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息子の判断に唸ったあの日・・・

これはもう1年程前の出来事を綴った回想録です。

恵まれた環境のサッカーチーム

息子が所属するサッカーチーム。
利用しているピッチは天然芝でナイター設備も完備の、ホアヒンで最も恵まれてる環境で、スポーツジムやプール、テニスコートなども備わっている複合施設の中にあるため、地元の裕福層や外国人のご家庭のパパさんやママさんが多数利用することもあり、そんなご家庭の子どもさんが多数所属しているチームで、ここホアヒンではそこそこの規模とレベルのチームです。

もともとは、PSG(パリサンジェルマン)のライセンスで運営を始めたチームだったこともあり、地元に多数あるタイ人が主催するサッカーチームに散らばって所属していた子どもたちが一気に集まりスタートしたチームでした。

ところが、その当時のチームは運営はあまり良くなかったのでしょうね、気が付けば次々にメンバーが去り、危うく空中分解の寸前まで追い込まれた状態となっていたところを、現在のコーチ兼運営者が高額な名前ばかりのPSGライセンスを返上した上でその全てを引き継い技、全く新しい運営方法で取り組みを始めてからチームの活気はみるみる好転し、子どもたち選手もどんどん成長して戦績もどんどん向上し、新たなメンバーがどんどん増えてきた・・・という経緯があります。

子どもの育成チームとはいえ、ネームバリューさえあれば人が集まりなんとかなる・・・ものではないって事がよくわかりますね。
お金のためなのか、子どものためなのか、その部分がすごく見えた事件なだけに、運営って本当に大変だなと思いつつ、現コーチにはすごく感謝しているんです。

そんな恵まれたチームに新たな課題が!

ところが、ここにきて新たな課題が浮上してきたのです。
これまで仲良くライバルとして成長してきたチームメイトが次々に他のチームに移籍して行くという現象。

そのチームは、地元で最も有名なチームで、子どもから大人まで多くのクラスが存在し、タイの3部リーグに所属するプロチームも抱えている大所帯のチームで、息子が所属するとあるチームメイトたちの動きをきっかけに、次々と他のチームメイトにも波及して一気に多数のメンバーが移籍することになったのです。

理由は、「そのチームは、マッチ(試合)の数がたくさんあり、サッカー技術を学ぶ実践的なトレーニングがたくさんあり、毎日毎日ほとんど休むことなくサッカーのトレーニングができる」というもの。
この子たちの親の中には、プロ・アマは別にして元サッカー選手だった親もいたり、敬虔なサッカーファンもいたりと、我が子のサッカー人生を一生懸命考えているので、その親が「マッチの経験の数が最優先に重要」だと考えている人も多く、そんな雰囲気が一部のチームメイトの行動で火がついて他のチームメイトもそれに倣う判断をとるのも理解できます。

何にしても、人生は「これが正解」なんて道はなくて、どの道を選んだって可能性は失われないのだから、それぞれが選ぶ道を思い切って進んでもらいたいと思うわけです。

もちろんそれは我が息子に対しても同じです。
なるかどうかなんて何ひとつ決まっていない未来について、過去から持ってきた物差しを置いて、あっちでもない、こっちでもない・・・なんて親が知ったかぶりして天秤を見せて道を選ばせるなんてことほど意味のないものはないと思ってる破廉恥な親なので(笑)子どもの考えや思い、まずはそれを聞いてあげることから始まって、そしてその子が既に持っている答えを受け止めて、そっと背中を押してあげる・・・って感じなことをいつも心がけてはいるのです。常にヒヤヒヤしながら(笑)

しかして息子は「移籍しない」と決断

もちろん息子も相当悩んだ様子。
移籍を最初に言い出したのは、最も仲が良くて最高のライバル同士だったチームメイトだったからです。

彼からも、彼の親からも「今のチームはフィットネスクラブだ」「マッチがほとんどない」「コーチはサッカーのことを全くわかってない」「○○チームは、上手い奴がたくさんいて、技術も学べる」「プロに行く選手も輩出してる」といった感じで、今のチームのデメリット、あっちのチームのメリットをたくさん聞かされてきたのですから、心が動かされないわけがないのも当然。

それでも彼は「現チーム」を選んだのです。この判断、親として本当に嬉しい限りでした。これまでの子育てで、息子には大事なことを教えてこれたんだなと。

それは一つに「人を大切にする気持ち」です。人間関係を大切にすることとも関係している部分ですが、自分と正面から向き合い、自分のことを常に心がけて人として大人として接してくれて、自分の考えを重んじてくれて、難しいことを簡単に、簡単なことを楽しく、楽しいことを真剣に教えてくれるコーチとの取り組みから、まだまだ卒業する段階でもない今、目先の損得で天秤にかけ、得そうに見える道を選ぶ尻軽な考え方ではなかったこと。

また一つには「旨そうな道を選ばなかった」判断基準です。例えば同じ金額で売ってるジグゾーパズルがあるとします。同じ1,000円ですが片方は100ピース、もう片方は1,000ピースだったとしたら、どちらを選ぶでしょうか?
楽勝の100ピースではなく、難しそうな1,000ピースではないでしょうか?

それはなぜでしょうか?
そうなんですよね、難しいのは楽しいんです。
そして完成した時の達成感も難しい方が爽快なんですよね。

そうなんです、息子は「あっちの方がプロになる近道かもしれない」という道を蹴って、遠回りかもしれないけど、この道でこのコーチ初のプロに自分がなると決めて恩を重んじたんです。

息子のこの判断に、夫婦で唸りました。
自分たちが子どもの頃に、果たしてこんな哲学を持ってただろうかと。
どちらかといえば、人に流されて何にも考えずに尻軽なことを平気でやっていた幼稚な自分だったと思います。

こうしてまた一つ、大切なことを子どもに気づかせてもらえた幸せな親です。

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