【読書感想文】生きのびるための事務
荒唐無稽とも思われるようなことでも、かならずうまくいく方法がある。
それは「具体的に考える」ことだ。
10年後ありたい時間の使い方はどのようなものか、そのためにはなにをしたらいいのか。好きなことでお金を稼ぎたいと願うなら、その年収を分解していけばなにをどうすれば叶う、という具体案が出てくる。
本書は、主人公と「ジム」というアドバイザリーの会話を通じて「具体的に達成する方法を考える」ことを体感させてくれる。
体感しながら、ぼくは、どこかで経験したことがある話かもしれない…と振り返っていた。そうそう、昔海外で働きに出たときの経験は、まさに「ジム」が話す内容そのままだった。
ぼくなりの「事務」例
20代前半ごろ、たいしたスキルもない状態のときに、インドネシアという国へ働きに出た。その後他国で転職したり、なにかとおもしろい経験を積ませてもらった。
一般的な感覚では、日本人が海外で働くのはまあ荒唐無稽と思われがちだ。
英語もできなきゃいけないし、他国で生きていけるかどうか保証もないし、保険周りがどうなのかもわかっていない。治安も不安になるだろうし、ご飯が合うかどうか…など考え出せばきりがない。
しかし、実は「海外で働く」ひとつとっても、具体的に考えてクリアーしていけば十分実現が可能である。
英語がそこまで得意じゃないのなら、日本語が半分使える仕事を探せばいい。仕事は日系の人材紹介会社を使えばいいし、不安ならいまのスキルセットで通用するかどうかを担当に聞けばいい。
保険周りや賃貸住宅の借り方など、かかる費用や必要なスキル・行動の具体まで聞けば専門家が教えてくれるだろう。
とはいえ、当時のぼくは若いし職務経験もほとんどなかったから、それこそ常識的に考えれば無理だったろう。
それでも、その筋に詳しい人をWeb上で見つけてメールを送り、どうにかこの条件でもクリアーできる方法はないかと相談した。
どうやら現地の人材紹介会社も、現地に渡航してまで相談してくるひとにはなんとか求人をひねり出してくれるらしい、などTipsもあった。なるほど、やはり世の中100%無理ゲー、なんてことはない。
その頃のぼくは、新卒で就職した会社を早々と辞めていたので軍資金も十分になかった。だから、ちょっとしたバイトをして2週間の宿泊費用と往復の航空券代と生活費を貯めた。ある意味背水の陣。
…と、ここまで過去の実例を思い出してみた。なるほど、「ジム」が喝破し主人公が本書中に気づくように、確かに具体的に考えればできないことはない。
一方、振り返りつつ、いまの自にを照らし合わせてみると、もうひとつ大事なことがあると気づいた。
「事務」は冒険をするひとが行使できる技術である
「事務」は、やりたいことがあり、それが一見到達できなさそうなことであるとき、行使できる技術なのだ。
言い方をあえて変えれば、やりたいことがない人には意味がない可能性がある。
本書中では主人公はこう、うそぶく。朝起きて文章書いて、絵を書いて、音楽を作って生きていけたらいいのになあ…。
こういう人には、「事務」の技術はうってつけだ。主人公は持ち前の素直さで、「事務」の技術を体得し、現実を進めていく。
では、いまの自分にとってはどうだろう。やりたいことはある、だがその輪郭はぼやけている。
もっと解像度を高めればいいのだが、家庭もあるし、いまの生活もあるし…など潜在意識で考えてしまい、いろいろとブレーキを踏んでいる状態だ。
ぼくなりに本書を解釈すれば、やりたいことを少しでもやる人生にすると決めること、が多くの人には必要になる。
やりたいことやありたい姿になるために、どういうリスクをどこまでとれるのか。それをとってまでやりたいと思えるか。
それでも、考える価値は十分にあると思う。そのリスク(無収入になるとか、住居を変えるとか)は現実的に下げられないか?そのようなことも考えられるだろうから。
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