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#眠れない夜に
本当に幸せなら、なにも表現しようと思わないわ。
女の子のともだちが言った。
本当に幸せなら
なにも表現しようとは思わないわ。
幸せについても考えないわ。
男の子が言った。
いつか、ぼくたちのむなしさを
かみしめて、泣きながら
美味しいごはんを食べませんか。
なにもしゃべらず
樹の上のコマドリの声を
ただ聴きながら。
うつむいた花に見下ろされながら。
少年はちいさくなって
クリスマスローズの小径を
しばらく歩き、腰をおろした。
うつむいた花に見下ろされながら
風と土の匂いをかいだ。
あたまとこころの中が
風と土の匂いだけになった。
やがて少年は透き通って
見えなくなった。
風か土のどちらかになった。
今日も一日を繕いながら。
クマは、取っ手がとれて、くっつけたティーカップで、アールグレイティーを飲んだ。緩んだボタンをつけなおしたコートで病院に行った。近くに良い本屋を見つけた。帰りに、出かけなくなった親に春物のピンクのセーターを買った。ちいさな庭でひっそり咲いた花の写真を撮った。今日も一日を繕いながら。
グレーのうさぎの女の子
「グレーのうさぎの女の子」
世界の管理人が言った。
あ、この世界にはとくに
温情とか意思疎通とか礼節とかは
備わっていません。
まあ、あるのは、キッチンと
やせた庭と古いギターくらいです。
グレーのうさぎの女の子が言った。
期待してなかった。
それだけあれば、十分。
なにもないと、あとは希望しかない。
恵まれないきつねは思った。おれは天才でなくてよかったな。だって、天才ゆえの苦しみとかありそう。その点おれは、頑張るだけ。成功も幸福もあまりなくてよかった。失うの怖くなりそう。才能も成功も幸福もないって、自由だな。なにもないと、あとは希望しかない。光は今日も音楽みたいにきれいだな。
その先に、必ず良きものがある。
世界の果てのある国の人々は、やはり、困難な日々を生きていたが、なぜか、その先に、必ず良きものがある、と無闇に感じていた。そして、そのためにできる限りのことをした。体力と知力と無限の想像力と、怒りと冷静さと優しさで、挑戦を繰り返した。ときにさぼり、愚痴り、絶望しながら☺️
耐え難い現実が続く時、tea trainがやって来る。
耐え難い現実が続く時、tea trainがやって来る。座席は、薄暗い個室のティールーム。花と葉とアンティーク。ハンサムな猫の給仕がベルガモットのお茶を淹れてくれる。3段のお皿に焼きたてのお菓子達。長いソファに顔をうずめて大声で泣く。疲れて眠る。ハンサムな猫の給仕がそっと毛布をかけてくれる。
僕は自信がないよ。
僕は自信がないよ。子ぐまが言った。#お洒落なオカマのキツネ が言った。あんたね、自信っていうのは、早咲きの花にこんにちはって挨拶できたか、折れた水仙を摘んで生けたか、ふろふき大根を食べてもらいたいひとのことを考えてできたか、ゴミ出しが間に合ったか、なのよ。