見出し画像

産後4ヶ月の私をしんどくさせるのはナニモノなのか

息子を出産してから4か月が経った。
産んでみるまでわからなかったが、自分が産んだ子どもというのはこの上なく可愛い。
目に入れても痛くないとはこのことだ。
毎日成長し、できることが増えていく我が子。本当のほんとうに、心の底から、1秒でもどんな些細なことでも見逃したくないと思っている。

それなのに、それなのにどうしたものか。
このところ息子と対峙するのが辛い。どうしようもなく辛いのだ。
泣き声を聞くと吐き気がする。
おむつ替えの最中に暴れられると泣きたくなる。
短時間で起きてしまうのでは、と夜が来るのが怖い。

こんな風に書くと、さぞ育てづらい子なのではと推測するかもしれないが、それは全くもって違う。
ここまでのところ、息子はかなり育てやすい方だと思う。
妊娠39週の半ばで自然に陣痛が起きて出産に至った。分娩時間は14時間となっているが、実際に"陣痛"と戦ったのは8時間程度だったし、それも硬膜外麻酔のお陰でかなり緩和された痛みだったと思う。
出生時からいままで、健康上の指摘は何も受けていない。今のところ身長も体重も成長曲線のほぼ真ん中で、母乳でも粉ミルクでも差し出されたものを喜んで飲む。
多少寝ぐずりはするが、大抵は自分で寝ついてくれるし、昼寝でも1時間程度、夜間であれば5時間はまとまって寝てくれるようになった。

自分の子どもが
健康上の懸念があると分かった人、身長体重の伸びが芳しくない人(もしくはその逆)、母乳拒否・哺乳瓶拒否と戦っている人、抱っこしないと泣き続ける人、1時間以上かけて寝かしつけてもベッドに置いた途端起きる人…
Twitterの育児アカウントではさまざまな悩みを抱えた人がいる。
そのような人たちと比べたら、私と息子の状況は極めて良好だと言える。

加えて、実家は物理的に距離が近い(車で5分)。母も孫が可愛くて仕方ないようで、私の所用の際は喜んで預かってくれるし、なにか予定を作っては3日に一度は孫の顔を見に来る。
夫に関して言えば、多少自主性が足りない点に意見したくなることはあるにせよ、息子のことはとても可愛がっているし世話もよくしている。
洗い物が流しに残っていたところで文句を言うわけでもないし、夕飯のおかずが買ってきた惣菜だけだったとしても「今日もありがとう」と喜んで食べてくれる。

さぁここまで書いてみて改めて思う。私の生活環境は極めて良好だ。
息子は育てやすい上に周囲の協力もある。

それでは私の辛さとはどこから来るのだろうか?

寝不足だろうか?
否、新生児の頃は長くても2〜3時間で起こされていたが、今は違う。先に書いた通り、息子の寝付きは悪くないし、5時間ほどはまとまって眠っている。その間私も寝ている。
家事に追われている?
それも違う。洗濯機は全自動だし、炊事は夕飯分だけ。作るにしても米を炊いてコープのお料理キットで2〜3工程で仕上がるものばかり。
厄介な親族がいる?義実家は遠方で直接関わることは少ない上に、余計な干渉はしてこない。実家は今のところ落ち着いている。夫との関係も悪くない。

これといった理由は思い当たらないのに、今私は、息子と向き合うのが辛く、今にも泣き出しそうな状態で、息子よ、1秒でも長く昼寝をしていてくれと願って止まないのである。

息子が可愛くて仕方がないはずなのに、片時も離れたくないと思っているはずなのに、息子と接するのが辛いだなんて。なんて罰当たりなんだろう。望んでのぞんで、待ち焦がれてやっと会えた息子なのに。一緒にいられる時間なんて短いのに。こうやって抱きしめられるのは今だけなのに。なにもできない彼を世話することは幸せなはずなのに。
もっと辛い状況の人はたくさんいるのに。
困難な中で頑張っている人はたくさんいるのに。
私は恵まれているはずなのに。
なぜ辛いだなんて思っているんだろうか?

