張ったにも関わらず、それを完全に放置して最後まで謎の力については明かさない始末。それに加えてオチで母親に娘の行動を唐突に止めさせて、急に尻すぼみで完結してしまうのは幾らなんでもナンセンスじゃないかと。


・母親が娘を止める行為をオチとして成立させる為には、母親が罪悪感を覚えている演出を挟んでから初めて成り立つものであり、ましてや最後の最後まで娘に共鳴し犯行に加担しているとしか思えない描写を幾つも描いているのにこれはあまりにも投げやりな終わり方でしょうよ。

・総合的に見ればユニークな殺害方法や面白いカットもあるので映像面ではそこそこに楽しめる作品ではあるが、脚本については設定が面白いだけにもう少し詰めて欲しかったのが正直な感想。

・まあそんな私自身も1987年の低予算映画に対してこんな事を言ってるのは、些かナンセンスなのかなと想いを馳せるのであった…。

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