印象残欠

 照り映える道を歩いている。蝉の声すら真昼には聞かれなくなった異様な暑さの中を、傘も差さずに歩いている。向かう先に冷房が待っているわけではないのだが、約束の手前勝手に帰るわけにもいかなかった。
 左手側に揺れるアスファルトはさも憂鬱そうに暗く陽炎を飛ばしているのだが、本当のところは愉快なのだろう、通り抜けるタイヤを溶かしてはそばの横断歩道に塗り付け、唸るように笑っていた。

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