ついのべまとめ

自作小説: #twnovel 過去作まとめ

 twitterに「twnovel」という文化がある。ツイノベル、と読む。多分。
 ご存じの通りtwitterは投稿一つあたり140文字までという制限があるが、twnovelはその文字数制限の中で掌編小説を書くという試みだ。俺もtwitterを始めて間もない頃にこの文化を知り、一時期かなり熱中した。言葉、情報、設定、物語、あらゆるものを取捨選択し切り詰めていかないと140字に収まらないので、文章力や表現力のトレーニングとしてはそれなり役に立ったと思う。

 先日twitterの過去ログの大掃除をした際、過去に書いたtwnovelをたくさん発掘したので、その中で今でも読むに耐えうるなと感じたものをサルベージしておいた。今回はそれを披露というか供養というかしたい。ついでに一言コメントも添える。
 一番古いものだと六年前とか七年前とかそういうレベルだが、さすがに140字だと読み返してもうわあ……(頭痛)みたいなことにはあまりならなくて平和である。ちなみに上にあるほど新しいもの。一番新しくて多分四年前くらいだけど。


#twnovel 「あなたを世界で一番幸せな人間にしてあげる」そう言って魔法使いは、大好きなその女の子以外の世界中全ての人間を人形に変えてしまいましたが、少女はこの魔法使いがまだ人間だと気付いたので、魔法使いを殴り殺しました。そうしてその女の子は世界で一番幸せな人間になりました。
・twnovelは割とインパクト勝負みたいなところがある。


#twnovel 死にたいけど自殺は怖いので、誰かに殺してもらうべく名探偵と同じ列車に乗ったら、監禁された。人質は生きてなきゃ意味がないだと、ふざけやがって。身代金も100万と安すぎる。こいつの思い通りにさせるものか、こうなれば意地でも死んでやる。ここで自殺する方法を探してやる。
・好きな探偵漫画は『魔人探偵脳噛ネウロ』です。


#twnovel 電車が走る。「世界の終わり」方向に走る電車なので、乗客はほんの僅かだ。大多数は逆方向の電車で、じきに世界を包む「世界の終わり」からそれでも逃げようとしている。馬鹿馬鹿しい。少しづつ濃くなる「終わり」にあてられて、これに乗った理由も忘れたが、そう思う。 /全滅亡祭
・滅びをテーマにだったか、滅び行く世界をテーマにだったか、そんな感じのtwnovelを書こうという企画に参加した一作。


#twnovel 夜景の綺麗なレストランで、彼女に給料三ヶ月ぶんの首輪を差し出した。「僕の犬になってほしい」彼女が少しの間のあと笑顔で頷いて、僕は目の前に明るい未来が開けるのを感じた。飼い犬プレイからの飼い犬に手を噛まれるプレイで、きっと僕らは二人いつまでも満たされて生きられる。
・なんぞこれ。


#twnovel アルコールが好きなんだ。いつも白衣を着た彼の、それが口癖だった。あれは僕を違う世界に連れて行ってくれる。思い返せばそう言いつつも、彼がカクテル以外を飲むのを一度も見なかった。今、私は遠のく意識の中で、また彼の口癖を聞いている。人間の浮かぶ無数のポッドに囲まれて。
・ちょっと分かりづらい? 保存液としてのアルコールが好きっていうことだったわけですね(解説)


#twnovel 久しぶりの降花注意報。六月には紫陽花が降る。僕は傘を差して、花の香に満ちた街を歩く。傘の上に音もなく、紫や青やピンクの花弁が積もる。屋根のあるバス停に、傘についた花弁をふるい落とす君を見つける。おはよう、と笑い合う。君と同じ名前の花が降る季節を心待ちにしている。
・色々あってまだ『FLOWERS』を履修できていない。かなしい


#twnovel 二十年後、桜が咲いたらこの木の下で。そう約束し合った仲間四人は、今日約束通りにこの場所へ集まった。全員でスコップを持って、あの日ここに埋めた記憶を掘り返す。「…あった!」一人が言った。現れたのは、うずくまった体勢の、白骨。俺たちは笑みを交わした。時効成立、乾杯。
・これは素直に上手いって感じがしますね。


#twnovel 「フられた?」「うん」「あんなに仲良かったのに」「ね」「俺が彼氏だったら、絶対離さないのに」「それ、あいつもよく言ってた。男なんて皆嘘つきだ」「もう信じる気にはならないか?」「それ、告白?」「うん」「友達としての好きだって、ずっと嘘ついてたの?」「うん」「…そ」
・男は、クソ! 今だったら絶対百合にしてるわこのネタ。


#twnovel 「愛するっていうのは覚悟を決めることじゃなくて、相手の覚悟を支えることなんだよ」小説の受け売りだけどね、と柵越しの彼女は笑う。僕は笑えない。あと一歩踏み出せば墜ちる場所にいる彼女を、愛するのか愛さないのか、どちらにしてももう彼女には届かない手が冷たい空気を泳ぐ。
・本当に小説の受け売りなんだけど何の小説だかは覚えてない。それはそれとしてまあまあ上手いかなと。


#twnovel 約七年の放浪から帰還した文豪の新作は、単語も文法もおよそ滅茶苦茶なものだった。批判を浴びせられ、文豪は笑った。遥か昔に我らがバベルの塔に置いてきた真実の《ことば》を、私は手に入れたのだ。そしてその作品を読んだ作家たちが、次々に失踪していく。バベルの塔を探すため。
・多分これを書いた時の俺は世界共通語が日本語にならねえかな~~~~~くらいのことしか考えてなかった。


