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「一期一会」と腕に刻んだある人との出逢い

あの夜もバーにいた。

あの衝撃的な出逢いをしたバー。

”あの彼”と出逢った翌年のことで、半年のシアトル語学留学から帰ってきて、1ヶ月半が経とうとしていた。

そしてあの夜も、”あの彼”と出逢った夜のように、ユウコと一緒にいた。

その前の週の金曜日にも行ったんだけど、そのときに来ていたメンバーに加え、新しい人が何人か来ていて、私はバーの奥側のソファーに座ってユウコとおしゃべりをしていた。


深夜12時を回った頃。

日本人女性と白人男性がバーに入ってきた。

2人は向こう側のソファーに座りいちゃついていた。私は気にもかけてなかったけど、しばらくして2人が私たちが座っていたソファーの向かい側に座ってきた。

その女の人に話しかけられ2人でしばらく話し込んでいた。でも一緒にいたアメリカ人の男の人(声を聞いてすぐにアメリカ人ってわかった)がおとなしく座っているのが気になった。同じ場にいるのにずっと日本語で話してて、退屈じゃないかなー、そして失礼になってないかなと思った。日本語が全然わかってそうにもなかったし。でもそのアメリカ人はその女の人の英会話本に黙々と目を通していた。

その女の人といろんな話で盛り上がってしばらく経つと、いつの間にか幽霊話になった。

「この辺にもいっぱいいるんだってよー!」

とその人。

「そうそう。隣のバーやこのバーにもいるんだって」

とユウコ。

ユウコがママさんから聞いた話をし出して、そしたらそのバーにいた人たちも話に入ってきたので、会話は英語と日本語が入り混じっていた。

「えーーーー?!?!?やだーー。やめて。めっちゃ怖い!!」

と、鳥肌立ってビビりまくっていたら、向かい側でおとなしく英会話本を読んでいたアメリカ人も、

「自分もこの辺で見たことあるよ」

と言い出して、それから話に入ってくるようになった。

そして今度はそのアメリカ人といろんな話になった。

一緒にいた女の人はいつの間にか寝落ちしていて、その前の週に出逢ったジェイともう1人のアメリカ人の4人で話したり、また2人で話したりした。

何とこの人は、もとはミネソタ州出身らしく、今はサンディエゴに住んでいると言っていた。

ミネソタ州と聞いてドキッとした。

そして、その前の年に同じバーで出逢った彼のことを思い出していた。

あの彼もミネソタ州出身だったから。

あの彼と同じ州出身の人と出逢えたことを密かに喜んでいた。


話を聞くと、大学も4カ所ぐらい行ってて、私がシアトル時代に通っていた大学にもいたことがあるらしく、合気道をやっていたり、たまに教えていたりとなんだか圧倒された。

日本に来て3週間目と言っていた。

観光に行きたいと言っていて、その週の金曜日に一緒に行こうと話が進んだ。

どうやって連絡を取り合おうかってなって、私の電話番号を教える代わりに、彼の電話番号を聞いた。

お互いペンも紙も持ち合わせていなかったので、ママさんからペンを借りてバーにあった新聞のチラシをちぎった裏に電話番号と名前を書いてくれた。

カウンターのところに2人で立ちながら、彼が電話番号と名前を書いているのを隣で見入っていたら、

「英語うまいね。」

と言ってきた。

その言葉にうれしくなって、

「半年シアトルに英語勉強しに行ってて、最近帰ってきたばかりなの。

今度はアメリカのカレッジに行きたいから一生懸命英語勉強してる。」

と言うと、

「大学で英語を教えるクラスを少し取っていたし、教材も持ってるから英語教えてあげるよ。

週1の割合で。

その代わりに日本語を教えてね。」

と言ってきた。

ものすごくうれしかった。

だって私はこういう人を探していたから。

しかも、私の好みのタイプ。

雰囲気がアレックス・ジェームス(ブラーのベーシスト)みたいに落ち着いていてクールで、ちょっと茶目っ気があって、真面目で、まだよくわからないけど、尊敬できるような人。


そしてその2日後に電話をかけ、会う約束をした。

当初、金曜日に観光に行く予定だったけど、都合が悪くなってしまったらしく、日程は木曜日の朝9時に変更。

待ち合わせ場所は彼の家の近くのカフェ前に決定。

私は木曜日の朝が来るのをとても待ち遠しく思った。

(続く)



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