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#17 一人でコーヒーを買う 英国で(不本意ながら)タバコも買う 30代からの英国語学留学記 2018年2月17日 その2

2時間、オックスフォードのシティーセンターで時間を潰す。贅沢過ぎる悩みである。

週末となるとオックスフォードには誇張抜きで世界各国から様々な人種の観光客が集まる。
成田空港のターミナルよりも人種の坩堝ではないだろうか。

日本ではあまり聞かれることがない、子音が連続で続いているような、独特の東欧言語がアチラコチラで耳に入るのが興味深い。

またアフリカから来たと思わしき黒人はアメリカや欧州移民の黒人とは雰囲気が明らかに異なるのですぐそれと分かる。
体のラインにフィットしたフォーマルなお召し物を来て、皆一様にスリムでスタイルが良い。
オーバーサイズな衣装を着て、とにもかくにも派手なギャングスタ的な格好をしている北米や欧州の彼らとは全く対照的だ

勿論、単純にオックスフォードまで来れるアフリカ人というのは一握りの裕福な人間だけ、というのもあるのかもしれないが。

そういえば今は亡き漫画家、ねこぢるのエッセイ漫画にもアフリカの黒人とアメリカの黒人は全然違う、と言った内容があったことを何となく思い出した。まさかイギリスのオックスフォードでねこぢるを思い出すとはな。

観光客に紛れて市内散歩。流石にこれで6度目であり、時間潰し後も更に観光をしなくてはならないと思うとちょっと気が滅入る。

そしてこの日は寒い。
天気は良いのだが強烈な寒気が近づいている影響で殊更寒い。渡英して一番の寒さではないか。

30分程度で散策する気力はなくなり、直ぐ最寄りのカフェに飛び込む。
チェーン店ではない伝統的な店にしたかったのだが、今回も見つからなかったため、Pret a Mangerという英国由来のサンドイッチに力を入れたカフェにした。

写真を撮っていなかったのでwikipeidaより Londonのどこか
Par Dirk Ingo Franke — Travail personnel, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=28616463

Pret a Mangerは英国では至る所で見られる一大カフェチェーンである。
名称はフランス語なのだがイギリス発祥。そしてフランス語名なのにイギリス発祥のサンドイッチに力を入れている。

矛盾の塊のような店である。

後ほど英国人の友人に聞いた所
「英語名のチェーン店なんて美味しくなさそうだろ?だから店名はフランス語にしているんだよ、きっと」
とのこと。

ちなみに発音はwikipeida日本語版を見るとプレタ・マンジェと発音するようだが、現地では全員”Prets”(プレッツ)と発音していた。

Mangerはフランス語だけど、イギリス人は大抵フランス語わからないし、発音するのも好きじゃないし、誰も覚える気がないから、Pretsでいいんだよ。だってイギリスのチェーンだから」とのこと。

あんまりである。
だったらわざわざフランス語名でつけなきゃいいのに、と思うのだが

サンドイッチに力を入れているだけあり、軽食メニューはかなり豊富。日本のターミナル駅のNew Days並に種類がある。そしてここでも先日のスタバ同様、バナナが売っている。イギリス人はカフェでバナナを買うのが普通なのだろうか。

写真撮っていないのでwikipeidより
By Zhangyang - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=17878699

飲み物はスタバ等の一般的なコーヒーチェーン同様にカウンターで注文するスタイル。メニューはわかりやすい。サイズ指定等はないが、大体どれでも3ポンドから4ポンド、450円から600円くらい。

普通のコーヒーで良かったのだが、いわゆるレギュラーコーヒーもアメリカンコーヒーもない。どれも和製英語だからである。
普通のコーヒーはどれなんだ!と思い一瞬焦ったが、メニュー表の一番下にFilter Coffee  £0.99 との表記が。

