#16 留学初の週末はオックスフォード観光、だが2時間無為に待たされる 30代からの英国語学留学記 2018年2月17日 その1
薬の力を借りず初めて眠れた。
そして朝九時に自然に目が覚めた。
土曜の朝はいつ、どこであろう心地が良い。
渡英して初めての土曜日、週末である。
いつもは外が騒がしくなってから、階下のダイニングに赴くが今日は各々好きな時間に起きてもよい。
だがホストファミリーに休日時の朝食に関するルールを聞いていないことに気付き、ちゃんと供されているか不安になる。
恐る恐るダイニングに向かうと、代わり映えのしない、いつもの朝食が三人分サーブされていた。
三人分ある、ということはアブドゥルもシナンもまだ朝食を食べてていない、ということだろう。
一人っきりで朝食を食べる。大して上手くないパンを流し込む紅茶が冷めているのがキツイ。
もっと早く起きるべきだったか。いやいや、土曜の朝くらい好きなタイミングで起きた方が精神衛生上良い。
日本語で独り言をブツクサ言いながら定形の朝食を平らげ、台所に食器を戻す。
だがいつも忙しなく朝の家事を行うキャリーさんはいない。彼女に限らずホストファミリー自体誰一人いない。
もしかすると僕以外、誰もこの家にいないのではないか?
妙な不安に襲われる
流しに食器を置き、そそくさと部屋に引き返す。
すると僕の部屋の反対側、シナンの部屋から雷鳴の如きイビキが。
少なくともシナンは家にいた。
ちょっと安心。何の安心か分からぬが。
しかし煩いイビキである。
今は亡き新宿のカプセルホテル・グリーンプラザの雑魚寝スペースでも闘えるレベルの異常な騒音。
まだシナンは二十歳そこそこなのに難儀なもんだ。
金曜夜なので夜遊びでもしていたのだろうか。
今晩聞いてみるか。
今日は初めての週末である。
語学学校の嫌われものトリオでオックスフォードシティーセンターの観光地らしい観光地を回る楽しい一日なのだ。
それなりに中心部を散策はしているが、入場料が必要な規模の大きな観光名所、歴史的な協会と世界一の大学施設等は一切訪れていないため、この一日で大方の主要観光地を網羅する、という算段である。
念の為、昨晩それなりに頑張って作ったルートを改めて確認。
無駄な動線許せないマンのため、結構ちゃんと綺麗に計画が立てられている。
我ながらスムーズにルート構築が出来たものだと関心。
二人ともロクに調べていないだろうから僕がしっかりせねばならない。
身嗜みも整えバスでオックスフォード中心部に向かう。何気に朝一人で家を出るのもこれが初めてである。大したことではないが、新鮮な気持ちになる。
土曜日はバスもかなり空いている。通勤通学時以外は利用者が極端に少ないのであろう。what'sup のグループでバスに乗り、11時には待ち合わせ場所に確実につく旨、二人に報告。
するとオヌールから驚きの返事が。
流石オヌールである。
それを聞いてカルロスもこう答える
まさかの同意
いやいや俺もうバス乗ってるんだけど。
11時集合でOKと二人とも同意しただろ!?
勿論言い返す
よくもまぁ、罪悪感なく、ここまで言えるもんだ。俺が悪いのかよ!
一応彼らなりの論理は通っているっちゃぁ、通っているが、呆れる論理である。
トルコやアルゼンチンではこれが普通なのだろうか。
二人とも昨晩フットボールの試合を見てかなり興奮したらしく、観戦後も母国の友人や家族とかなりの長電話をしていたようで、眠るのが遅くなったというのが事の真相のようだ。
昨晩の二人の返答が妙に適当で、トントン拍子に僕の意見が通ったのは、他のことに夢中で大して読まずにリプライしていたからであった。
不満は募ったが、2対1では勝ち目がない。
それに約束したんだから11時に来い、と怒った所で、しおらしく慌てて来るような二人ではないので、諦めて一人、オックスフォードシティーセンターで2時間彼らを待つことになった。
通勤通学バスはガラガラであったが、オックスフォードのシティーセンターは人人人で埋め尽くされていた。
英国随一の学都だけではなく、一流観光地でもあるオックスフォードは週末になると国内だけではなく国外からも様々な観光客が訪れる。
そりゃ、こんだけ中世近世のヨーロピアンな街並みが綺麗に保存され、何れも現役稼働している町なんぞ世界には中々ないからね。
初めての来訪であれば興奮して散歩に勤しめたのだろうが、残念なことにここに来るのは今日で六回目、しかも昨日の午後大分一人で散策し尽くしているのである。
6度の散策の結果、オックスフォードのシティーセンターは良くも悪くも超コンパクトであると分かっている。どうすりゃいいんだ一人で。
あと2時間、それでも一人で時間を潰さなくてはならない。
困ったがどうしようもない。取り敢えず昨晩作った観光ルートを歩き問題がないか確認をする。
それでも時間は余る。なんとかせねば。
オックスフォードという世界的にもトップクラスの、人類の遺産とも言える素晴らしき場所で、あろうことが2時間も時間潰しを義務付けられるという状況に得もしれぬ背徳感に苛まれながらも、無礼でセルフィッシュな二人を待つしか今の僕には選択肢がないのであった。
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