カエルに睨まれたヘビ

#小説 #物語

あるところに、カエルを怖がるヘビがいました。ヘビのいる水槽の向かい側にはカエルの水槽があり、中には大きなウシガエルやたくさんのイボがついたヒキガエルが暮らしていました。

まだほんの子どもだったヘビは、巨大な化け物たちが口々に「やい、おれには毒があるんだぞ。おまえなんかおれさまのこの大きな口で丸呑みにしてやるぞ」とこちらへ向かって叫ぶのが恐ろしくて、毎夜がくがくと震えていました。おかあさんやおとうさんは「ヘビの方がずっと強いのですから大丈夫よ」「ヘビに睨まれたカエルということわざがあるくらいだからな。おまえもそんな立派なヘビになりなさい」と、励ましたり叱ったりしました。
やがてヘビは成長し、今ではカエルの2倍ほどの身長になりましたが、やはりカエルが怖いままでした。そんな小心者のヘビでしたから、仲間たちに馬鹿にされ、食事の時間にも"のけ者"にされてしまうので、いつもおなかを空かせていました。
そんなある夜のことです。うとうととしかけていたヘビは「おい」と自分を呼ぶ声を耳にしました。真っ暗闇で目を凝らしてみると、なんとそこには、おぞましいぶつぶつのあるあのヒキガエルがいたのです。おそらく水槽の掃除のときにカエルが1匹こっそり逃げ出したのを、飼育員さんが見逃したのでしょう。どこからどう入ったのか、ヘビのいる水槽に潜り込んでいました。

「おまえ、おれが怖いんだろう」

カエルはヘビをからかいに来たのでした。
実際、ヘビはカエルがとても怖かったので、カエルに睨まれてすっかり動けなくなってしまいました。
そんな様子をみて、カエルはますます調子にのり、ヘビのまわりを嬉しそうに跳ねまわりました。
ヘビはおそろしく思うあまりにわけがわからなくなってしまい、急にとてもお腹が空いていることを思い出しました。
そしてちょうど目の前に来たカエルを
一飲みにしてしまいましたとさ。

おしまい。

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