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#5 英国でプリペイドSIMを買うも失敗 最初の夜 30代からの英国語学留学記 2018年2月12日 その4

英国の携帯ショップへ


晴れて?自由の身になり、プリペイドSIMを買いに行く。
このご時世、ネット環境が無いと何もできない。

渡英前に徹底的に調べた結果、半年程度の滞在ではプリペイドSIMを買うのが英国では一番安上がりであることが分かったからである。

ローミングでは高すぎるし、月額契約をするには英国で銀行口座を保持するか英国発行のクレジットカードが必須であるため(2018年時の情報)事実上プリペイドしか選択肢がなかった。

ネット上の情報ではスリーという通信業者のプリペイドSIMが一番コスパが良いらしい。

そのために態々秋葉原の専門店で中古のZTC製のSIMフリースマホを購入し、渡英前に一通りセッティングを済ませた。

SIMを購入できる場所を学校の職員から教えてもらい、英国の総合携帯ショップであるCarphone Warehouseへ向かう。
ハイストリートを歩けば絶対見つかる、という適当な説明だったため、若干不安ではあったが、オックスフォードシティーセンターのハイストリートは思いの外狭く、且つ商業施設が並ぶエリアは一部に集中しているため、容易に見つけることができた。

Carphone Warehouse

SIMの購入はあっけないほど簡単

中は日本の家電量販店の携帯電話売り場と殆ど一緒。

様々な携帯電話が売られており、日本では見たことがないスマホも多い。
特にiPhoneの古い型式のモノまで多く売られているのには驚いた。また意外な事にスマホだけではなく、通話とSMSしか使えない所謂ガラケーのような物も多く売られている。選択の幅が広いのは良いことだ。

なるべく店員と会話をせずにスッとSIMだけ購入をしたかったが、店内を暫く物色するも、流石にある程度の会話は避けられないことが分かってしまった。

日本でも携帯電話の契約は中々骨が折れる仕事。
渡英直後の貧弱な英語力で無事上手くいくのか正直不安ではあったが、必須インフラ獲得のため勇気を振り絞り店員に話しかける。


自分は留学生、プリペイドSIMが欲しい、電話も使える一番安い奴ください!

現状、できる範囲の英語で精いっぱい伝える。
店員のアフリカ系のお兄さんは、無表情で各社の各種プランが記載されたボードを見せてくれた。
想像以上に情報過多。頭がパンク

僕が明らかに困り果てている姿を見るや否や、お兄さんはスッと、無言でボードを指差し。買うべきおススメのプランを示してくれた。

10ポンド(当時1500円)で4Gは使える。寡占企業の日本のそれと比べるとビックリの安値。事前調査で知っていたがいざ目の当たりにするとその安さにビビる。
キャリアは事前に調べた最安値のスリーという会社ではなく、僕の世代では懐かしい名前のボーダフォンであったが、10ポンドで4Gなら十分だろう。電話は百分ほどなのだが、まぁ殆んど使わないだろうし。

お兄さんに誘われたプランで購入を承諾。電話番号付きSIMが、(何の目的かわからないが)パスポートのコピーだけで簡単に購入できた。外国人の僕には凄く便利で嬉しいのだが、ここまで簡単に電話番号を入手できる、というのは容易に犯罪行為にも悪用できる、ということでもある。大丈夫なのだろうか。
アクティベートも動作確認も店員の人にやってもらい、無事英国でもスマホが使えるようになった。やったぜ。

独りでもバスに乗れて帰れた!

予想より遥かに容易にSIMを入手できたとは言え、流石に学校初日。精神的に疲弊していたため、早々に家に帰ることに。

今回はシナンがおらず、独力でバスに乗り、家へ向かわねばならない。
定期券を買う際にバスの職員に乗るべきバス停のアルファベットと、バスの系統番号、降りるバス停も全て教えて貰ってはいたが、シティーセンターのバスターミナルは予想以上にバス停が多い。

