見出し画像

日米の子育て事情雑感

どんな国でも、様々な制度設計を通じて親になろうとする人にシグナルしている基本姿勢があると思う。

私はまだ渡米3ヶ月だし、NY州の片田舎で過ごしただけだが、
日米のそれというのは、以下のようなものでは?と推察している。

日本
You should resolve all child's things among your family, because he/she is your baby. Don't bring your matter to us.
子どもに関することは身内で解決してください。あなたの家の子どもなんですから。世間様の迷惑にならないように。

アメリカ
You should acquire financial capacity before you become pregnant. Otherwise you might stay poor and so as your baby.
妊娠する以前に財務能力を備えていなければなりません。さもなくば子ども共々貧しい暮らしを送ることになりえます。

まず日本から。子育て世帯に対する政府の財政的支援は先進国の中で最低水準で(対GDP比)、
教育支出も同様に低い。子ども1人あたりの教育費のうち、半分近くを日本の家庭は負担している。
このような教育費の公私負担割合の国はOECDに2つとない。
つまりは家庭が文字通り「身を削」って子どもを育てている。

保育園に入るには、家庭での保育に欠けることを証明しないといけない「保育の必要性認定」。早期から集団保育をしたいから、という理由では充分ではない。だって本来あなたが育てるべきだから。

日本の企業ではローテクとインハウスによる低い生産性で、長時間労働&低賃金が特徴的とされるが、日本の家庭だって全く同じだ。
子育てに纏わる無償のケア労働は手間が掛かり過ぎており、それを代替する商品やサービスも少なく、少ないので値段が下がらない。(未経験だがPTAにも同じ風潮を感じる)最近よく家事労働時間の国際比較がジェンダーギャップの文脈で持ち出されるが
 

男女とも有償・無償をあわせた総労働時間が長く,時間的にはすでに限界まで「労働」している

という男女共同参画白書のコラム内の総括の方が重要だと思う。(令和2年度版)

かくして、日本では仕事と子育ては、そもそも1人の人間の中では「両立しえないもの」となっているし、育児家事専業の主婦/主夫でも多忙となる。

東京都の全世帯から100を抽出したら「3児の共働き夫婦」は何世帯いるんだろうか?
先日個人的に統計から推計したところ、たった2世帯(1.7%)だった。

もし日本が人口を増やしながら経済成長したくて女性の登用率も上げよう!ということなら「子ども3人共働き」はもっと普遍的でなければいけないはずだが 今の日本では難しい。

そしてアメリカ。

日本の教育過程は、子どもが生まれた家庭の社会的/経済的な格差を是正するより、むしろ増幅するよう働いているそうだが(c.f.『教育格差』)
格差を助長する程度はアメリカの比ではない。

アメリカで最新のインフレ状況を踏まえると、
子ども1人育てるのに高校卒業までに30万ドル(!!)掛かると言われている(c.f. The Wall Street Journal)。そこから更に大学に行けるのは、「稼げる」世帯出身の人だけとなる。あるいは目下議論の的の学生ローン。

熾烈な、教育費用を巡る人生の競争は滞在3ヶ月でも垣間見える。

日本では、保育園・幼稚園に通わせるのはセットメニューの定食を買うのに似ているかもしれない。(超高額なインターナショナルスクールに入る場合を除く)

週5日、朝から午後の決まった時間まで。
幼稚園で習い事をセットにするか、などパターンはあれど
隣合う園で10万円も月額料金で差が付くことは稀だと思う。
特に公設保育園なら行政区ごとで統一的な保育料のテーブル設定がある。

ところが こちらではday careを決めるなら、まず
「あなたが求めるクオリティに、どのプロバイダーを選びますか?」
から始まり、
「半日通いますか?全日ですか?週何日通いますか?」
という選択を行い、結果、
「チーン!月々おいくら万円です!」
という個別の会計が提示され、
例え同じ時間通わせる計算でも
プロバイダーによって1000ドル/月以上 ゆうに変わる。

そして基本的には、
高いお金を払えばモンテッソーリやSTEMもあるし、
リーズナブルさを狙えば、積極的な発育介入はしない保育を選ぶことになる。

やや蛇足だが、
逆に、こちらのday careの清々しいまでの
「早期保育/教育とは人命を扱い、かつ専門知を有する人的サービスなんだから、安いわけないでしょう!」
という料金設定は、もう少し日本でも採用されて良いと思う。

閑話休題。

当地における子育ての難しさの中で お金の問題は大きい。
どれだけ自分が教育予算を切り出せるか?で子どもの人生の選択肢がどんどん決まっていってしまうように感じるかも知れない。

日米どちらでも子育てがタフなことは共通しているが、日本は高い業務負荷、アメリカはコストの高さに起因すると思う。

アメリカはアメリカで激しい貧困問題があるが、アメリカでは6児の母が珍しくない、ということが、
もはや地方の主婦世帯でも4人兄弟が珍しくなった「子ども世代そのものがマイノリティ」の国ニッポンから来た私には常に驚きだし、少子化問題の根深さを感じる。