印象残欠

 地上から地下鉄の駅へと向かう構内を歩いている。レンガの壁と床は暗い赤とも青ともつかず、ただ雨が染み出していることだけが目に映った。規則性をあまり持たずに建て増しされたそこかしこに店があり、わたしは理髪店を通り過ぎて本屋に立ち寄った。
 本を探しているうちに地上に出ていた。鬱蒼とした森と石畳の道、そして丸いフォルムの尖塔が周囲にあるすべて。尖塔に入ってエレベーターに乗り込めば、行く先のフロアはまた別のジャンルの本屋なのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?