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ラバーネットをネイティブトラウトで使うことにした話

今年から、トラウトフィッシングに使う全てのランディングネットをラバータイプに変えた。
WEBで見つけた、コンパクトにバッグに収納し、ワンタッチで開く、所謂インスタネットタイプのもの。ただ、ネットの収納バッグをベルトにつけると腰回りが邪魔そうだし、いざというときにスマートに取り出せるか自信がない。また不器用だから、折り畳み収納にイライラするのが容易に予測できたため、通常のネット同様、マグネットリリーサーをつけて背中にぶら下げている(注。

注)インスタネットのフレームが、何度も繰り返されるリリーサーの脱着にどこまで耐えられるのか、私にはわからない。そんな簡単に破損するものでもないだろうが、ウッドフレームよりは弱いだろう。この使い方は、あくまで自分の判断と責任で行っているということは明記しておく。


こういうネットって、以前は「わかってない」アングラーが使っている印象があった。あー管釣り師ね、君。みたいな。ラバーネットはエリアトラウトのもの、ネイティブはやっぱり銘木フレームのクレモナのネットでしょ、しかも職人の手作り手編みの。みたいな。私自身、そんなネットを今も所有しているし、それらは魚を掬うだけではなくて、カメラに納めるときの素敵な「額縁」になってくれていた。


でも、実体験から言えば、ランディングしたときはヒレピンであったろう魚がリリースのときは鰭が傷つき、裂けてしまっていたことを何度か記憶している。

写真は昨秋支笏湖で釣った、61cmのレインボートラウト。自己記録だ。ネットに収めてから大いに暴れ、写真を撮ろうとしたら尾鰭と腹鰭が大きく裂けていることに気づく。多分私のせいだ。

もう一枚、数年前狩野川の支流で釣った尺アマゴ。セッパリの美しい魚体だったが、これも尾鰭の上部が根本まで裂けている。現場では興奮していて気づかず、家で写真を確認して気づいた。


釣りというものは、自分の満足のために、魚の生命をおもちゃにする遊びだから、魚体保護を突き詰めていくと、釣りをやめる他なくなってしまう。私も絶対に魚体を傷つけてはいけない、などと思ってはいない。そもそもハリを口に引っ掛けて無理やり水から引っ張り上げている時点で、魚の心身には相当なストレスだ。そして、そういう行為を、我々は楽しいと感じているわけだ。

また、放流ニジマスの鰭や産卵で傷ついた尾鰭が綺麗な形に戻るという話はよく聞くから、傷ついた鰭もいずれは再生するのだろう。だからあまり神経質になる必要はない、のかもしれない。

ただ、私としては、何度も思い出すだろう最高の瞬間の記憶に、何か嫌なこと、後ろめたさが加わることをできるだけ避けたいのだ。いいファイトをした美しい魚体と共に、傷ついた鰭の記憶が蘇って欲しくない。思い出は細部まで一点の曇りなく美しいものでありたい・・・なんて。まあ、だから、要は、そういう自分勝手な理由で、エリアトラウトで推奨されている、魚体に優しいと言われるラバーネットに変えた、ということだ。


今年の釣行で、今のところ悔やむような大きなダメージを魚に与えることはなかった。ただクレモナネットだって毎回毎回魚の鰭を裂いていたわけではなく、問題の根本はネットではなく私自身の魚の扱い方なのかもしれない、とも思う。

少なくともネットを変えたことで、一層丁寧に魚を扱おうという気持ちになったことは、いい効果なのだろう・・・。別記事にある、支笏湖で71cmのブラウントラウトを釣ったときは例外だったが。


また、私のインスタネットに限ってのことだが、軽量化により体への負担が減り、また飛行機遠征の際にコンパクトに収納できるようになったのは大きなメリットだった。
今までの支笏湖釣行では、二泊三日の旅程にもかかわらず、ネット収納のためだけに70lのスーツケースを選んでいた。それが今は、丸めれば、45cm枠のネットが小さいコンビニ袋に収まるサイズになる。シューズとウェーダーを入れても35lのスーツケースで十分。本当に楽になった。


写真の写りはどうか、というと、ラバーネットは魚体の下で膨らみやすく、クレモナのように美しいフレームにはなってくれそうもない。ただ、これは、ネットを使わずにそのまま魚をおいて撮ればいいわけで、特に問題はない。むしろ自然でいいではないか。


現時点では、このラバーネットを使い続けるつもりで、クレモナネットは物置にしまったままだ。さらに遠征用に、海外ブランドのフレーム折り畳み式のコーティングラバーネットも購入した。これなど、真っ黒のネットにアルミフレームとアルミシャフトで、ヨーロッパ在住時に使用していたプレデター用ネットそのもの。風合いも雰囲気もへったくれもないのだが、魚に優しい(であろう)ということのほかに、いつか釣れる、かもしれない80cmオーバーのブラウントラウトにも対応できそうでもある。むしろ、そちらにこだわった選択だ。

そう、風合いとか雰囲気の話で言えば、日本のネイティブトラウトアングラーがこだわる、クレモナネットも含めたスタイルは、あくまで日本独自の文化なのだと思う。我々がこだわっているこのスタイルは、欧米の一部のフライフィッシャーマンのスタイルを、数十年前の日本のルアーアングラーが真似たところにはじまっているのだろう。

しかし欧米のフライフィッシャーたちも今は、Webでみる限り、ラバーネット使用者が多そうだし、たまたま手元にある日本のネイティブトラウト雑誌を見てみても、日本のオピニオンリーダーたちの中にもラバーネット、ラバーコーティングネットの使用者がいるようだ。

私個人は、アングラーの方々がどのネットを選択しようが自由だとは思うが、少しづつ、そういう流れになってきているのかもしれない。今年中禅寺湖に久しぶりに行くことにして情報をとったときに、レイクトラウト狙いのビッグベイターの中に、それこそエリア用かと思うような柄の長いラバーネットを持参している方たちがいることを知った。そんなところからまた新しい日本独自のスタイルが生まれるのかもしれないな。







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