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読了報告#1  『クォンタムデビルサーガ アバタールチューナーI』

せっかくの発信の場。
今後は読んだ本の感想も上げたいなと思い書いてみた次第。

あらすじ

 ジャンクヤード。雨が振り続けるその地は、繰り返す争いの場。人々はトライブと呼ばれるグループに別れ、終わることのない戦いに身を投じる。このジャンクヤードの勝者が楽園に行ける。その掟を信じて。
 サーフ率いるトライブ<エンブリオン>もまた、ジャンクヤードで戦いの日々を過ごしていた。だがある日を境にジャンクヤードは煉獄へと転ずる。サーフたちジャンクヤードの民が、人を引き裂くその力を手にし他者を喰らわねば生き永らえざる身に堕ちたその日から......

その他詳細

ジャンル:SF
著者:五代ゆう
備考:知る人ぞ知るRPGの原案小説

尖った世界観

 極端な無機質さが生み出す不気味さ。戦いが産む緊迫と弛緩。これらが小説を通して独特の空気感を生み出している。地面の叙述、空の描写は本作のその世界を象徴している。無機質さと争いの気配が丁寧に綴られており、読み手に強くジャンクヤードを知覚させてくれる。時に戦禍の描写には無機と有機のハイライト鮮やかな表現が印象深い。

人物たちの苦悩

 この物語の登場人物たちは総じて戸惑いの渦中にある。存在意義、闘争理由、他者を喰らうことへの抵抗と背反する自身の中に芽生えた強烈な飢餓。彼らに理解をする時間は与えられず、耐え難い飢えと人の血肉に歓喜する本能に苛まれる。その激変への苦悩がありありと記されている。喰っても地獄、喰わずとも地獄。淡々とジャンクヤードの真実と心情が記された文は、読み手の頭にもその狂いと葛藤が鮮明に刻まれる。

人物と読者のリンク

 この作品の主人公たちはほぼ無知。世界の事、自分たちのことへの知識がほぼない。それに対する戸惑いも彼らの人間性を読者に印象深く提示している。またこれらの戸惑いは、この作品が全5巻からなる物語の1巻であるが故に読者にも発する。分からない変化に対する無意識下の恐怖や、自分の中に起こる変化への抵抗。その全てが、登場人物たちと同じく情報を有さない読者にとっても強烈な体験となるのだ。その体験は人物の人間性に説得力をもたせてくれている。

この作品がおすすめできる人

・SFが好き
・このシリーズが原案となったゲームをやったことのある人

こんな人たちにおすすめです。
 SF色はあるものの、悪魔になる、他者を喰らうなどの一筋縄ではない一面もありハマれば虜になる物語だと思う。”人を喰らう”ことに関してはそこまで直接的な、所謂グロ表現はないので大丈夫。
 またゲームのほうをやった人にもおすすめ。結構設定が違う部分があってゲームでの体験をもとに頭で映像化しながら楽しめるので是非に。かく言う私も幼少の頃にゲームをプレイしたことがあるみで、映像化できるためにもっと物語を楽しめたように思える。また、専門用語とかもゲームと変わらないのですっと頭に入るので、抵抗感も少ない。といっても用語に関しては、登場人物たちも知らないという前提なので作中で説明されているので初見でも全然OK。


どんな頻度で本を読むかは分からないけれど、徐々に読書報告もしていきたいと思ってます、よろしくお願いします。

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