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【ストカレ卒論】「どうせ誰にも読まれない」本が「読んでもらう」ための本になるまで~初の電子書籍出版ふりかえり~

「正直、どうでもよくなってます」

2024年7月21日、日曜日の夜。
ついに初の電子書籍を出版した。
わたしは口元を「へ」の字に曲げ、半泣き状態でチャットに冒頭の文章を打ち込んでいる。

記念すべき日だというのに、完全にスネていた。


「ちゃちゃっと出そう」からはじまった挑戦

時はさかのぼり、2023年11月。
脚本家・永妻優一先生が講師を務める「ストーリーカレッジ」(以下、ストカレ)に2期生として入学した。
ストーリーテリングは創作だけでなくビジネスの面でも注目を集めている。以前から講座に興味があり、2期生募集の知らせを聞いて飛びついた。

課題には電子書籍の出版が含まれる。
本を出したいという願望はなかったが、ライターとして次の段階に進むきっかけにするのもいいなと考えた。
本を出す以上はしっかりした内容に仕上げなければならない。ただ……

(どうせ誰にも読まれないのだから、ちゃちゃっと出してしまおう)

自分の本を多くの人に読んでもらいたいとは思っていなかった。

本業との両立

原稿の執筆は「毎日少しずつ」が通用しなかった。話のつじつまや心の描写など、意識すべきことが山ほどあり、ほんの数分確保したところで何も書けないのだ。
一週間集中でガーッと書き上げたいところだが、本業を休むわけにもいかない。終わりがまったく見えなかった。

ストカレ最大の魅力は、先生から添削を受けられること。
このサービスは心強かった。提出までに何度も頭がパンクしかけたが、先生に見てもらえる安心感があったからこそ、足を止めずにゴールへと向かえたのである。
★初稿を提出したときの記事がこちら

さらに添削後は、専門チームによる校正サービスも受けられる。
みるみるブラッシュアップされていく原稿。まるでチラシの裏の下書きが、上質な紙に清書されたようだった。

(わたし本当に、本を出すんだ)

「ちゃちゃっと」感が薄れ始めていた。

完全燃焼後にもうひとつの山

原稿が完成してもまだ終わらない。
出版準備課題、つまり表紙と特典作りが残っている。
特典作成は任意。スルーするつもりだったが、ここまできたらトライすべきではないかと迷った。原稿の執筆に神経をつかい果たし、何かを生み出す気力など残っていない。特典を作るにしても「ちゃちゃっと」出すならテキトーでいいはず。
でも。
本を買ってもらうことを考えれば、下手なものは作れない。手を抜いてはいけないと思った

「ターゲットがほしいと思えるかどうか」

特典作りの鉄則を思い出す。ライターをはじめる前の自分が知りたかったことは何か。読み手の顔が見えたとき、特典の外郭が少しずつ明確になってきた。

その後も表紙イラスト作家さんやデザイナーさんなど、かかわる人が増えていく。
たくさんの助けがあってこそ、出版が叶えられるのだと実感した

出版許可が下りない

すべての準備が整った。
ここからはKDP登録→ランキング&カテゴリー反映確認→出版告知という流れだ。
せっかくなら1位をめざしましょうと教わった。たしかにわたしの知っているストカレ生はみんな1位をとっている。
KDP登録をしたのは木曜日。順調にいけば、多くの人の目に触れやすい土日に出版告知ができそうだった。

ところが。
Amazonから出版許可がなかなか下りない

長くて72時間かかると注意書きはあったものの、まさか本当にギリギリまで待たされるとは思っていなかった。
これが通常なのか、たまたま時期が悪かったのかはわからない。ただAmazonからすれば、川池という得体の知れない人間が突如出現したのだ。審査に時間がかかるのも無理はない。

ようやく出版許可が下りたのは日曜日の午後。
次はランキング&カテゴリー反映を待つのだが、これがまた長い
夜になってもわたしの本はいずれのカテゴリーにも入らず、出版告知は月曜日にずらそうと決めた。
週はじめの忙しい朝、誰の目にもとまらない告知ポストを想像してぶるっと震えた。
終わったかも……

「正直、どうでもよくなってます」

ストカレの専用チャットに情けない言葉を打ち込み、すぐに後悔した。
何言ってるんだろう、自分の本なのに。

1位はおろか、誰かに読んでもらいたいとすら思っていなかった本。
それでもさんざん悩み、時間をかけて書いた。スルーする予定だった特典も手を抜かずに作った。

読んでもらいたい。
一生懸命すべての課題に取り組んできたのだから、いい形でしめくくりたい。
半泣き状態になりながら、このときはじめて自著に愛着がわいていることに気づいた。

すると
スネていたわたしに、ストカレのコンシェルジュさんがあたたかい言葉をかけてくれた。

「週はじめのお知らせでも、気持ちが明るくなるのでは」

本の主人公は、自信のない会社員。つまり過去の自分。
憂うつな月曜日にこそ、前向きなポストや動画を見て癒やされていたことを思い出した。
本を書き上げたら終わりではなく、届けるまでターゲットに寄り添わなければならない
ハッとした。

(できることをしよう)

22時すぎ、ようやくランキングとカテゴリーにわたしの本があらわれたのを確認して眠った。

唐突なランクアップ

2024年7月22日、月曜日の早朝。
X(Twitter)で出版告知ポストを投稿した直後から、どんどん拡散されていく。
ふだんはバズることなどないため、ちょっと信じられない光景だった。悩みながら継続してきたXの成果が、ここであらわれたような気がして少しホッとした。

書籍の順位は、90,000位からなかなか変わらない。
再び反映の遅さにとまどうものの、Xで多くの反応をもらっていたこともあり、これから少しずつ上がっていくかなと余裕で構えていた。
ところが、10時すぎの時点で順位が下がった。まさかの展開にも、自分ではどうすることもできない。
Amazonさん、がんばって書いたのになぜ?
心の中で見えない相手を何度も問いつめる。
このまま画面に張り付いていても仕方がないので、しばし読書をすることにした。

気がつけば正午を過ぎていた。
お腹は減らないけど、何か食べよう。その前にもう一度見ておくかと、更新ボタンを押した瞬間「おおっ」と声が出た。
一気に5,000位まで上昇していた
もしや……とカテゴリー画面を開くたびに「おー」のキーが高くなる。
申請した3部門すべてで新着1位になっているのを見たとたん、お腹が減ってきた。

書籍出版は次の段階に進むためのステップ

最終的に、8部門で新着1位を獲得できた。
買ってくれた方、告知ポストを拡散してくれた方、そのほか応援してくれた方すべてに感謝の気持ちを伝えたい。

これから出版する方へ。
審査期間や反映までのタイムラグを見越し、出版日から逆算して計画的に進めてほしい。わたしは出版日を決めずに流れでなんとなくやってしまったことがよくなかった。
あとはとにかく、あきらめずにやりきってほしい。

「ちゃちゃっと」出そうと思っていた本は、汗と涙とあたたかいサポートがしみこんだ大切な作品になった
こんな本誰が読むんだろうとか、途中で自信なくして投げ出すかなとか、執筆中はつねにマイナス思考に襲われた。飽きっぽいわたしでも最後までやり遂げられたことは自信につながった。

電子書籍の出版をもって、わたしはかけ出しライターとしての活動に一区切りをつけられた。習得したストーリーテリングを活用しながら、これからは楽しく書いていきたい。


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