(写りが悪いが)オックスフォードのバスターミナルの地図
尋常じゃなく多い。

今朝降りた所に行けば何とかなるだろう、と高を括っていたが、当てが外れてしまった。
オックスフォードに限らず英国の主要都市の公共バスはシティーセンターのターミナルを中心としたハブ&スポークタイプであることが多い。
今朝の降車地点はオックスフォードの各バス路線の終点に値する場所であるため、始発となるバス停もそれだけ多い。
事前にバス会社の職員から教えられていたから何とか分かったが、今朝の降車地点からかなり離れた場所が乗車するバス停であるとは普通思わないであろう。掲示板の情報だけでは本当にあっているか絶対不安になる。

ただ始発だけあり、バス停も設備が整っている。電光掲示板完備で、系統番号毎に到着までの時間が分単位できっちり書かれている。早速開通したスマホで家族や友人に近況報告のメッセージを送りながらバスを待つ。

初めての独りバス、しかも定期利用であったが、特に問題なく乗車完了。
今度は二階席の窓際に座り、車窓を堪能しながら帰路につく。

シティーセンターから離れれば離れるほど豪華絢爛な歴史的建造物は少なくなり、住宅街に近づけば近づくほどホームステイ先のような年季の入ったレンガ造りのテラスハウスが立ち並んでいる。
住宅街にも商店、レストラン、パブのような商業施設がパラパラ見受けられるが、どれも個人営業の小さな造りであり、建物もテラスハウスと比べると比較的新しく見える。

SIMカード、動作せず


無事、乗り過ごすことなく、降車地点で降り、ホームステイ先へ帰れた。
ホストファミリーに挨拶し、簡単に初日の感想を述べる。
相変わらず向こうが何を言っているのか全然わからないが。
加えて晩御飯の準備等色々忙しそうであり、あまりこちらに構う様子がなさそうであった。
とりあえず部屋に帰って再度スマホの通信状況を確認。

だがここでアクシデント。

一向に通信ができない。

焦る。

折角苦労して(実際は然程苦労はしなかったが)イギリスでSIMを入手したのに!

SIMカードを再度入れ直し、スマホを再起動すると、一瞬通信はできるようになるのだが、2,3分経過すると再度全く繋がらなくなる。送受信しようと色々と動いている形跡は見れるのだが、まともに繋がるレベルではない。

困った時はネットで調べて解決、という手段を今まで取ってきたが、その肝心のネットに全く繋がらないので調べようがない。

1時間ほど格闘したが、現在の自分の知識と経験ではどうしようもないことが分かり断念。
そもそも家ではwifiが繋がるはずだが、ホストファミリーから教えて貰ったパスワードが何故か通らないのも問題。
ただホストファミリーとは未だコミュニケーションに難があり、問い合わせしても解決できる自信がない。

どうしたものか、と頭を抱えていると、ドアをノックする音が。

扉を開けるとそこにはシナンがいた。

学校初日である僕を心配して、わざわざ部屋まで来てくれたのだ。

困った時のシナンである。

学校の話はそこそこに留め、SIMが繋がらなくなった旨、相談する。

義侠心溢れる男シナンは喜んで僕のスマホを色々といじり、何とか解決しようとしてくれたのだが、彼の力を以てしても状況は改善されず。

何度もSIMカードの出し入れと電源のオンオフを繰り返すうちに、ついには起動時ですら全く繋がらなくなってしまった。

「あまり見たことないスマホだし、日本で買ったスマホだから英国のSIMとは合わないのかも。新しいスマホをイギリスで買った方がいいよ」

SIMには相性というものがあるらしい。日本で購入したSIMフリースマホと言っても、イギリスのSIMとは相性が悪かったのかもしれない。もしくは中古スマホのため、SIMの読み取り箇所に不具合や劣化があるのかもしれない。

詳細な検証はできないので何とも言えないが、シナンの言う通り新しいスマホを英国で買う以外、方法はなさそうだ。

節約のために日本で中古SIMフリースマホを購入したのに、結局は高くつくことになりそうとは。何とも歯がゆい。

異国で慣れないことはすべきではない、ということなのだろうか。シナンに感謝の意を伝え、結局新しいスマホを明日改め買う旨、シナンに伝える。

すると、シナンは興奮した面持ちでこう僕に告げた

「よし!それならアイフォーン買おうぜ!アイフォーン!アンドロイドなんて*Rubbishだぜ!アイフォーンは最高さ!」
*Rubbishは英国英語で役に立たないモノ、コト、という意味


