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歌のゴールデンヒット 歌姫の一番売れた歌Best100 感想 (少しだけオリコンを再評価しました)

 先日(2022/11/17)、TBS系で放送された「歌のゴールデンヒット」は非常に興味深い内容でした。これまで同種の番組が放送されるたびに「なんでCD売上だけ? またAKB?」という批判が上がり続けていたのに対して、ついにダウンロードとストリーミングも合算した令和のランキングにアップデートされていたから。前宣伝で「音楽業界初」と謳われていたのは決して誇大広告ではなく、しかも、1968年から2022年まですべてを統合することはビルボードジャパンではなくオリコンにしかできないことでした。そしてこれが音楽業界や世間一般に受け入れられるかどうかにオリコンの未来がかかっているような気がします。ただ、新しいことを始める時にはどうしても批判意見はつきまとうので、それも含めて本稿で振り返ってみます。

 とり急ぎ当該番組で放送された曲だけ知りたいよという方向けに。番組で発表された順位を元に、一部(AKB48、NiziU)のみ実際の楽曲人気に沿うように曲変更(脚注*1,*2)してSpotifyプレイリスト化しています。シングルオリジナル音源がないものはセルフカバーまたは男性カバーに置き換えていますが(女性カバーだと紛らわしいため)、それでもどうしても見つからない曲はローカルファイルですスミマセン。

オリコンを常にウォッチしている方にはもう知識として入っているであろうダウンロード、ストリーミングのポイント換算について、おそらくテレビで大々的に紹介されたのは初めてではないでしょうか。

CD/DL/ストリーミング合算集計方法(オリコン)


この、チャートマニアから非難続出だった換算式(私もこのノートで言及した)ですが、番組を見た結果、あいみょんもAdoも、まあそのあたりかな?というポジションに収まっていて、昭和・平成・令和を統合してこれからも事業を継続したいオリコンにとっても史上最大となる難題を解くにはこれがやっぱり落としどころだったんだな、と感じさせられました。

それを象徴する曲の一つが酒井法子さんの「碧いうさぎ」。オリコン集計ではこの曲のCD売上枚数はわずかに100万枚に届いていなかったのですが、ダウンロードが合算されることにより、換算ミリオンに到達していたことが初公表されました。

蒼いうさぎ 換算ミリオン到達

 CDだけだと10万枚だけになるAimer「残響散歌」も、換算ミリオン認定することが可能に。(ただこの数値には「朝が来る」のポイントも合算されているという別の問題が発生してはいるのですが・・・後述)

Aimer「残響散歌」

Adoの「うっせぇわ」に至ってはCDシングル販売無しで換算ミリオン認定になることを、内田有紀さんに語ってもらうことによってアピール。

 おそらく当事者のオリコン自らが、過去のヒット曲と照らし合わせても妥当な換算方法になっているかどうかを検証する必要があると最も理解していて、それ故に「合算ランキング」を開始しつつもそれを全面にアピールしてこなかったのかもしれません。それが、4年間のデータ蓄積によってこの番組で紹介されたような結果が得られたので、やっと正式に宣言できるようになったのかなと感じました。まぁ、着手がかなり遅かったよね、とは思いますが。

 そして、ここでの最大のポイントは、最新の楽曲だけでなく、昔の楽曲にもダウンロード・ストリーミングポイントは加算されていくこと。だから、根幹になるCD売上を1枚=1ポイントに固定しておかないと1968年から蓄積されてきたミリオンセラー作品がすべてご破算になってしまう。もちろん、ある年を境目にしてCD売上枚数を減算処理してっていうビルボード的な方法も選択肢の一つとしてはあったのだろうけど、「いや、でも昔の曲にもDL/STは加算されるのだから対等にいかないと。既にダウンロードが存在した2008年以降のデータしか扱わないビルボードとは違うのよ」というのがオリコンの主張。というよりも何よりも、枚数で換算してくれるのがもっとも直感的にわかりやすいです。ビルボードジャパンの配点方法には、多数の御意見番の言われる利点があり、それはとてもわかるのですが、それはあくまで2010年代・2020年代近辺の市場動向にのみ成立することで、枚数でもなんでもない数値は直感的にわかりにくく、おまけにCD売上枚数の価値さえ年ごとに可変させているとなっては、とても世間一般には受け入れられないです。そこがビルボードとオリコンの決定的な差なのだということが番組を見てわかりました。(そもそもチャート設計思想からして違いますからね・・・)