辛さの限界で、夫に「辛い」とこぼしてみた。
夫は「何が辛いの?」と聞いてきた。
次に出たのは、
「辛い状況じゃないはずなのに、辛いのが辛い」だった。

そうか。辛いと思ってはいけないのに辛いから、辛いのだ。
自分は恵まれているから辛いと思ってはいけない。いい環境にいるから辛いと思ってはいけない。息子を愛しているから、息子の世話をできるのは幸せだから、辛いと思ってはいけない。

...自分に呪いをかけてしまっていたようだ。

新生児の頃と比べたら睡眠時間は伸びたし。
預けようと思えば預けられるし。
家事も完璧にしている訳ではないし。
夫も多少なり、家事•育児参加しているし。
息子は育てやすいし。
自分の時間が全く取れないわけじゃないし。
今の息子と過ごせるのは『今』しかないのだけれど。

確かにそうなんだけれど。

自分の好きな時間に寝て起きられる訳じゃないし。
夜はまとまって寝るとは言え、夜間授乳はあるし。
いつ寝返りで起きるかと気になるし。
「 いま変わってほしい」時にいつでも変わってもらえる訳じゃないし。
夫婦2人の家事に加えて息子の分の家事も増えているし。
夫が息子と過ごすのは、私も一緒にいる時ばかりだし。
ちょっと目を離したすきに自分で死にに行くし。
美容院に行きたくても、病院に行きたくても、夫や実母の予定を確認して預かってもらえるように調整しないと行けないし。

ストレスに感じない訳がない。

でも、自分が望んだことだからと、今しかないことだからと、特別で尊い時間だからと、
自分に呪いをかけてしまっていた。

辛いものは辛い。

生活環境の変化というのはうつ病の発生要因になる。例え喜ばしいことであってもだ。
常に睡眠不足で、息子を無事にすごさせるというプレッシャーもある。体調に異常はないか、体重は順調に増えているか、睡眠は十分か、発達段階に適した遊びは、離乳食は、保育園は•••

考えることも気に掛けることも、山ほどある。
毎日が目まぐるしく過ぎて行く。
ストレスを感じないわけが無い。
当たり前な事なのに、自分でかけた呪いのせいで、それすらも気づけ無くなっていた。
そりゃ辛いよ。私、辛いよ。
ずっと辛かったよ。
辛いって言えないのが辛かったよ。

長ったらしい泣き言になってしまったけれど、ここに書いたことで自分の気持ちが整理できたしスッキリした。
どんなに環境が整っていようと、子どもが可愛かろうと、自分以外の命を担っている以上、大変なんだ。
産後の母親は訳も分からないうちに育児の大海に放り出され、そこからノンストップで長い長い航海が始まる。
乗り込む船は一人乗りのイカダかもしれないし、2人乗りのボートかもしれない。もしくは大型船かも知れない。
大事なのは、乗り込む船は違えど、どの船も常に大海に揺られているということ

船の大きさによって、感じる揺れの大きさはちがうだろう。
小さな波でも大きく揺れてしまうかもしれない。時化でもへっちゃらかもしれない。
でも、大地に足をつけて踏ん張るより、揺れる船の上で踏ん張るのは、どんなに乗り心地が良い船でも大変だ。

大変だと認めて、
しんどいと認めたら、格段に気持ちが楽になった。
息子は可愛い。いとおしい。幸せだ。
でも辛いししんどい。それもまた事実。
事実は事実だ。
自分の気持ちをを無視すると辛さが増す。
呪ってしまえばなおのことだ。

今回私は、「辛すぎて耐えられない」とTwitterに弱音を吐き、夫にも話してみた。
他者に話してみて、初めて自分の辛さの原因と向き合えた。
産後うつの発症は産後5〜6ヶ月が多いと聞く。
ボロボロの身体に鞭打って、気力で頑張り続けて、気力が尽きる頃なのかもしれない。
揺れる船で踏ん張るのは、力がいるのだ。船が転覆しないように操るのは知識も工夫もいる。勉強しなければできない。気力だけでは乗り切れない。

願わくば、産後のお母さんが周りにいる方は、そしてお母さん本人も、「母は強し」などと言わないでほしい。
出産したからといって、別の生き物に生まれ変わったわけじゃない。
そこには、突然ライフスタイルが大きく変わった一人の女性がいるだけだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?