「また来てね」の魔法

昨日の日記のおまけ。

職場への挨拶に、お菓子を買っていく事にした。先日チビが鼻風邪をひいたとき、薬ができるのを待つ間外をぶらぶらとしていたところ和菓子屋があるのを見かけていたので、そこに行ってみる事にした。夫は敷居が高そうで行った事ないと言っていた。たまにこちらにくる友人からの評判が良かった気がする。

入ると、確かに化粧気の無い子連れの主婦が入るにはちょっと場違いかなという上品で整った雰囲気。それでも可愛らしいポップが飾ってあったり、思ったより過ごしやすい空間だった。

このお店は大安の日に購入するとおまけをつけてくれるそうだ。会計やおまけを貰っている間、静かな箏の演奏が小さく流れているのに気付いたチビは片耳に手を当てて聴き入っていた。店員の、母より少し上くらいの優しそうな女性は、大人しい子ですね、と微笑み、チビは手を振り返す。女性は愛おしそうにチビを見て、また来てねと言ってくれた。遠くへの引越しの事を思い胸がキュッと切なくなった。

日記の通りバタバタと1日が過ぎ、チビの寝顔を見つめていてふとその事を思い出し、また寂しくなったのだけれど、引っ越しの挨拶にまた利用しようと思ったのだった。なんとなく、あの優しい約束を果たしたくなってしまった。

私は医療職で、おそらくずっとそうなので、あの優しい「また来てね」は言えない。不思議な魔法を使える店員さんが少し眩しく見えた。

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