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【読書日記・3】ジャケ買いならぬ、ジャケ選び


「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ・著


私はジャケ買いに弱い。本は表紙を眺めているだけで幸せな気分になる。装丁が好きなのだ。美術館やギャラリーに絵を観に行くように本屋さんへ行く。図書館でも片っ端から本棚から出して表紙を見たくなる。だからこの本を5年前に本屋で見た時のことを、今でもはっきりと覚えている。

熊本に住んでいた頃、隣町のちょっとおしゃれな本屋さんに家族で行き、子どもたちにそれぞれ好きな本を1冊づつ買った。長女の兎は小説、長男の波平はバスケ雑誌、次男の筑前は恐竜ミニ図鑑を選んだ記憶がある。子どもたちがそれぞれ選んでいる間、私は店内をフラフラと歩き回り、この本に出会ったのだ。
グリーンとオレンジのシンプルな配色。こけしのようなオカッパ頭も私の心にグッときた。当たり前だが、とてもデザインされていて目を惹きつける本だった。にも関わらず、図書館で一読してから「これは手元に持っていたい!」という本だけを買いたい私は、瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』をうっとりと眺め「今度図書館で探してみよう!」と思ったのだ。

その「今度」はまさかの5年後だった。図書館で再会した私は、再びこの本の装丁に心を奪われた。迷わず手に取り、読み終えるまでの3日間は楽しい時間だった。当時のベストセラーを5年後に読む天邪鬼なところが、なんとも私らしい。
しかし、それでいいのだ。本との出会いは人によって様々だし、流行りに乗ったところで、心に響くとは限らない。今考えても、当時は本をゆっくり読む時間はなかった。今年、高校生になった兎も主人公の優子とちょうど重なり、やはりこの本を開くのは5年後の今だったのだ。

父親が3人、母親が2人いる優子。お互いに愛情を持つそれぞれの親子関係は程よく温かく、つい過干渉になりがちな私には、血を薄めるくらいが丁度よい。他人とまでは思わなくとも、そうやって我が子とは言え自分とは違う人格をもって生まれた一人の人だと実感できるのだ。


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