#twnovel 世界を維持する力があるの。彼女の告白に僕は笑う。創造でも破壊でもなく、維持とは。彼女がけれど恥じる事なく、いつか世界が滅んだら私と君だけ維持してあげるから、滅茶苦茶になった世界でずっと二人きりで生きようね、と囁くので、僕は自分の世界破壊の力を今すぐ使いたくなる。
・セカイ系、ちゃんと書いたことないのでいつか挑戦してみたい。


#twnovel 龍がいる。世界全ての神が縒り合わさってできた龍である。その長躯は天空と海底とを交互に穿ち、世界を縫い止めている。頭がどこにあるかを知る者はない。宇宙に出て星を喰っていると言う者もいるし、海の底で尾を咥えていると言う者もいる。また、龍が善神か悪神かを知る者もない。
・140字を物語ではなく驚くべき世界の描写だけに費やすという形もtwnovelではアリ。


#twnovel 婚活、妊活、離活、終活――様々な《活》ビジネスは、遂に輪活(輪廻活動)へ辿り着いた。来世では何に転生したいかを考え、愛する人と来世でも結ばれるように取り計らい、また地獄に落ちた場合の罪の軽減サービスなどもある。様々な費用は来世払いとなってしまうのが問題点である。
・俺は生まれ変わったら女になりたいけど、女に生まれたらきっと来世は男がいいって思ってるんだろうなとも思う。


#twnovel 漆黒の部屋の中央で、魔王が首を吊って死んでいた。剣士が立ち尽くし、魔術師が杖を取り落とし、格闘家が愕然と膝を折る中で、俺は手にした聖なる刃がただの棒きれになるのを感じた。俺たちの戦いは終わった。勇者という俺の肩書きも終焉した。魔王はかくも鮮やかに、勇者を殺した。
・「勇者と魔王」系のよくある話をぐちゃっと捻った話を一時期やたら書いていた。その究極系みたいな長編が現在BOOTHで発売中の『勇者の背中』である(ダイレクトマーケティング)


#twnovel 「桜の木の下には死体があるとか変な噂流すのやめてほしいよな」「人間って何でそういうの好きなんでしょうね」「私たちの花弁は血の色だって言うんでしょ?」「ふざけてるよなー」「つーか安易だしな」仲間たちは笑う。僕の根元に死体が埋められてから、僕はいつも皆の笑いものだ。
・軟体動物の死体をたくさん埋めたら青い桜が咲いたりするんですかね(???)


#twnovel 機械人形の自傷行為には四段階ある。第一段階は人間の真似事で手首などを傷つける。第二段階では自分の外殻を取り外し内部機構を晒す。第三段階はそこから胴体の各種機構を傷つける。最終段階では頭部の各種チップを傷つけて、感情や記憶が損傷するのを楽しむ。人間より歪んでいる。
・意思や感情を持つロボットの話だと「チャッピー」がすごく記憶に残っている。あとは「イヴの時間」とか。


#twnovel 才色兼備な憧れの彼女の手料理は漫画で見るような暗黒物質で、僕の記憶は一口食べた所で途切れていて、気がつけば知らない森にいた。見知らぬ果実が目に止まって、齧ってみると、また気絶しそうな味。…彼女の料理は、こっちの世界のもの?「待ってたよ」目の前で彼女が笑っていた。
・メシマズっていう概念はよく分からない……どうしてそうなってしまうのか……いや俺も別に上手いってほどじゃないけども。


#twnovel 学校に怪物が現れた。どす黒い触手が皆を次々に捕らえて、大きな口に放り込む。物陰に隠れてそれを見ながら僕は、ヒーローになれたらいいのに、と思った。そうすれば皆を救えるから、じゃない。ヒーローになれば生き残れるから。積み上がる屍の中で一人生き残っても、許されるから。
・英雄ってのはなろうとした瞬間に失格なのよ案件。ちな龍騎ライダーの最期は個人的にはインペラーが一番きつかった。


#twnovel 人という字は人と人が支え合ってできているらしいけど、つまりいつも独りな僕はきっと人じゃなくて、どうすれば人になれるだろうと考えた結果、ずっと密かに見ていた憧れのあの人を殺して持ち帰ってそれを支えにしようと思ったけど、腐臭と共に数日で破綻した。僕は人でなしだった。
・なんか既視感がないでもないが……


#twnovel 橋の下を静かに流れる川を、僕は彼女への手土産を手に見つめた。一年前この川で死んだ彼女へ思いを馳せる。彼女が好きだったものを持ってくると、あの日僕は彼女に誓った。そして今日、どうにか約束を果たせた。君が好きだったこの男を、君を殺したこの男を、水底の君に手向けよう。
・若干前半が字数稼ぎ感ある。大抵は140字に収めるのが難しいんだが、たまに逆に字数が余ってしまう場合もあった。


 おわり。
 pixivでオリジナル小説をメインとして活動していた頃は、こういうワンアイデアをすぐ2000~5000字くらいの短編にしてぽこじゃか投稿していたこともあり、内容はともかく「完成」という経験をその時期はかなりの量積み重ねたと思う。感動の超大作を未完で投げ出すよりしょうもねえ短編でも完成させた方が身になる、みたいなことは創作界隈でよく言われるが、あの頃俺ががむしゃらに書いては投げ書いては投げしていた今は亡き短編たちも、その理屈に則って俺の血肉になってくれていたら嬉しいな。
 まあ血肉になったうえでなお現状かよって話になると涙も出ないんだけど。

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