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カント入門を読んで

年末に倫理の話題が出てからもうすぐひと月が経とうとしていますが、その時結局倫理ってなんだろうという疑問が湧き色々と本を買ってしまいました。その中の一つがこのカント入門です。
これはカント哲学の入門書ですが、この中にカントの倫理学も含まれています。哲学をあまりよくわかっていないので、カント哲学がどのようなものなのかは全体を見通してはわかりませんが、「理性への批判」を様々な形で行っているのがカント哲学のようです(もし間違っていたらごめんなさい)。

さて、この「カント入門」の中でわたしが一番読みたかったのはもちろん第5章「自然因果の彼岸-自由と道徳法則」で、カントの道徳論、倫理学が書かれている章です。
この章によると、カントの倫理学では「善意志」が基盤としてあり、この善意志は「義務」に凝縮されるらしいです。つまり、カントの倫理学は義務によって成り立っていると理解しました。

ではこの「義務」とはなんでしょうか。
カントは条件つきの義務と無条件の義務とに分けています(本の中では義務ではなく、命法としていますが、そこまで話すとややこしくなるのでこれでいいかなと思っています)。条件つきの義務とは、「もし〜ならば」という条件がついているものを指します。例えば「もし人に優しくされたいなら、あなたも人に優しくしましょう」などです。これは裏を返せば、「人に優しくされたくなかったら優しくする必要はない」ともとれますよね。これが条件つきの義務で、偽物の義務、偽物の道徳になるようです。
無条件の義務とは「〜にもかかわらず、〜しましょう」という形で前提の条件があってもなくてもするべきである、という義務です。例えば「人に好かれても嫌われても、正直でありましょう」とかですね。これを真の義務、真の道徳とされています。

そしてこの真の義務は、「常に同時に普遍的立法の原理になるように」しなければなりません。要は、自分だけではなく他の人に当てはめても通じるようなものでなければならないのです。倫理、道徳ですから、自分本位の行動は当然当てはまらないということですね。
さらにカントはこの真の義務を4つに分類しています。
1.自分自身に対する完全義務
2.他者に対する完全義務
3.自分自身に対する不完全義務
4.他者に対する不完全義務
完全義務というのは、やって当たり前の義務で、不完全義務はやると評価される義務とされています。この本の中で挙げられている例では、1は生きる義務、2は約束を守る義務、3は自己研鑽の義務、4は親切にする義務です。1と2はそれをしなければ、罰されるのに対し、3と4は罰せられることはないでしょう。むしろ、3と4は褒められると思います。この4つの義務に従って行動しましょう、行動するべきである、といっています。そしてこれらは、「自由=自らに由る≒自らに拠る」のであり、自律してなされなければなりません。また「良心」によってその行為が裁かれるとされています。そしてこの良心は自分の中から出たものではなく、他人との間にあるものであり、良心が裁く基準は他人によるものだと理解しました。

カントの倫理学をまとめると、真の義務を自ら律しおこない、それを他者との関係の中で見つめ直していかなければならない。見返りを求めることなく正しい行いをし、他者からどうあるべきかを考えなければならない。こんな感じになるでしょうか。公認心理師としても、今自分がしている行為を振り返り、常に自らを律していきたいですね。

「カント入門」 石川文康著(1995) ちくま新書

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