まさかの1ポンド以下!なんじゃこりゃ。安すぎだろ。
100円マックのコーヒーみたいなものなのだろうか。

食事類は買わず、異常に安いFilter Coffeeなるものだけを注文。
ここPretも店員の接客態度が非常に良い。0.99ポンドのクソ安いコーヒー1つだけを注文する発音不明瞭なアジア人中年男性一匹であろうとも、皆満面の笑みで仕事をしてくれるのである。
Stay in or Take Away (中で飲食するのか、持ち帰りするのかの意味)という問いに最初答えられず(聞き取れず)とぎまぎしていても、笑顔で大ぶりのジェスチャーを交えて再度説明してくれるのは流石紳士淑女の国。

持ち帰りはTake outではなくTake Awayと英国では言うことをその時初めて知らされる。

Take Awayだと遥か遠くまで連れ去ってしまう、というイメージを勝手に持っていたのだが、ここイギリスではそういう訳ではないようだ

スタバと同じように頼んでもいないのに小型の別容器にミルクを並々と入れられ、フィルターコーヒーとセットで手渡される。コーヒーをそのまま飲むのは英国では異常な行為なのだろうか。

牛乳コップ半分とコーヒー1杯で150円というのはかなりお得過ぎるような気がしてならない。

Pretで一人コーヒーと牛乳を飲みながら時間を潰す。
素晴らしいことに店のFree Wifiがつながるため、容量を気にせず雑にネットサーフィンができる。
日本では平昌五輪が、そしてカーリング女子の検討が話題になっているようだ。イギリスは冬季五輪に全然力を入れていないようで、全く話題を聞かない。

非常に勿体ないことをしている気がする。観光地で時間を潰すことに罪悪感募る。

流石にコーヒーと牛乳だけでは1時間で限界。長時間粘る客を排除するような雰囲気ではないが、0.99ポンドで居座り続けるのは気が引ける。

そしてコーヒーを飲むと無性にタバコが吸いたくなる。

今までは毎朝シナンよりお恵みを受けていたが、今日はシナンが爆睡中ということもあり、手元にタバコがない。

よろしくない習慣だとは分かるのだが、コーヒーとタバコは自分の中ではセットなのだ。だから完全禁煙のスタバには日本では絶対によらず、専らルノアール派だったのだが。

無論、英国は室内完全禁煙なのでここでは吸えない。だが店の外ではコーヒー片手にタバコを吸っている人間が多数見られる。

イギリスのタバコは無茶苦茶高い。
日本の4倍以上の1500円以上平気でする。

だがコーヒーとタバコを美味しそうに喫している連中を見ると、どうしてもどうしてもタバコが吸いたくなってしまう。

このままここで時間を潰し続けることへの罪悪感を亡くす、ということを大義名分に不本意ながらタバコを購入することを決意


しかしながらイギリスでは何処でタバコが買えるのだろうか。

日本であればコンビニ、もしくは個人営業のタバコ屋であると相場が決まっているが、イギリスには日本式のコンビニは存在していない。
個人営業のタバコ屋のような場所を探すのも至難の業である。

あと分かったことだが、著名なスーパーマーケットでもタバコは購入できる。
だが百害あって一利なし、未成年に悪影響のタバコという合法毒物を大っぴらに陳列することが英国の今の文化では憚られるため、有人式のレジの後方にタバコが隠されており、購入する際は店員に直接その旨を告げ、年齢認証を済ませるシステムになっている。
タイのコンビニでタバコを買うときと同じような仕組みである。

だがまだ渡英して1週間も経っていない自分にはそんなことが分かるはずもない。
無論、事前にネットで調べたのだが、日本人で英国に住んでおりネットで発信するような人種は、その意識の高さから嫌煙家がマジョリティのため、タバコの買い方なんぞ個人ブログ等には記載が殆どなかった。
結局は自力で草の根分けてタバコを買える場所を探さざるを得なくないのである。

幸か不幸か、時間だけはあの適当過ぎるトルコ人とアルゼンチン人のせいでたっぷりある。

世界各国から集まったウィークエンド観光客の大勢がその美しさに息を呑むオックスフォードで、タバコを売っているような場所を血眼になって散策。これもまた背徳感があるが仕方がない。