シナンは熱心なアップル信者であった。

古い型式のものが英国では売っているとは言え、アイフォーンは英国でもかなり高い。
それに僕は昔からアンドロイドを使っており、異国で急遽IOSに切り替えるのはいくら何でも面倒である。

流石にアイフォーンはちょっと難しいなぁ、と伝えるも、アイフォーンの素晴らしさを語りだすと止まらなくなるシナン。

彼は物凄く良い奴なのだが、ちょっと押しが強いというか、妙な所で我が強い所がある。
人が何を買おうがこちらの勝手ではあるが、親切心からなのか、アップル教への布教に熱心だからか、彼の説得は止まらない。

結局、シナンのアイフォーン購入セールストークを押しとどめるのに10分ほどかかった。
自分のお金で渡英したから現在貯金がなく出来るだけ節約したいから安いアンドロイドにしたい、という理由を何度も告げることで、何とか納得してもらった。

断る(このシチュエーションで断るという言葉が適切かどうか怪しいが)行為というのは体力と精神力を疲弊するものだ。
憎めないと言えば憎めないのだが、尋常じゃなく疲れるやり取りであり、正直参った。

その後、シナンから「とりあえず家ではwifi使えるから今日はwifi使えばいいじゃないか」とポロっと一言飛び出す。

そうだ、wifiのパスワードもシナンから聞けばよいじゃないか!シナンならコミュニケーションが取れる!何故思いつかなかったのか。

シナンにホストファミリーからもらったメモに記載のパスワードを入れても通らない旨、相談する。

「1年前に入れたから覚えていないけど、ルーターの場所分かるから、ルーター記載のパスワードを入力すればいいんじゃない?」

本当にシナンはいい奴である。

ルーターはいつも食事をとる玄関直結のダイニングにあった。
早速パスワードを確認すると衝撃の事実が。

ホストファミリーのメモに記載されたパスワードであるが、アルファベットと数字の組み合わせは間違いではなかった。

だがメモではアルファベットの大文字、小文字の区別が全く成されていなかった。

それじゃ認識する訳ない。

ネイティブの中には大文字と小文字の区別をそこまでしない人がいる、と何処かで聞いたことがあったが、wifiのパスワードでそれをやられるとは思いもしなかった。年配の夫婦だからか、wifiのパスワードは大文字と小文字を明確に区別する、というルールを知らなかったのだろうか。

何はともあれシナンのお陰でwifiは繋がった。
少なくとも家ではネットで調べものができる。これは本当に助かる。
シナンには感謝しかない。

晩御飯まで早速ネットで気になっていた諸々の英国事情を調べたり、グーグルストリートビューで家から学校までの道のりを再確認。諦めきれずにSIMについても調べたが結局原因はハッキリとはわからなかった。

人生2度目の英国家庭料理の晩御飯


30分程経過すると、階下からホストマザーのキャリーさんが何やら言葉を発している。おそらく晩御飯の準備ができたのだろう。
シナンらしき人が階段を降りる音が聞こえてきたのを確認してから、僕も部屋を出て例のダイニングへ向かう。

案の定、晩御飯であったが、今回も食事はホストファミリーと一緒ではい。シナン曰く、この家ではホストファミリーと留学生は食事場所、時間が明確に分かれているらしい。

3人分食事は出ているがアブドゥルの姿は見えない。全員揃って食べた方が良いのか、と一瞬思ったが、何も言わずにシナンはディナーを食べ始めていたので僕も気にせず食事を取る。朝も思ったがシナンとアブドゥルは仲が悪いのではないか?
無論、
こちらから聞くような話題でもないので敢えて触れないでおく。

今日の晩御飯はフィッシュアンドチップス、マッシュポテトみたいなジャガイモ料理と小柄の青リンゴ。青リンゴ以外完全に茶色一色で、ジャガイモが見事に被っている。

フィッシュアンドチップスは日本のHUB等のブリティッシュパブで出てくるものとは違い、魚一匹丸々が揚げられている。
塩、ケチャップ、マヨネーズをつけて食すようだ。(因みにイギリスでチップスというとフライドポテトのことを指す。ポテトチップスはクリスプと呼ぶ)

