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「ドグラ・マグラ」とSS01

 昨日、九時過ぎに睡眠導入剤を飲んで布団に入ったお陰か、六時過ぎに目が覚めた。米を一合炊き、洗濯機を回し、散歩と参拝して帰宅。洗濯物を干し、筋トレをして朝食を済ませ、食後の薬と一服を済ませたのが七時五十八分。職場に行く約束は二時。だいぶ早くやることが終わってしまい、我ながら手際の良さに感心したものだ。
 そして、昨日から読み進めていた夢野久作の「ドグラ・マグラ」を読み始めた。自分で言うのも何だが、読むペースは速い方だという自覚はある。それが、まだ上巻の九十五ページ。昨日は疲れていたからすぐ眠くなるのだと思っていたが、どうも違う。芥川龍之介の「歯車」と近しい感覚だろうか。人間誰しもが持つ(誰しもかどうかは知らないけど)狂気の部分を撫でまわされるような気分になる。「読むと、一度は気が狂う」というキャッチフレーズをネットで見かけて興味を持ち、元々文学作品は大好きだったので買ってみたが、成程と納得せざるを得なかった。十ページも読むと眠くなってくる。内容は興味深く、素直に面白いと思えるのに、だ。結局気付いたら一時間近く眠ってしまっていた。不思議な作品と出会ったものである。

 そこで、今度は自分が書く側に回ってみることにした。実は、このノートパソコンを買ったのも、療養休暇を頂いて間もない頃、小説を書いてみたくて購入したのだ。昨日の私の記事に「いいね」をしてくれた方のページを見ると、こんな記事があった。

 この記事の下に、「ランダムテーマジェネレーター」というものがあった。

 これは、ランダムに三つの単語を出し、それで何か作ってみましょう、というもので、非常に興味をそそられた。というわけで、これを開いて出た単語でSS(ショート・ストーリー / ショート・ショート)を作って暇潰ししようと思う。どれくらいの長さになるか自分でも予想ができないため、このような括弧括りの説明とした。もし良かったら完成したものを読んで貰い、キーワード三つを当てっこなんてしてみても面白そうだ。極力ヒントを削るため、BGMはEDMのプレイリストにした。では、始めよう。
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SS01「夜」

 金曜日。退勤後に一度帰宅し、電車を乗り継いでいくつか離れた駅近くの居酒屋で僕と男友達、女友達二人の四人で飲んでいた。女友達は既婚者で、結婚後の話、仕事の話、プライベートな話など、話は尽きず愉快な時間を過ごしていた。飲み放題も一時間延長し、予定以上に長く話してしまい、JRの終電の時間に合わせて解散となった。問題は、JRからローカル線を乗り継いで帰宅しなければならないのだが、JRのダイヤに乱れが発生していたため、ローカル線の終電を逃してしまったのだ。
 仕方なくタクシー乗り場に目をやると、長蛇の列が待ち構えていた。これは果たしてどれくらい待たねばならないのか予想すらつかないほどの人・人・人。
 近所に友人が何人か住んでいるが、時計の針はもう頂上を回ってさらに半周したくらいの時刻。送迎を頼んで後日お礼に飯でも奢ろうか、とも考えたが、流石に良心と常識が勝った。
 駅から歩くと三十分程。歩けない距離ではないし、千鳥足になるほど飲んでいた訳でもない。懐に余裕が無いわけではなかったのでタクシーを待ってもよかったのだが、酔い覚ましも兼ねて歩くことにした。幸い、平日頑張ったお陰で土日を使って仕事を済ませなければならないこともなく、目覚ましを切って寝ても何ら問題ない。
 ローカル線沿いに歩き、ポツンポツンと街灯が等間隔にある田園地帯の舗装されていない畦道に近しい道を歩いていた。スマートフォンの充電は切れてしまったので、蛙の合唱をBGMに家路をのんびりと歩いた。一度家に帰り、軽装で来たことがまさかここで功を奏するとは。
 まだ家までは十五分強ある。週末ということもあり、一週間の仕事の疲労が下半身に足枷となって足取りを重くする。タクシーを待つべきだったか、と半分後悔しながら、ポーチに入れておいたお茶をグイっと空を見上げる形で飲んだ。
 お茶をしまい、もう一度空を見上げてみた。周りは田んぼばかりで、街灯もかなり少ない。生まれてから過ごしてきた地元なので、道がどこに繋がるか、どこを通ったら最短で帰れるか等はある程度知り尽くしている。だが、自宅の周りは街灯ばかりなので、この町の夜空がこんなに美しいことは知らなかった。オリオン座を筆頭に、か細く光る星、煌々と輝く星、時々流れ星…。普段意識することのなかった絶景に、思わず煙草を一本点けて吸い込み、吐いた。畦道は乾いていたので、尻を着いて座って空を眺めながら煙草を吸う。元々地元大好き人間だったが、さらに地元が好きになれた気がした。
 その感動を胸に、吸い終えた煙草を携帯灰皿に押し込んで再び家路を急いだ。家に着いた頃には深夜一時を過ぎた頃だった。軽くシャワーで汗を流し、歯を磨いてすぐに布団に入り、すっかり息絶えてしまったスマートフォンを蘇らせるべく充電器に差し込み、眠る準備をした。
 疲労が全身を包む。意識が微睡みの中に消えかけていく。脳内に、「こんな日も悪くなかったな」という言葉がよぎった直後、僕の意識は眠りに消えた。     【完】

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 いかがだっただろうか。今回は比較的作りやすいワードだったこともあり、周囲の友人達と住んでいる環境をイメージしながら一本書いてみたが、これはとても面白い。またいつかやってみよう。次はどんなワードかな。難しいワードが出たらどうしようかな。楽しみと暇潰しの材料が増えたぞ。
 キーワードの答えは、SS02の時に発表しようと思う。読んでくださった方、次回もし出会うことがあれば、三つのキーワードが何か考えてみてくださいな。では、今回の一曲で〆。


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