僕と歌と未来と…


──────僕は、夢の中で未来に出会った……。


真っ白だが、所々暗い感じがする空間。
その中で、僕はある歌を耳にする。
それは……。

「命に嫌われている。」

数年前に出来た曲で、僕はこの歌を知ってから、たまに聞いたりしている。
でも、この声は、歌い手さんでも、本家でもなんでもない。

……僕の声だった。

僕は声がする方へ足を運んだ。
僕がそこで見たのは、大人のような人だった。
彼女は、その歌を歌っていた。
嘆きのようで、でもほんのり希望が見えるような……そんな歌い方だった。
……決して上手いわけではないが、気持ちが篭もっている事が分かる。
少し半泣きで、泣いていた。
胸に手を当てて、きゅっと、拳を作りながら歌っていた。

『僕らは命に嫌われている。』

歌っているのを聞いていると、そんな歌詞が聞こえてきた。
……命に嫌われているってなんだろう?
その曲を知った時の僕は、そう思っていた。
だが、今なら分かるような気がする。
大人の人の声から、分かる。
まるで、訴えているかのように……。


暫くして、大人の人は、歌い終えた。
僕は、拍手せずにその場で立っていた。
大人の人は、僕を見た。
何処かで見たことあるような顔。
そう思いながら、大人の人の顔を見ていた。
大人の人はこう言った。
「……あ、聞いちゃってた?」
僕は問われ、思わず。
「あ、はいっ!?」
と、答えてしまった。
それだけじゃ、駄目だろうなと僕は思い、感想も付け足した。
「感情が凄く伝わってくる歌でした。お上手ですね。」
そういうと、大人の人は、少しだけ頬を緩めた。
「ありがとう。嬉しいよ。」
大人の人はそういうと僕の方に近寄る。
なんだろう?
そう思っていると、急に抱きしめられた。
そして、彼女はこう言った。
「ごめんね……僕……。」
"僕"と言う単語を聞いて少し不思議に思った。
彼女は、続ける。
「……ごめんね。未来の僕のせいで、また……悲劇を呼んで……ごめんなさい。」
そして、最後に彼女はこう告げた。

「お願い。同じような過ちをしないで。」

彼女はそういうと、ゆっくりと光となり消えてしまった。
空間は静まった。
歌も聞こえない。
声もしない。
僕は、孤独になった。

僕はそう思うと、あの歌を歌い出した。
我ながら下手だって思う。

『そうだ。本当はそういうことが歌いたい。』

僕の声が、謝ってくれた君に届くかな?
そうだと良いな。
僕はそんな思いで歌を歌っていた。

──────気が付けば、僕は夢から覚めた。

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