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100年後にはみんな死んでる

一家でインフルエンザにかかった時のこと。
治りかけの娘は夜咳き込み嘔吐。

嘔吐をいつものように受け止めるため、黄色いキウイのイラストの書いた小さいバケツを口元に持って行く。

嘔吐したものは幸いキャッチできたが、それが気に入らなかったようで大泣き、癇癪。

怒り狂った娘の振るった拳が私の顔にめり込み、マンガのようで笑えた。

油断した私は娘にバケツをとられ、宙を舞うバケツ、
飛び散る嘔吐物。

娘は泣き叫び転がり壁を蹴り、ベッドを足でドラムする。5分、いや10分経ったのか、時間の感覚がない。

『100年後には自分も娘ももうこの世にいない』

というようなことを天井の隅の方を見ながら考えていた。

よく宇宙映画の中で宇宙での静けさを感じる瞬間があるが、同じ状態になった。と思ったら、耳鳴りだ。

この瞬間にも別部屋で1人で寝ている夫は、娘が癇癪を起こしていることも気づいていない。

他の夜、たとえば息子がおしっこを漏らして泣いてるときも、1人がグズった泣き声でもう1人が起きる絶望とも、無関係で朝まで安眠し、『今朝は寒いね』などと言いながら起きてくる。

何とも羨ましい。

娘は泣き叫びながら『ママ出て行って』と連呼したので、この状態の娘に説教しても仕方ないなという気持ちと早く眠りたい一心で、一旦廊下に出た。

しばらくすると段々と静かになった。
眠ったかなと思って中に入るとまだ起きていた。
涙と鼻水で濡れた服を脱ぎたいと言ったり脱ぎたくないと言ったりしてまたひと泣きした。

上の服だけを脱がせてやると、私の膝の上に寝転んできた。
泣きすぎて疲れたのだろう、目を瞑ってわたしの腕を全身で抱きしめている。可愛い。

頬に手を当ててやると安心したようにすぐ眠ってしまった。

こんな事があるからどんな辛いことも耐えられる。
愛しすぎて涙が出る。

夜中に自分の意思に反して起こされる、眠い中癇癪に付き合うこと自体はしんどい、夫にも味わってほしい。

そしてそれと一緒に味わえるこんな幸せなひとときもどうか味わって欲しいと思う。

そして、そのすいもあまいも夫婦で共有できたらどんなに幸せだろうなぁと思いを馳せる。


娘が生まれてから約3年、朝まで寝れたことは一度もないけれど、この先1人で朝までぐっすり寝れる日々が来たならば、寂しいだろうなと思う。

当たり前に一緒に寝ていた夜。
自分が眠りかけた時の「お茶飲みたい」の修行も、
こうして叩き起こされ、睡魔と戦う修行も、
失ったら最後、戻りたくても戻れない愛しい時間なのかもしれない。そう思いながら一生懸命寝息を聞く。

ダブルベッドとセミシングルベッドをつなげた空間の中で頭と足が重なり合いながら寝ている息子と娘。

窓はプールの底から見た空のような色になってきた。
目を瞑って静かな寝息に身を沈める。

あっという間に鳥が鳴き始め、きっと
定刻に『今日は寒いね』と夫が起きてくるだろう。




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