アテもないのに具体的な目的を持って店を探し土地勘の無い異国の地を散策するのは中々疲れる。
そして改めてオックスフォードのシティーセンターは超高級店かインターナショナルなチェーン店と二極化されているな、と改めて認識。丁度よいローカルショップがあまりない。

30分ほど散策し、学校の近くにそれらしき店を発見。
東南アジアの首都に点在しているような個人商店のように、モノというモノがゴチャゴチャと無秩序に並べられ、色あせたペプシやアイスクリームの看板が見せ前に鎮座している。
歴史の重みを嫌というほど感じる荘厳な造りの建物が多く、景観に合わせた店が多い中、あまり世俗的というか下品なこの店であれば、絶対タバコも売っているだろう。

そう確信して中に入る。
外観もゴチャゴチャしていたが、中は予想以上に酷い有様で、日焼けした玩具が散乱している田舎の駄菓子屋のようである。
一流観光地、オックスフォードであるため、イギリス国旗やらロイヤルファミリーグッズが多く並べられているが、売れ行きが芳しくないようでどれもこれもホコリを被り、色褪せている。
観光客はこんな場末の店で如何にもなグッズを買うことは絶対ないだろうに。

店番は南アジア系のタトゥーを入れたガラの悪い若者であり、店番にも関わらず大音量でスマホからラップミュージック(グライムと呼ばれる英国式ヒップホップだと思われる)を流しながら、スマホをイジイジしている。

スタバやPretsの完璧な積極とは雲泥の差。
まるで場末のアジアの雑貨屋に迷い込んだのではないか、という錯覚に陥る。

だが案の定、こういう店だからか、タバコもバッチリ売っていた。隠すことなく堂々とカウンター奥に陳列されている。

しかし日本のコンビニのように番号札等はないので、銘柄を英語で指定しなければタバコは買えない。

半グレみたいな異国人に話しかけるのは人生初めての経験であるのだが、ここまで来てあとには引けないため、勇気を振り絞って”Can I have a cigarette, Please!?”と話しかける。

予想通り、すごくやる気のなさそうに南アジア系の店員は応対する

どれ?

ちゃんとブランド指定もしなくてはいけない。
普段は吸わないが、こういうときは国際ブランドであるマールボロが無難なので”マールボロ プリーズ”と返答

どのマールボロよ?

そりゃそうである。マールボロも種類がたくさんある。そして僕は普段メンソールのタバコを吸うため、”マールボロ・メンソール ライト プリーズ”と回答

メンソール?何?

しかめっ面で返されビビる

メンソールが通じない!
メンソールって英語じゃなかったの?どうしよう?

焦る。

もうめんどくさいからマールボロレッドと言って場を凌ごうかと一瞬考えたが、マールボログリーンと言えばメンソールのタバコが出てくるのではないかと思いたち、

「マールボロ グリーン! ミント!」と答える。

ああマールボロのメントールね。

メンールじゃなくてメンール だったのか!

単純に僕のthの発音が酷かったので通じなかった。それだけである。

何はともあれ、無事にメントールのタバコを購入することは出来た。しかし一箱15ポンド(1750円)ってクソたけぇなオイ
こんな高価なものを気前よく配るシナンは一体何者なんだろうか?

オックスフォードの美しい町並みをバックにメンソールのタバコを吸うのは何とも心地よい。コーヒーを飲んだのは30分前なのでコーヒーの余韻は完全に消え失せてしまったのだが、もはやどうでもよいのだ。

しかしこれで無駄な出費を今後し続けなければいけなくなってしまった。

改めて自分の意思の弱さを嘆く。
だが元はと言えばタバコを誘ったシナンが悪いし、2時間も平気で遅刻するオヌールとカルロスが悪い。彼らがこんなことをしなければ俺はイギリスでタバコを買う機会なんてなかったのだ

無理やりな論理で自分の駄目さを棚上げし、自己弁護を図る。
周りの連中がそういう人々ばかりだから、この種の図太さがなければ英国では生きていけない!きっとそうだ!うん!

そう心の中で叫びながら遅刻した二人を待つ。ようやくその時は訪れた。2時間は本当に長かった。


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