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【出会いは漫画広告vol.6】『わたしは壁になりたい 』ずっと一人で生きていくはずだった"二人"の物語

SNSを眺めているとよく漫画広告が流れてくる。広告によっては公開しているシーンやコマのチョイスが本当に秀逸で、スクロールする手が止まることもしばしば。思わず1話を購入してしまいたくなる広告と出会った時は、作品はもちろん、この広告クリエイティブを作った方に拍手を送りたくなる。

そこで、本記事では、タイトル通り漫画広告で出会った面白い作品たちを広告のクリエイティブと共に紹介していこうと思う。「あ!これ漫画広告で見かけて気になってた!」という方の参考になれば幸いである。

漫画で描かれる、セクシャルマイノリティの物語

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今週思わず目に留まったのは、KADOKAWAが発行する漫画誌「B's-LOG COMIC」によるこちらの広告。画像3枚(コマ)で描かれていたのは、アセクシャルの女性とゲイの男性が偽装結婚をするという物語だった。

青のフラッグ』『作りたい女と食べたい女』のように、昨今増えたセクシャルマイノリティに踏み込んだ作品なのだろうと思ったが、それと同時にこうして何気なく普段読んでいる漫画の中で、当たり前のようにセクシャルマイノリティの物語が描かれるのはとても良い流れだと感じた。

セクシャルマイノリティを当たり前のこととして受け止める人もいれば、そうではない人もいる世の中。 人は、普段目にする広告、映画や漫画といったエンタメから自然と当たり前が刷り込まれていくからこそ、漫画でセクシャルマイノリティの物語を当たり前のように描くのはとても意味のあることだと思う。

『私は壁になりたい』

広告で紹介されていたのは、白野ほなみ先生の『わたしは壁になりたい』という作品。他者に恋愛感情や性的欲求を抱かないアセクシャルのゆりこは、親からの結婚の圧力でお見合いをすることに。そこで出会った、幼馴染に片想い中のゲイ・岳朗太と結婚をすることになる。ゆりこと岳朗太はお互いのセクシャリティを理解しているため、この結婚は夫婦間の愛情はない完全なる"偽装結婚"であるが、セクシャルマイノリティの二人が生活を共にしていく上での距離感を模索しつつも、互いに寄り添う姿が印象的だ。

ずっと一人で生きていくはずだった"二人"の物語

なんで恋人作らないの?なんで結婚しないの?

ゆりこと岳朗太は、他者からの「なんで?」の暴力に心がざらつくのを感じながらも、自分は誰にも理解されずに一人で生きていくのだと、どこか諦めに近い決意をして生きていた。そんな二人は親から勧められたお見合いによって出会い、共に人生を歩むことになる。

新婚生活初日、ゆりこは岳朗太に言う。

「私たち恋愛はできませんけど でも 味方同士ですから」

この言葉通り、岳朗太がずっと思いを寄せている男友達に彼女が出来て傷心したときも、ゆりこは温かく寄り添う。

一方で岳朗太は、偽造結婚とはいえ生活を共にするのだからと、ゆりこの趣味である二次元BLについて知ろうとするなど、パートナーとしての距離感を手探りしていく。(ゆりこは二次元専門腐女子という設定なのだが、岳朗太の恋愛で妄想をするといった茶化すような描写が一切ないところは、作者や制作陣がセクシャルマイノリティのあり方と誠実に向き合ったことがうかがえる。)

結婚という形式に関わらず、誰かと人生を共にする上で大切なことが詰まっている二人の物語。セクシャルマイノリティに関わらず、結婚やパートナーシップといったキーワードに心のアンテナがピンときた方にぜひ読んでほしい一作だ。

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