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洗浄・高圧蒸気滅菌の日常モニタリングに関して。ガイドラインや施設評価ツールの動向、日常モニタリングの基本を解説します。

2021年10月には医療現場における滅菌保証のガイドライン2021、2022年7月には医療現場における滅菌保証のための施設評価ツールが発行されました。

本記事では、昨今お客様から多くのお問合せを頂いている、日常モニタリングに関して情報提供させて頂きます。

本記事の構成は以下の通りです。
・中央材料室を取り巻く大きな流れ
・日常モニタリングについて
・よくあるご質問への回答

この記事を読めば、ガイドラインや施設評価ツールにおける日常モニタリングに関する要旨、日常モニタリングの基本的な考え方を押さえることができます。


1. 中央材料室を取り巻く大きな流れ

1-1. 医療現場における滅菌保証のガイドライン2021の日常モニタリングに関する記載

2021年のガイドライン改訂により、中央材料室は運用変更およびコスト増の問題に直面しています。ガイドライン2021における日常モニタリングに関する項目の抜粋は以下の通りです。

出典:医療現場における滅菌保証のガイドライン2021

ガイドライン2015の勧告レベルは(A)すべての施設で実行すべき項目、(B)可能な限り採用すべき項目、(C)適宜採用すべき項目 を意味していました。しかし、ガイドライン2021ではこれらの勧告レベルは廃止され、原則としてすべての施設においてガイドラインに記載された項目を守ることが求められています。

適切に日常モニタリングを実施することは、非常に重要です。一方で、中央材料室は日常モニタリングに関する消耗品のコスト増が余儀なくされたとも言えます。

再生処理の質向上に向けて「何のコストを削り、何に投下するのか」といった優先順位付けが、より重要になっています。


1-2. 医療現場における滅菌保証のための施設評価ツールの日常モニタリングに関する記載

施設評価ツールは、2022年7月に日本医療機器学会から発行された、自施設の業務レベルを客観的に評価するためのツールです。

本評価ツールは、医療現場で働くスタッフが、自施設の業務レベルを客観的に評価し、適切に行えている点、不足している点を認識し、そのレベルを改善するための手段として、日本医療機器学会の滅菌管理業務検討委員会が策定したものである。

施設評価ツールより抜粋

下記は施設評価ツールにおける日常モニタリングに関する質問項目を抜粋したものです。

出典:医療現場における滅菌保証のための施設評価ツールVer1.01

施設評価ツールにおいても、日常モニタリングに関して多くの必須項目(早急に改善が必要な項目)が設定され、早急な対応が求められていることがわかります。

次章以降では、それぞれの日常モニタリング(洗浄インジケータ、ボウィー・ディックテスト、包装内インジケータ(CI)、BI、PCD)について詳しく解説していきます。


2. 洗浄インジケータ

2-1. 洗浄なくして滅菌なし

高圧蒸気滅菌による菌の殺滅は、適切な洗浄があって初めて成立します。医療器材の再生処理において、洗浄工程は非常に重要なプロセスです。

洗浄工程が重要な理由の一つに、バイオバーデンの問題があります。

国際規格ISO/TS 17665-2には、滅菌温度に対する保持時間の条件が示されています。この蒸気滅菌条件は、10⁶個の菌を滅菌することを前提としています。例えば、10⁶個の菌を滅菌するためには、121℃の蒸気の場合、15分必要ということを意味しています。

蒸気滅菌条件(ISO/TS 17665-2)

洗浄が適切に行われた場合は、バイオバーデン(滅菌が開始される時点での菌数)が10⁶個を下回るため、15分の滅菌で余裕をもってSAL≦10⁻⁶を達成することができます。一方で、洗浄が不十分だった場合。バイオバーデンが10⁶個を上回ってしまい、15分で滅菌してもSALに到達しない=滅菌不良となってしまう可能性があります。

また、そもそも汚染物が付着した器材表面には、蒸気は曝露せず滅菌することができません。滅菌されたとしても、パイロジェンなどの発熱物質が残ってしまうことが問題です。



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