 そんな風にオリコンの計算方法を再評価しつつも、やはりSNSを見ていて目立った意見としては「NiziUずるいよね」というもの。具体的には、CDリリースされた瞬間、先行配信されていた楽曲が合算ランキングから消滅して他の曲とポイント合算されてしまうという問題。それはそう、確かにそう、合算ランキングを真面目に見てる人誰もが思ってる。そして今回、ランキングマニアでない世間一般も同じくあれ?と思っていることが判明した。・・・オリコンさん、聞いてます?

NiziUはズルいのか問題

 とはいえこれも過去に両A面シングル(ただし、NiziU「Step and a Step」に関しては両A面シングル扱いですらないが)は多数あったし、なんなら番組でも紹介された浜崎あゆみの4曲A面シングルまで現れて(ある意味これもエイベックスのチャートハック)果ては「何曲までシングルか」といった泥沼の議論までオリコンはさんざん経験してきたから折衷案としてしょうがないと思ったのでしょう。わかる。それでも、やっぱり、一曲ずつ買える時代に丸々合算は世間の納得性にかけること、オリコンさんに届けばいいのですが。たとえば、CDリリース時点での表題曲(1曲目でなくてもよい。表題曲が2曲だと言われたら半分ずつポイントを分ける)にのみCD売上ポイントを加算するのがもっともわかりやすいかと。


 あと、番組冒頭に壮大なミスリードがあり、過去曲にもダウンロードポイントが入ってる事例も出てくるので見落としそうになりますが、ダウンロード数って1999年から集計してませんよね? 遅い遅いめっちゃ遅い2018年からですよね?

音楽ダウンロード開始は1999年から。だけどオリコンさん集計してましたっけ?


 集計開始が遅すぎたのはもう仕方ないとして、穴があいている部分(1999年からの着うたフル、およびiTunesが日本に上陸した2005年あたりから2017年あたりまでのオリコン集計漏れ期間の主要ダウンロードサイトのセールス)もあとからでもいいので補完していただけませんか? そうでないと番組で何度も繰り返された「公正に合算」に反してると思いませんか? 週次チャートは遡って作れなくても、累計値への反映は「新たに●●も集計対象に加えることができるようになりました」の一言だけで済ませられますよね。お願いします。これはオリコンにしかできないことだし、オリコンが主導すればどの業者もデータ提供してくれますよ。なのでお願いします。日本レコード協会の「認定」で間接的に穴の大きさはわかるのですが、10万枚区切りや25万枚区切りで粒度が粗すぎるので、オリコンさん的にも元データを集められた方がいいはず。

 他にストリーミングポイント0っておかしくないですか?な曲が多数ありましたが「301位以下は0点」の結果かもしれないので何とも言えません。でもダウンロードに関しては明らかに穴なので補完してほしいです。今回の番組がすばらしかったので、より完全を目指してほしくなりました。

 最後。オリコン主導の番組編成でこんなグラフが見られるとは、本当に時代が変わったのだと思いました。これからもいい方向に変わっていきましょう。期待しています。ありがとうございます。

YOASOBI「夜に駆ける」のストリーミングチャート推移


(*1) AKB48のいちばん売れた歌について番組(というかオリコン)は「さよならクロール」を挙げていましたが、オタク以外の誰の記憶にも残っていないと思われるため、「さよならクロール」の次のシングル「恋するフォーチュンクッキー」に差し替えました。さらにいえばビルボードジャパンではいちばん売れたCDシングルを「Teacher Teacher」の約300万枚としています(オリコンによるCD売上枚数精査問題)。でも、精査がなければYOASOBIの「夜に駆ける」より、ドリカムの「LOVE LOVE LOVE」より、誰も知らない「Teacher Teacher」の方が売れたことになってしまうので番組が成立しなかったことでしょうw

(*2)NiziUのいちばん売れた歌については「Step and a Step」ではなく「Make you happy」としました。これは異論の余地ないはず。

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