melon bread

クロワッサン

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甘くてプハァってなるやつ。

1Kの自宅から徒歩1分の自販機へ、毎週日曜に通う習慣ができたのはいつからだろう。北風に人々が背中を縮めて歩く年の瀬に、僕は「つめたい」ドクターペッパーを買った。 TwitterはM-1グランプリの話題で持ちきりだった。多分に漏れず、ネットで漫才を観て、ハハハと笑った。みんなで一緒にテレビを観ているような気分になれて、少しは寂しさも和らいだかもしれない。 まだ日曜が終わるには数時間ある。シャワーも浴びたし、今特にやらなきゃいけないこともない。読まずに積んでいる本を消化しても

    • 僕はきっと、この気持ちを忘れてしまう。

      長い長い梅雨は明けたのだろうか、何週間かぶりにしっかり太陽光線を浴びた気がした。ずっと洗いたかったベッドシーツを洗濯機にかけ、ベランダに干した。時刻は16時を回った頃、まだ陽は高く、夏の匂いがした。 ちょっと油断すると部屋は埃っぽくなってしまう。今が好機とばかりに、部屋の窓を開け放ち、隅々まで掃除をした。あらかた終わり、ユニットバスで足に冷水をかけ流してみると、存外気分がいい。足を拭き、冷蔵庫から飲みかけのドクター・ペッパーを取り出した。 ペットボトル入りで、気が抜けてし

      • ドクターペッパーは日曜の夜に飲むのがいい。

        緊急事態宣言が解除され、久しぶりに外出をした。刻一刻と暗闇に包まれていく町の中、まだ人気は少なく、自分以外にここには誰もいないんじゃないかと錯覚するほどであった。 「パンデミック」という単語について連想するのは、周囲の人々がゾンビとなった世界を生き抜くホラー・アクションゲームだった。その映画の3作目が好きだった。 人どころか生き物の気配すらない荒野の中を、バイクで一人走っている主人公の女性。無人となったガソリンスタンドで物資を補給する中、武器を手に周囲を警戒する。追い詰め

        • それでも連休は明ける

          サザエさん症候群という現象が世に知られて久しい。連休最終日の夜は、往々にして人の心を蝕むものであり、私も例外ではなかった。時刻は21時を回った頃、虚空を見つめて一切の思考力が絶たれてしまった。 連休前に思い描いていたことの1割も実現できれば御の字だ、という格言を残したのはどこの誰だったか。いや、今思いついた言葉なのだが。そんな箸にも棒にもかからないことを考えながら、残された時間をどうすべきか、アイデアが降りてくるのを待っていた。 時計の針の音だけがチク、チク、チク

        甘くてプハァってなるやつ。

          テレワークのギャル

          「は〜、マジあのハゲ使えね〜」 終了ボタンを押し忘れて放置していたネット会議のディスプレイから、ギャルのぼやく声が聞こえた。つい先程、課のグループ通話を終え、上に申請していた予算が下りなかったと課長から知らされたところだった。 画面を見ると、僕とギャルの2人だけがグループ通話に残っているようだった。ひとまず課長に陰口が聞こえていなかったらしいことに気付いて胸を撫で下ろした。この企画は、一年がかりでギャルと僕とが(実際にはほとんど僕が)練っていたものだっただけに、その落胆も並

          テレワークのギャル

          ギャル短編集

          読書感想文のギャル普段メイクだのブランド物のバッグだのネイルだのピアスだのに命かけてて授業聞いてないギャルのことを格下だと思っていたら、クラスみんなで応募した読書感想文コンクールで、天性の才能を持ったギャルにあっさり大賞を奪われて嫉妬する優等生になりたい。 階段上のギャル階段登って何の気なしに上を見たらミニスカギャルのパンチラを目撃してしまい思わず凝視したところをタイミング悪く振り返ったギャルと目があってしまい気まずい気持ちになったところを「これ、見せパンだからw」と軽く笑

          ギャル短編集

          ドクター・ペッパーは罪の味がする。

          消える直前に蝋燭の火が大きく膨れ上がるように、冬の季節もまた、最期の寒波を放っているようだった。今年最後の雪の日に、僕はマクドナルドをデリバリーした。 夜にマクドナルドを食べるなんて、とダイエットに余念のない女友達からLINEが返ってきた。肉が2倍になるんだよ、とメッセージを送ったが既読はつかない。氷で嵩増しされたコカ・コーラはすぐに水気の混じった薄味になって、ズズズ、と音が鳴った。 年度末の日曜日は何をやるでもなく、成果といえば新発売の任天堂のゲームが進んだことくらいだ

          ドクター・ペッパーは罪の味がする。