イギリスの本場のフィッシュアンドチップスと言えば、ケチャップではなく、モルトビネガーと言われる酢をビチャビチャになるまでかけるのが英国流と聞いており、日本の英国パブでも大抵出てくるのだが、ここの食卓にモルトビネガーの姿は見えない。
留学生には合わないと考え敢えて出していないのか、ここのホストが偶々ビネガーを好きではないのか。

後で知ったのだが、英国でもかける人もいればかけない人もいる、ということらしい。昔ながらの英国人はケチャップでなくモルトビネガーを好んでかける、という記事もどこかで見たのだが、年配の方でも特に拘りがない人に何人か出会った。

たった半年の滞在で断言するのは憚られるが、フィッシュアンドチップスにかける調味料というのは、英国人にとっては大きな議論を呼ぶような話題ではないように僕は感じた。


ちなみに味は美味しい。特にフィッシュアンドチップスは某HUBのそれより食べ応え十分。一匹丸ごとだからね!

マッシュポテトのような料理(日本のそれよりクリーミー)もマッシュポテトなので普通に美味しい。

なおシナンはマッシュポテトに普通にチップスをつけて食べている。

ジャガイモにジャガイモをディップして食べる、というのは異様に思えるのだが、
マネして食べてみるとこれまた結構おいしい。
ジャガイモだもんね。美味しくない訳がない。
豆腐に味噌と醤油をつけるようなモノだと思えば、特段異様ではない?
美味しくはあったが、やはりイギリス家庭料理はちょっと変わっている。

青りんごは日本のりんごと比べるとかなり小ぶり。
身は締まっており、歯ごたえがある(要するにかなり固い)。甘さよりも酸味が際立っているが、これが全然悪くない。他が脂っこい濃い味の料理だったので、爽やかな酸味が口と胃を癒してくれる。

シナンにイギリス料理は不味いと聞いていたが、朝のパン以外は結構美味しくて驚いた、と話すと、この家で出される食事は他と比べるとかなり美味しい部類にはいるらしい。

それもこれもホストマザーのキャリーさんが食事には拘りを持っており、出てくる料理はシナン基準で美味しいものばかりらしい。

だが外で食べるイギリス料理は不味いと断言。
外食する時はケバブがトルコ料理、もしくはパキスタンのカレー食うべきだ、
と熱弁を振るうシナン。

やはりイギリス料理は不味いのか。。。

今回の晩御飯も不味くはなく、寧ろ美味しい部類ではあったが、そこはかとなく変な印象を受けた。
バックパッカーで東南アジアを回った際、不味いご飯に出会ったことは無く、変わった料理もポジティブな驚きをもって経験できたが、ここイギリスは文化圏が根本的に異なるからか、出された料理自体は普通と言えば普通なのだが妙な違和感を覚える。

少なくともアジア圏でジャガイモを揚げた料理の付け合わせにジャガイモを蒸したものを添えて出すようなことは普通しないだろう。
料理の彩りや食材のバランスとか、そういった概念が根本的に我々と異なるのかもしれない。

食後、シナンから散歩に誘われるも、登校初日で疲れているのと、やっと繋がったネットで調べ事や家族と連絡を取りたいから、と理由をつけて断ってしまった。
前述の理由も本当の事なのだが、何よりも丸一日久々に英語だけで過ごしたため、想像以上に精神的な疲弊が強く、これ以上誰かと英語で会話を続けるキャパシティが全くなかった。

遊び目的の旅行や、勝手知った相手がいる海外出張とは比べて負担が非常に大きい。初見の人々と英語で積極的にコミュニケーションを取るのは今の自分には到底難しいことがよくわかった。

シャワーを浴びて狭いシングルベットの上に潜り込む。想像以上に自分の英語能力が低く、またカルロス、オヌールとの会話にも上手く交じれなかったことから、語学力云々ではなくコミュニケーション能力自体も低い事実に直面し、唯々落ち込む。胸に巨大な穴が、それも底が見えぬほどの深淵が出来ているような感覚に陥る。

敗北感。現実に打ちのめされた敗北感という奴なのだろうか。

体も心も満身創痍なのだが全く眠ることができない。
決して良くはない重苦しい感情全身が支配され、心身がしびれている。
結局一睡も出来ずに翌朝を迎える羽目になった。


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