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1991年 SideB-9「Tenderly~Rica’s Theme(リカのテーマ)/日向敏文」

日向敏文作曲・編曲

・「東京ラブストーリー」(フジテレビ系 1991/1/7~3/18)挿入曲

 この時期、フジテレビは自らの好調を自動的に支えるエンジンのようなシステムを2つ持っていた。ひとつが「JOCX-TV2」と銘打った深夜番組編成、もうひとつが「フジテレビヤングシナリオ大賞」である。どちらも始まったのは1987年。ここから新しいアイデアやスタッフ、キャスト、脚本家の卵たちが続々と生まれ、それが次世代を担う原動力へと育っていった。

 ヤングシナリオ大賞の第1回の大賞を受賞したのが坂元裕二。第2回の大賞が野島伸司。第3回の大賞が信本敬子で、最終選考に残っていたのが水橋文美江。SideBで取り上げた9作品のうち、4つのドラマをヤングシナリオ大賞出身者が手掛け、しかもそのうち2作は桁外れの大きな成功を収めている。これはもちろん彼らの力量の賜物でもあるが、同時に当時のフジテレビが若手起用についてどれだけ本気だったかの証しでもある。そんな新世代による最初のビッグサクセスとなったのが、この「東京ラブストーリー」であった。それは同時に90年代以降の新たなドラマスタイルのスタンダードともなり、ここから数年間はテレビドラマの歴史の中でも有数のドラマ黄金時代となる。

 そして、このドラマはドラマ音楽の面でもその後のドラマに大きな影響を与えた。ひとつは主題歌のメガヒット。もうひとつが劇伴音楽の復権である。日向敏文による「東京ラブストーリー」のオリジナルサウンドトラックアルバムは、アルバムチャート最高位5位と異例のヒットを記録し、中でもこの「Tenderly~Rica’s Theme(リカのテーマ)」は大きな人気を集めた。3つのモチーフが合わさったトラックであるが、どのモチーフもドラマの中で非常に丁寧かつ印象的かつ頻繁に使われた(なにしろ第1話のオープニングで、主題歌がかかる前にすでに流れていたくらいである)。そしてこの曲は、なんと放送終了後の4月1日にシングルとして発売されてチャートインを果たし、最高位34位を記録した。これ以降テレビドラマの劇伴音楽のサントラ盤が発売されることが恒例となった。テレビドラマの音楽をいわゆる映画音楽と同じ位置に高めたのは、この「東京ラブストーリー」だったのである。

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