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そこに愛はあるんよ/ルーヴル美術館展-愛を描く

1.ルーヴル美術館展-愛を描く@国立新美術館

「愛」をテーマに描かれた、16〜19世紀半ばまでの絵画73点がルーブル美術館から来日した展覧会。
会場は4つのカテゴリーに分けられていて、同じテーマで作者や視点によって異なる作品を見比べることができる展示になっていました。

一言で「愛」といっても、=恋愛というわけではなく、神々と人々との愛(掠奪多し)・親子の愛・信仰愛・さらには売買される愛などなど、多種多様な「愛」が絵になって表現されています。
これも愛? と思ってしまうような、私には理解できないような愛の形もありましたが、価値観は人それぞれ。たぶん、愛。きっと、愛。
いずれにしろ、愛を行動に移す時、人は本来の姿が表出するんじゃないだろうか、そんな考えがよぎった展覧会でした。

本展覧会の絵画を鑑賞する際には、神話や聖書のエピソード、そしてモチーフの意味を知っていると、より楽しめると思います。
同じことを思った人が多かったのか、あちこちでキャプションの周りに人が集まっていましたね。
会場を後にしてから気づいたのですが、出品リストに掲載されているQRコードを読み取ると、スマホでキャプションを読むことができるんです。混雑していてなかなかキャプションの前に行けないときや、絵画から少し離れて鑑賞するときでも手元でキャプションが読めます。これとっても便利! 早く気がつけば良かった…。
それに、会場の外でもキャプションが読めるのは嬉しいですね。あらためて作品を思い出す手がかりになり、この記事を書くのにも大変参考になりました。

このモチーフは暗喩だな、これはこんなふうにも受け取れるんじゃないか、…そんなふうに作品を読み解きながら鑑賞するのは久しぶりで、なんか楽しかったです。頭は疲れたけれど。
当時の絵画鑑賞には、教養を身につけた上流階級の人々の「作品を読み解く遊び」のような側面もあったのかな、なんて思いました。

2.気になった絵 3枚

●「アモルの標的」フランソワ・ブーシェ
愛といえば、アモル(愛の神)。本展覧会ではマスコットキャラクターのような存在といってもいいかもしれません。いろいろな絵画に描かれていましたが、やはり圧巻だったのは入場して最初に目にしたこの絵です。

まずは大きさに圧倒されます。(268 × 167センチ)
左上から右下、右下から左上へ視線を往復させる構図、さらに右上から左下へ斜めに画面を分割し明暗をつけています。全く古さを感じさせません。現代のクッキー缶のデザインといっても違和感ないですよね?←褒めています

フライヤーを参考にアモルを2人だけ描いてみたのですが、「もっちもちのアモル」というより「ムッキムキのパタリロ」になってしまった…猛省。
それはさておき、模写してわかったのは、とにかく細かいところまでしっかりと描かれていること。アモルの持つ月桂冠には白い花が咲き、標的には失敗した矢の穴や影があるし、アモルの髪の巻き具合や耳の形もそれぞれ違う…などなど。そのうえあちこちに絵を読み解くヒントが散りばめられていて、飽きずにみていられます。
この大きさでこの細かさ。しかも、神々の愛をテーマにした連作タペストリーの原画の1つだそうで、驚きです。

●アモルとプシュケ/フランソワ・ジェラール
若々しく美しい2人が描かれている作品。
初恋ですか? いいですねぇ。

気になったのは、プシュケの眼差し。焦点が合っていなくて、何も見えていないような印象を受けました。
よく見ると、アモルはプシュケに触れていないんです。人間のプシュケは、何らかの気配は感じるものの、アモルがまだ見えていないんじゃないでしょうか? この後、アモルからキスを受けて初めてプシュケはアモルの存在に気がつく、その瞬間を捉えた絵に見えました。

2人の頭上に1匹、蝶々が舞っています。「プシュケ」とはギリシャ語で「魂」あるいは「蝶」を意味する言葉だそうで、今からプシュケに本当の魂が宿る、という暗喩なのかなと想像してしまいました。

●ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・デ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊/アリ・シェフェール
ダンテの「神曲(地獄編)」に登場する、パオロとフランチェスカの悲劇を描いた作品。
フランチェスカが夫の弟パウロと恋に落ち、それを知った夫に殺されてしまう、と言うお話が元になっています。
「神曲」では、さらに2人は姦通の罪で亡霊となって地獄の風に吹かれ、永遠に漂い続けている時にダンテに出逢うというシーンが書かれているそうです。

青白く大人の体つきの2人は、くるくると風に翻弄されているような浮遊感があります。そして表情がとても悲しく、切ない。

不義の恋とはいえ夫とは政略結婚だし、その上、不具の夫は結婚式に美男の弟パウロを代理出席させているんですよ? それでも当時、不倫は完全に女性の責任になってしまうという…。
情状酌量という概念はなかったのでしょうか? だったらせめて、天国で幸せになってほしいかったなぁ。神話の神々に比べたら、真面目だと思うんだけど、この2人。
この絵の中では、ダンテとウェルギリウスも考え込んでいる表情に見えるから、ダンテも同じことを考えていたんじゃないかなぁ。そうであってほしい。

パオロとフランチェスカ 参考サイト


アモルとプシュケ 組 /パオロとフランチェスカ 組

会場では、「アモルとプシュケ」と「パオロとフランチェスカ」が向かい合わせに展示されていました。これ、狙いました?! もしそうなら、すごくかっこいい企みだと思う。

「若者」と「大人」、「恋」と「愛」、「喜」と「悲」、「陽」と「陰」
対比がすごくて、何度も2枚の絵を交互に見てしまいました。片方の絵を観ていると、もう片方の絵が観たくなるんですよね。(チョコレートを食べるとおせんべいが食べたくなる、みたいな?)
どちらの絵が好きかアンケートを取ったら、意見が別れて面白いんじゃないでしょうか。
私は夢見る少女じゃいられないお年頃なので、フランチェスカに一票。(・∀・)/

3.きょうのおみやげ

●絵はがき
今回は、共感できた愛が描かれていた3枚を選びました。

左・眠る幼子イエス/サッソフェラート
中・ビーナスに捧げられた神殿/ユベールロベール
右・ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・デ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊/アリ・シェフェール

●ドリップコーヒー(5個入り)

甘い香りがしそうなパッケージ

エゴン・シーレ展でも販売されていた猿田彦珈琲のドリップバッグ。
シーレブレンド」は、「ケニア・コロンビア・エチオピア」でしたが、こちらの「ラブ・ルーブルブレンド」は「ケニア・エチオピア他」と表記されていました。
飲み比べてみたいと思います!

●サーモステンレスボトル(290ミリリットル)

サイズ比較のために、珈琲を左横に置いてみました

小さくて軽いし、セン本体が外れるので内部が洗いやすそうです。色は、他にもピンク、ベージュなどがありました。

公式グッズサイト↓
https://www.ntv.co.jp/love_louvre/goods/

4.思い切って、サロン・ド・テ・ロンド

鑑賞後、2階展示室前のサロン・ド・テ・ロンドで初めてお茶をしました。

空中に浮かぶようなティーサロン。一度は入ってみたかったのですが、高所恐怖症気味なので先送りしていたんです。いや、でもきっと、黒川紀章先生の建物を堪能できる! と自分を奮い立たせ、思い切って行ってみました。椅子に座わると、いつもとは違う位置から国立新美術館の内側を360°ぐるりと鑑賞することができました。来てよかった!

せっかく意を決して入ったんだから(←くどい)と、記念に展覧会コラボメニューをいただきました。

ルーブル美術館、愛を描く 特別ケーキセット

「アモルの標的」を題材にしたスイーツ盛り合わせです。
ショコラブランと桃のムースが標的になっていて、それを囲むように、ひとくちサイズの3種類のスイーツ(オレンジロールケーキ・ベイクドチーズケーキ・クッキー)が、2個ずつ盛り合わせてありました。6人のアモルを表現しているそうです。おいしくいただきました。

5.展覧会情報

●展覧会公式サイト
https://www.ntv.co.jp/love_louvre/

●国立新美術館(2023年3月1日から6月12日)
https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/love_louvre/

●京都市京セラ美術館(2023年6月27日から9月24日)
https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20230627-20230924


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