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渦中から君へ4

あぽしょ〜よ〜

君はぼくの手を引きながら言う。
はじめは何を言いたいのかわからなかったが、君がそれを言うときはかまってほしいとき。ぼくやみおさんが話をしていて君の相手を怠っているとき。それでふと気がついた。

遊ぼうよ〜。

今朝はベランダにレジャーシートを敷き、クッションやぬいぐるみたちを伴って日向ぼっこ。
君は例のごとくぬいぐるみたちを横一例に並べ、毛布をかける。今日は暖かかったからぬいぐるみたちはさぞ暑苦しかったことだろう。それに文句一つ言わない彼らには尊敬と感謝の念を忘れないようにしている。

今日も君を伴ってばあばのおうちへ行き、君はばあばに遊んでもらい、ぼくは農業に従事する。ぼくの本職は教育関係の仕事なので休まなきゃならないのだが、かと言ってうちで君とずっと遊んでるわけにはいかない。とは言え、普通に仕事をしていたらこんなに君と過ごすこともできなかっただろう。この騒ぎがおさまり、保育園が再開したときが心配だ。

実家の周りは自然が溢れており、君はばあばと散歩しながらいろんな植物や生き物と出会う。どんぐり拾いは君の楽しみの一つのようで、きれいに丸まったどんぐりではなく、ひびの入ったどんぐりを拾っては、綺麗に殻をむいて中の実をばあばに差し出す。ぼくもむいたどんぐりを見せてもらったけれど、どんぐりの中身があんなピーナッツみたいになってるなんて知らなかった。君はその殻剥きをほっといたらいつまでも続けそうだというのがばあばから受けた報告だ。

君が生まれてからというもの、ぼくの映画の見方も大きく変わった。単純に娘に何かが起こる話は本当に見ていてつらい。先日も「グエムル漢江の怪物」を見返して、なんちゅー映画やねんと思った。実は結末はばっちり覚えていたのだけれど、親が弱者であるというだけでこれほど社会から無視され、救いえた命が損なわれようとしている。
本当に娘なんて持つもんじゃない。娘を持つこと自体がホラーみたいなものだ。
「グエムル」以外にも「誰もがそれを知っている」や「エイス・グレード」などの近作は、娘を持ってるがゆえの苦しみを味わった。
もはやこの苦しみ抜きで映画を見ることはできないのだ。

「インターステラー」とか「somewhere」とか「コンタクト」とか「ファミリーツリー」とか「ギフテッド」とか、君が生まれる前から好きだったけれど、いま見たらまたきっと見え方が変わってるだろうと思う。
映画ってそうやって見たときの状況で見え方が変わっていく。だから好きな映画ほどたびたび見返したいし、長く生きていくのが楽しみだなって思う。

早く一緒に映画館に行きたいな。はじめはきっとアニメになるのかな。

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