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カチリ、に憧れた日

スマホが日常に溶け込んでからというもの、腕時計をする、というのはある種の嗜好品扱いであったりするように思える。
Apple Watchに代表されるスマートウォッチに関しては、腕時計の形を借りたスマホのような通信デバイスの延長、と感じてしまう。

かつて僕が幼い頃、とても気に入っていた腕時計が3つあった。

ひとつはTIMEXのIRONMAN。
近くのホームセンターで買ったような気もするが、あのインディグロのバックライトが綺麗で、意味もなく布団に潜ってはのぞいていた思い出がある。

ふたつめは、何かワインかお酒のノベルティだったアナログ時計。
所謂サン&ムーンの仕掛けが、小学生の僕には不思議でもあり、メカニカルな香りにやられてしまったんだと思う。

そして最後に、メーカーもどこかわからない、きっと1000円かそこらの、ダイバーズウォッチ風のアナログ時計だった。
今思い返せば、カチカチと回るベゼルはプラスティックのチープなもので、何の意味を持つのか、海に親しんで育ってもいない僕にとっては、無用の長物な昨日も、ランドセルを背負った僕には、何かメカニカルでかっこいい…かっこいいはしっくりこないような気もするが、魅力的な腕時計だった。
おぼろげな記憶の中で、少しポップなカラーと、ドットインデックス。
蓄光であったような気もするが、ひょっとしたら違ったのかもしれない。
きっともう実家のどこにも、その存在はない。


世の中では数年前から、CASIO collection、CASIO standardのラインが人気を博し、チープカシオという愛称を得て地位を改めているが、
そんなぼくも数年前からチープカシオに魅了されている。
どこかノスタルジックな風貌、必要最低限の機能、機種によっては申し訳程度のバックライト…
しかしその実はフルオートカレンダーや、CASIOらしい高い精度、長寿命など、コストパフォーマンスは価格以上に高い…高すぎる。
最近はLF-20Wというアナデジを買ってしまった。
デジタル液晶でアナログを表現する...そんな時計がかつてあったものの復刻。
まさに理想の具現だった。


腕時計は嗜好品のような...と綴ったが、
一定の年齢を超えると、ステータスになるような時計を身につけるべき、という考え方も広く在るのではないか。
その考え方も理解はできるのではあるが、
僕自身は、腕時計にはその人の信念が宿っているべき、という変な持論がある。
それでいくと僕は、これからも過去の素晴らしかった技術やあの頃を、大事に思い、そして大好きで居続ける、という想いを持って、懐かしさを感じる腕時計をしていこう...そんな風に思っている。


タイムスリップ、レトロ、昭和、ノスタルジー、そんな言葉がついてまわる様なチープカシオを身につけて過ごしていたら、
いつかまた、あの頃のカチカチと回るチープなダイバーズウォッチに出会えるのではないか、とさえ思うのだ。

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