印象残欠

 押し入れを覗き込んでいる。布団を詰めたそこに何があるわけでも用があるわけでもない。用があるのはその下だ。といって何があるわけでもない。読み古して背表紙が剥がれ落ちてしまっている本と、間延びした電子音が鳴る機械がある以外は、何があるわけでもない。
 その何があるわけでも用があるわけでもない場所にしがみつく以外、暇の潰し方を知らない。

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