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2022年共通テスト「世界史B」 の全問解説

この全問解説の文章は、
1 共通テストの問題を素材に重要事項を整理したい受験生
2 世界史が苦手で、勉強方法に悩んでいる高校生
3 世界史を学びたいと思っている社会人

に読んでほしいと思いながら書きました。

今年の共通テスト「世界史B」の問題点については、すでにnoteに書いて多くの人に読んで頂きました。また、共通テストの形式にも問題があることは、世間に認識されつつあります。

世界史に関して言えば、たしかに設問の多くが良問ぞろいであることは否定しようのない事実です。そして、多くの大学関係者が時間をかけて作った問題だけあって、世界史の理解度確認テストという域を超えて、現在の世界をどうとらえ、どんな問題と向き合っていくべきなのかという問題提起がされているように感じます。

今年は、たった34問しかないのにオーストラリアが3問も出題されました。日本にとってオーストラリアが重要な国になりつつあるからでしょう。近ごろ、「自由で開かれたインド太平洋」という言葉をアメリカや日本の首脳が使うようになりました。アメリカが中国を牽制する上で、「インド太平洋」において重要なパートナーがオーストラリアです。日本もオーストラリアとの関係強化をはかっています。まず出題されたのは、オーストラリアの先住民がアボリジニーで、ニュージーランドの先住民がマオリマイノリティーへの視線を感じます。今年はオーストラリアの白人優位の白豪主義やマレーシアのマレー人優先政策も出題されました。まるで危険な排外主義に目を向けるよう高校生に警告しているようです。中国のチベット自治区新疆ウイグル自治区についてもそれぞれ出題されました。アメリカの同盟国として、中国の人権問題を理解させたいという日本政府の意向が感じられます。

誤解のないように言っておくと、私は歴史教育のあり方が政治に左右されることがあってはならないと思っています。政権の意向を忖度した出題は控えるべきです。共通テストから感じられる問題提起には、教育上の配慮があるものと、政権に迎合するものがあるように思いました。むしろセンター試験時代には権力を鋭く風刺する問題が痛快なまでに出題されていて、歴史を学ぶ意義を感じさせてくれました。

共通テストの最大の問題点は、資料や会話文、グラフを使った形式にこだわりすぎて、肝心な重要事項の理解を測る機能が低下してしまったことです。今からでも遅くありません、センター試験の形式に戻すべきです。このままでは、日本の教育が本当におかしなことになってしまいます。

共通テストの選択肢だけを見ると、よくもこれだけ重要事項を詰め込んできたなと感心させられます。今年も定番のキリスト教の公会議カペー朝の王権強化中国の税制武帝の外交マラッカの支配、ロシアの東方進出、ヴィクトリア女王の治世が出題されました。日本による対外進出の下関条約、ポーツマス条約、日本の国際連盟脱退、農民反乱もロシアの農民反乱フランスの農民反乱が出題されました。領土変更についてもジブラルタルとミノルカ島フィリピン・グアム・プエルトリコという定番の熟語を覚えていた受験生なら、それぞれ1713年のユトレヒト条約1898年のアメリカ=スペイン戦争を思い出せたはずです。この解説では、出題された重要事項をすべて復習しやすいよう重要ポイントとしてまとめました。どれも応用性の高いものばかりです。必ず覚えるようにしてください。

この解説を読むにあたってお願いしたいのは、必ず問題を読んで、すこし自分の頭で考えてから解説を読んでほしいということです。世界史の知識がない人も、いちど悩んでほしいのです。それだけで知識の吸収度合いがまったく違ってきます。

共通テストの過去問を研究すると、一度出題されたことが繰り返し出されていることに気づくはずです。重要なことは突きつめると限られてくるのだから当然のことです。この解説では、

①2017年の共通テスト試行調査
②2018年の共通テスト試行調査
③2021年の共通テスト本試験

のうち、2022年共通テスト本試験と同じ知識が問われているものを設問ごとに指摘しました。こんなに同じことが出されているのかと驚くはずです。ある設問では、4つの選択肢のうち3つが最近の過去問と同じ内容でした。

今年の共通テストの問題で満点がとれるようになるだけで、大きな自信になるはずです。この解説をナビゲーターに、有意義な時間が過ごせることを願っています。

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